冷凍調理食品は家庭にどこまで浸透しているのか、その購入動向の推移
スーパーやコンビニで多様な種類が陳列され、食生活には欠かせない存在となりつつある冷凍調理食品。ここ数年でどこまでより深く浸透したのか、家計ベースの実情を総務省統計局の「家計調査」の結果から探る。
まずは直近データとなる2016年第4四半期(Q4)の、冷凍調理食品の世帯当たり購入頻度・支出金額を、一か月分に換算したのが次のグラフ(総世帯(全部の世帯)、単身世帯、二人以上世帯が揃って取得可能なデータのうち、更新間隔が一番短いのは四半期単位。「Q」は四半期を意味する)。単身世帯の場合、一か月の購入額は平均で157円、購入頻度は38.3%なので、10世帯に4世帯近くが月当たり1パッケージを購入している計算になる。
冷凍調理食品は単身世帯で需要があるように見えるが、案外買われていない。一方、二人以上世帯では月2回近く、世帯単位の購入金額も600円強と、結構な額が計上されている。二人以上世帯の1世帯あたり平均人数は3人近く(2.98人)であることを考えると、単純に単身世帯3人分の額ではなく、それ以上に積極的な購入が行われている。
さて本題の「冷凍調理食品の購入度合」の推移だが、残念ながら月次の具体的な数字は二人以上世帯でしか計上されていない。そこで、二人以上の世帯については月次で前年同月比、単身世帯や総世帯も合わせた動向については四半期単位でグラフを生成する。まずは二人以上世帯の月次。
購入頻度・支出金額共にプラス圏が多く、この数年は明らかに購入度合が増えていることが分かる。具体的な数字の動向を見ても、明らかに右肩上がり。2014年4月の消費税率引上げの影響を受け、支出金額が底上げされているのも一因だが、その影響だけならば購入頻度までは上昇しない。明らかに利用性向はアップしている。お弁当に沿えるおかずとして、食卓の「もう一品」的な彩りとして、食生活に彩りを添える便利な存在として、大いに有効活用されているようだ。数年前までは「食卓のおかずに一品を加えるため、冷凍食品や総菜を購入するのはアリかナシか」との議論がされていたのも、今や懐かしい話ではある。
とりわけ2015年に入ってからは、購入頻度・支出金額共にプラス圏での値動きが常となっている。食生活に小さからぬ影響が生じている感は強い。
続いて単身世帯なども合わせた四半期単位の動き。多少データの動向が荒くなるが、これは仕方がない。
冒頭のグラフにある通り、単身世帯は購入頻度・支出金額共に値が小さいため、前年同期比ではどうしても荒い値動きとなってしまう。それでもプラス圏にある機会の方が多いことは分かる。そして二人以上世帯、総世帯はゆるやかな上昇を示しているのは一目瞭然。具体的数字の動向を見ても、購入頻度・支出金額共にどの種類世帯でも漸増しているのがつかみとれる。業界・市場全体の動向はともかく、世帯単位での購入性向は堅調に上昇方向へと推移している。
まとめると冷凍調理食品に関しては「物価上昇に伴う影響が支出金額の増加に影響している可能性は否定できない」「購入頻度は漸増し、それに伴い購入金額も増加しており、単価の引き上げは副次的要因で、むしろ積極的に買い進まれた結果として、支出金額が増加しているのが主な理由」となる。
冷凍調理食品の技術は常に向上中であり、販売種類数の増加だけでなく、自然解凍で美味しくいただけるもの、調理のサポートを果たす提案型食材(切り分け済みの野菜や、特定料理用の素材としての提供)など、多方面の開発がなされている。場所を取るのが難点ではあるが、買い置きができるのもありがたい。また電子レンジで解凍するだけで調理が可能なものが多く、手間を省きたい時には大変頼もしい存在となる。コンビニのプライベート食品として提供されている冷凍調理食品には、その多くにおつまみに合うものが提供されており、晩酌のお供に重宝されている実情が想起される。
今後時間が惜しい就業単身世帯層、調理に難儀する高齢層を中心に、冷凍調理食品はさらに進歩発展し、浸透していくに違いない。
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