サラリーマンのこづかい防衛作戦2019
節約方法のトップは「昼食代を削る」
多くのサラリーマンにとってこづかいはもっとも身近で、自分自身に大きな影響を与える金銭問題となる。そのこづかいが自分の望む額を下回る場合、多様な工夫を凝らし、節約をすることになる。今回は新生銀行が毎年発表している、サラリーマンのこづかい事情を調査した定点観測の報告書「サラリーマンのお小遣い調査」(※)の最新版にあたる2019年版などから、サラリーマンにおけるこづかいの防衛作戦の実態を確認する。
今報告書によればサラリーマンの直近における平均こづかい額は3万6747円(月額)となり、昨年と比べて大きくダウンする形となった。
個々の金銭感覚や消費実情はそれぞれだが、この額では不足する人もかなりいるはず。必要経費に近い昼食代、携帯電話料金などを差し引くと、自分の自由意思をある程度以上反映できる余剰資金にどれだけ残せるかを考えれば、誰もが納得できるはず。
「こづかいが足りない、首が回らない」。その際、どのような工夫・節約で「こづかい防衛」を果たしているのだろうか。やりくりをしている人は全体で8割近くとなった。
そこでやりくりをしている人に限定し、上位項目について年齢階層別に区分し、グラフ化したのが次の図。全体、そして各階層でも「昼食代(を削る)」がもっとも多く、4割前後の結果が出た。
20~30代の昼食代節約率は40.9%と他の年齢階層より高め。弁当持参が難しい未婚者の率は若年層では高く、社員食堂の利用機会があればそちらを利用している可能性は高い。社員食堂を利用できる環境下にあるのなら、外食や購入弁当よりも廉価で昼食を取ることが容易だからだ。
続く回答は「飲む回数(を減らす)」。おおよそ3割。サラリーマンにとっては昼食同様、数少ない憩いの場、息抜きの時間であることから、それを減らさねばならないのはよほどの苦痛に違いない。
「水筒持参」は全体で27.2%。20代が低く、30~40代は高め。同じ持参の「弁当持参」よりも高めなのは(20代では逆転、50代では同値だが)、弁当を作る・作ってもらうよりも気軽に用意できるからだろう。その「弁当持参」では50代はともかく同値で30代が一番高い値を示しているのは意外ではあるが、既婚率が高く子供がいる可能性も高い50代は、子供の弁当作りの際に一緒に作ってもらえる機会が多いのだろう。
「少しでも歩く」「タクシー乗らず」は全体で2割前後。20~30代が高めだが、30代以降でもそれなりの値を示している。特に「少しでも歩く」は年齢階層別では50代が最も高い値を示している。差し迫った状況下になければ、少しぐらい時間をかけても交通費を使わずに徒歩で行き来した方が、節約につながるとの考え方なのだろう。例えば電車通勤の人は最寄駅では無く、少々離れた駅まで歩いて利用するなどが想定できる。健康増進の観点でこの選択を行う人も多いはずだ。
「衝動買い(を)避ける」は全体で22.1%だが、20代は高めの23.0%、40代はもっとも高い値の24.3%。ちょっとしたもののはずみ、勢いに任せてサービスを受けたり商品を購入してしまう行動を、できるだけセーブする心がけ。普段衝動買いの機会が多い人ほど、それをひかえる・止めることでこづかい防衛の効果が出ることを考えれば、効果がある手段として多くの人が選択しているのも道理は通る。こづかい額が一番少ない40代でこの値が最大値を示しているのは、色々と察してしまうのは悲しいところ。
節約しても足りなかったらどうしよう
出費がかさむ、あるいは支出したいものがある、しかし節約しただけではどうしても足りない。その場合、どのようにしてその資金をねん出するのか。サラリーマン諸氏におけるもっとも多くの人が同意した回答は、「使わずに我慢」だった。大体6割強の人が「こつがいが足りない時は我慢して使わない」と答えている。
「使わずに我慢」は数年ほど前の景況感の悪化時には、増加の傾向を示していた。こづかい面では「サラリーマン」ならぬ「ガマ(ン)リーマン」的な状況だったといえる。もっと、減少に転じた昨今でも他の項目と比べれば、群を抜いて高い値を示していることに違いは無い。
次いで多いのは「預貯金取り崩し」「家計からねん出」。不足理由次第だが、一時的な出費、突発事項による不足の場合(例えば友達の結婚式へのお呼ばれ)ならば、それも仕方あるまい。
2013年調査分から項目に加わった「副収入」(ポイントサイト、株式投資、FXやネットオークションなど。2019年分では「アルバイト」は別項目として分離しており、こちらは0.3%)は7.0%。ねん出できる点で、意外に多いものだと感心させられる。これらの手段は必ずしも「収入」が手に入るとは限らないからだ。むしろさらにこづかいが減る可能性も十分にある。
このねん出方法の上位陣、気になる項目につき、経年変化を見たのが次のグラフ(2014年分の「アルバイト」は、「副収入」そのものの回答値とその具体的配分から逆算して値を算出している)。
「預貯金の取り崩し」「家計からねん出」「クレカ利用」のような、他方面から融通する方法は中期的に減少していたが、この数年では「預貯金の取り崩し」「クレカ利用」は増加に転じている。他方「使わずに我慢」は2011年から2012年にかけて大きく上昇した後はおおよそ高止まりにある。この上昇が始まった2011年は、こづかい額が大きく減少した2010年の翌年にあたり、こづかい実額の大削減を受けて、サラリーマンにおいて心境の大きな変化が生じたことを示している。具体的には「やりくりしてもどうにかなる額では無いので、あきらめよう」といったところか。
出費上の我慢は浪費を防げるとの考え方もできるが、同時にストレスは溜まる。浪費を奨励するわけでは無いが、6割強が「足りなかったら我慢する」との状況は、健全か否かについて判断に苦しむレベルである。見方を変えればこの値が、2010年当時の50%台にまで低下すれば、サラリーマンのこづかい事情も改善の兆しが見えてくると考えればよいのだろうか。あるいはサラリーマンの心情そのものに大きな変化が生じ、この値は上値のまま半固定されてしまうかもしれないが。
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※サラリーマンのお小遣い調査
直近年分となる2019年分は2019年4月5日から8日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2717人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料では多くを占める会社員は男性1252人・女性841人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が40.3対59.7、女性は60.3対39.7。今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけでは無いことに注意。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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