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Bリーグでは収まりきれなくなった富樫勇樹が踏み入れようとしている異次元の世界

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
すでにBリーグでは物足りなさも感じ始めている千葉ジェッツの富樫勇樹選手

 第9節を迎えたBリーグ。東地区2位の千葉ジェッツは敵地で西地区2位の京都ハンナリーズと対戦し、82-60、90-74と圧倒的な力をみせつけ連勝を収めた。

 現地では千葉の富樫勇樹選手と京都の伊藤達哉選手の若手PG対決が注目されていたが、今や日本代表に欠かせない存在になった富樫選手とBリーグ1年目の伊藤選手との経験差は歴然で、まさに試合結果がすべてを物語っている。第1戦は第1クォーターに2つのファウルを宣告され出場時間が制限されたものの、13得点、7アシストを記録。第2戦は富樫選手本来のスピーディな動きで相手ディフェンスを翻弄し続け、20得点、6アシストと、見事にチームを牽引した。

 前節のアルバルク東京戦でも自己最多の42得点を記録するなど、平均得点17.1得点で日本人選手としてトップ(全体でも6位)に立つ。平均アシストも6.0でリーグ3位につけ、まさに超攻撃型PGとして確固たる地位を築いている。富樫選手自身も2年目のBリーグで確かな手応えを感じているようだ。

 「今年に関しては周りのレベルが上がっているというよりは、ここ16、17試合を戦って個人的に自分が凄く成長しているなっていうのを実感できているくらいのプレーをしていて…。やはり去年(Bリーグ)1年目で、その一個前のシーズン(2015-16年シーズン)にあまり試合に出ていなかったので、結果を残さなければいけないという気持ちが強かったんですけど、今年は去年1シーズン通して(プレーでき)ベストファイブにも選んで頂き結果を残せたことで、気持ちの面でいい意味でプレーに余裕が出ていると思います」

 富樫選手が指摘するように、今シーズンは開幕から心のゆとりが平常心に繋がり、プレーの幅を広げるともにプレーの質がアップしている状態が続いている。それは富樫選手を新たな境地へと導いてくれたようだ。

 「何か(プレーが)楽しい…プラス(その日の)調子にもよるんですけど、何か物足りないと感じるような時もあったりなので、そこが自分の中では成長なのかなと凄く思います。

 去年は一杯一杯だったわけではなかったですけど、そこまで感じることはなかったです。(去年は)1試合1試合必死にいって…。もちろん今も必死にいっていないわけではないんですけど、その中で数試合簡単すぎるなと思っちゃうくらいの試合があるので、そこがシーズンの4分の1が終わって感じる部分ではあります」

 現場で取材する限り多くの選手、コーチ、関係者たちが2年目のBリーグのレベルアップを指摘する中で、富樫選手は時にはコート上で物足りなを感じていたのだ。まさに彼がリーグの上をいくレベルアップを果たしているに他ならない。バスケット選手として異次元の世界に足を踏み入れようとしているのかもしれない。

 とはいえ富樫選手はまだ24歳。再びNBAを含めた海外リーグ挑戦が十分に狙える位置にいる。167センチという身長はバスケット選手として大きなハンディではあるが、彼は海外リーグでのし上がっていく上で何を目指しているのだろうか。

 「海外リーグでやっている選手はアメリカ人がほとんどだと思いますし、小さい選手は多くはないですけど、小さい選手でやれている選手は得点力が買われている以外に何もないと思います。ディフェンス面ではどうしてもミスマッチになってくる部分はありますし、オフェンスでも(身長が)大きいのにこしたことはないと思いますけど、その中で(小さい選手が認められるのは)スピードだったり、クリエイトできる力で、得点プラス、オフェンス面ですごくいい働きができる選手しかいないと思っています。そこを自分の中で意識はしていますね。

 今までの日本のガードのスタイルとはかなり違うと思うので、まあそこは自分の強みだとも思っています。今後もそこに関してはアグレッシブにというか、引き続き変わらずやっていきたいと思います」

 現在Bリーグで続けているプレースタイルがそのまま海外リーグにも直結していると感じている富樫選手。今後もさらにオフェンス力を磨きをかけていくつもりだ。ところで富樫選手はNBA挑戦から3年が経過した今、現在の実力をどう評価しているのだろうか。

 「正直サマーリーグやDリーグにいた時は凄く若かったので…。まだ秋田でプロとして1年半しかやっていない中での(NBA)挑戦で、今思うとバスケットに関して何も分からない状態で行ってたなと感じるので、今もし機会があってBリーグや海外でプレーする機会があれば、2、3年前の時よりは確実に結果が残せると思いますし、そういう自信はここ数年でかなりついたかなと思います」

 日本代表でのプレーもあり、現在の富樫選手は簡単に海外リーグに挑戦できる環境にはいない。だがその一方で、自信を深めた富樫選手が海外リーグのコートでどんなプレーをするのか目撃したいと感じているのは自分だけではないはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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