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5G電波の脅威!飛行機の機能障害、着陸制限を正式発表

タワーマン元航空管制官
着陸前の航空機(写真:イメージマート)

12月7日、米国の航空管制機関であるFAAが携帯電話の5G電波の影響に関する耐空性改善通報(airworthiness directive)を発出しました。耐空性改善通報とは、例えばある航空機の部品に欠陥が見つかったことにより、類似の航空機を持つ保有者に対して一律で改善命令を出す際に用いられるものですが、今回FAAが発出した内容には異例の対応を求めるものが含まれています。特に航空機の着陸時の安全性に影響を及ぼすことが示されていますが、その具体的な内容について探ります。

航空無線技術の米国諮問機関であるRTCAが中心となり、FAA、航空機メーカー、部品メーカー、通信事業者などと結成したチームが2020年から調査を行った結果、3.7〜3.98GHz帯域の5G通信システム(Cバンド)が航空機とヘリコプターが使用する電波高度計に干渉する可能性がある、と結論付けました。航空機には気圧高度計と電波高度計の2種類の高度計があり、基本的には気圧高度計を使用して海抜面からの高さを表示し、飛行高度を設定しています。電波高度計は、航空機から地面に向けて電波を出し反射を感知することで地上からの高さを計測する仕組みのものです。

滑走路に接地する直前のコックピットに鳴り響く50(フィフティー)、40(フォーティー)、30(サーティー)、20(トウェンティー)、10(テン)というコールで滑走路面まであと何フィートか知らせるのに電波高度計の値が使われているように、電波高度計の値は低高度時において精度が保証されるものであり、気圧高度計の代替措置としての役割や、視界が悪いときの完全自動操縦での着陸時の使用に限定されます。

電波高度計の使用に制限を課す5つの着陸方式
電波高度計の使用に制限を課す5つの着陸方式

RTCAチームのレポートによると、5G(Cバンド)の干渉は、航空機が低高度になるほど影響が大きくなり、特に空港の近くに基地局アンテナがある場合には制限が必要とのこと。上図の5つの着陸方式の1つ目に記載のILSとは、世界中で最も普及しており気象条件が悪い場合において最も信頼度の高い着陸方式の1つを意味しています。CATⅠは視界が良いときに使用される方式で、今回問題視されている電波高度計に依存しない着陸の方法ですが、ここに記載されているSA CATⅠは、Special Authorizedの文字が付加された特殊ケースを指しています。CATⅡとCATⅢは、CATⅠの方式では着陸できないほど視界が悪いときでも、航空機・空港施設・パイロットの技量(資格)を一定の前提条件として着陸できる方式を意味しており、最終的な着陸可否の判断条件に電波高度計の値が含まれています。そのため、5G基地局アンテナからの影響あり、と判断された空港においては、上図に記載の5つの方式を使ってはならないという通知が出る可能性がある、ということが今回正式に発表された主要な内容です。

5Gの普及と航空交通の安全は共存できると信じている、とFAAは今後も影響評価を続けるようです。機内では電源オフまたは機内モードに設定を、とのアナウンスが流れた際には、航空機の着陸やり直しがご自身の責任とならないよう、5G携帯電話の所有者は特に確認することをオススメします。

引用:https://www.faa.gov/newsroom/faa-statement-5g

元航空管制官

元航空管制官で退職後は航空系ブロガー兼ゲーム実況YouTuberとなる。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験を基に、空の世界をわかりやすく発信し続ける。

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