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交通事故・死亡事故の自転車事故比率を確認すると……

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 注意事項を守り安全運転をする限りはリスクは最小限に抑えられるのだが

健康志向、災害時のリスク分散などで自転車が注目されているが、それと共に自転車に絡んだ事故、特に死亡につながる事故にも社会全体からの目が向けられている。その実態を警察庁が発表している各種事故に係わる統計資料を元に、交通事故全体との比率などから確認していく。

2015年3月に発表された「平成26年中の交通事故の発生状況」によれば、2014年において日本国内の交通事故全体の発生件数は57万3842件(前年比-8.8%)、死者数は4113人(-5.9%)。約20年の間は大よそ減少傾向にある。

↑ 年間交通事故死亡者推移(~2014年)
↑ 年間交通事故死亡者推移(~2014年)

この交通事故発生件数に、「自転車乗用者(第1・2当事者)の法令違反別死傷者数の推移(各年12月末)」を合わせ、「自転車による事故が交通事故全体においてどのような位置づけ・比率にあるか」を示したのが次のグラフ。事故件数は自転車が第1当事者(最初に交通事故に関与した車両の該当者のうち、過失の重い側。同程度の時には負傷程度が軽い側)・第2当事者(最初に交通事故に関与した車両該当者のうち、第1当事者以外の人)となった件数。さらに自転車同士の場合は1件として数えている。

↑ 交通事故全体件数と自転車事故件数、およびその比率(~2014年)
↑ 交通事故全体件数と自転車事故件数、およびその比率(~2014年)

交通事故件数全体数同様に、自転車による事故件数も、「第二次交通戦争」(1988年)以降減少を続けている。しかし自転車は自動車ほど啓蒙活動や安全対策が徹底していないこと、利用ハードルが低いこと(運転免許は要らず、子供でも技術を取得できれば運転可能)、そして自転車の高リスク利用者(若年層、お年寄り)が増加したことなど複数の要因から、減少率はゆるかやなレベルに留まっている。

結果として「交通事故全体」に占める、「自転車事故の件数」比率は増加の傾向にあった。昨今では啓蒙活動などが功を奏したのか、ようやく減少傾向に転じている。2012年では6年ぶりに交通事故全体に占める比率が2割を切り、以降直近の2014年まで低下を続けている。

この流れは交通事故全体ではなく「交通事故による死者数」に限定した場合でも、大体同じような状況を示している。ただし2010以降の動きはほぼ横ばいで推移しており、注意を要する状況となっている。

↑ 交通事故全体死者数と自転車事故死者数、およびその比率(~2014年)
↑ 交通事故全体死者数と自転車事故死者数、およびその比率(~2014年)
↑ 2010~2014年における自転車乗用中の年齢層別死者数比率
↑ 2010~2014年における自転車乗用中の年齢層別死者数比率

また高齢者の死亡比率が高く、60歳以上で7割を超えており、ここ数年では増加の兆しすら見えている点にも留意が求められる。

自動車やバイクと異なり、自転車は運転の際に免許も必要とせず、事故の際の当事者の保護装置(シートベルトやエアバッグ)も無く、さらに利用者の多くが十分な保険に入っていない。自転車に乗る際にヘルメットはともかく、バイクに乗る時のような専用のライダースーツを着たり肘・ひざ当てを付ける人は(ロードバイクのような専用の自転車を駆る人以外は)滅多にいない。

自転車で事故が起きた際のリスクは、自転車の方が自動車よりも高いとする考え方もある。もちろん「運転をするな」と禁じるわけではないが、運転の際には「走りながらの携帯電話利用」などもっての他。くれぐれも安全運転を心がけてほしい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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