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職場で対立する「愚直ハードワーカー」と「効率ショートカッター」〜違いを認めて仲良くして欲しい〜

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
頼むから仲良くしてください!(写真:アフロ)

■働き方の好みは人それぞれ

様々な「働き方」が提唱されている昨今。在宅勤務やリモートワーク、時短勤務や副業、兼業等々、社会的には徐々に承認されつつあります。

いろいろな働き方に関する思想が、金子みすゞさんの「みんなちがって、みんないい」のように共存共栄する職場になれば、めでたしめでたしですが、果たして今そうなっているかはまだまだ疑問です。

■同じやり方を気長に続ける「愚直ハードワーカー」

在宅勤務のような「どんな時間、場所で働くか」に関しては議論され、かなり承認されていますが、「働き方」とはそれだけではありません。

例えば、一つの仕事を遂行する際にどんな手順や方法論でやるのかという「仕事論」のような領域の思想については、特に融合を図る動きもなく、今でも各地の職場で互いに火花を散らし合い、職場をギスギスさせたりしています。

私が様々な組織で生じているのを観察した「職場紛争」のうち、最もよく起こっているものが「愚直ハードワーカー」と「効率ショートカッター」の対立です。

愚直ハードワーカーとは、その名の通り「仕事とは凡事を愚直に徹底して継続的に行うことで、最終的な目標を果たすことができる」という信念のもと、これと決めた方法をまずは何らかの結果が出るまで一定期間やり続ける人です。

長時間労働が伴う場合も多いのですが、それが要件ではありません。むしろやり続ける期間が、普通の人が「普通」と思う以上に長く、何カ月、何年もの長期間にわたって愚直に行う、ということです。

その間、PDCAサイクルを回さないわけではないのですが、ちょっと結果が出ないだけで「ダメ」と軌道修正するのではなく、かなり気長にやり続けます。「できるまでやれば、できる」が合言葉で、「できないやつは、やらないやつ」だと思っています。これまでの日本の職場に多かった旧来タイプです(旧来=ダメ、という意味ではありません)。

■スマートな方法を追求する「効率ショートカッター」

これに対立するのが新タイプ「効率ショートカッター」です。「仕事とは最短距離を考えて、一番労力を使わずに効率的に早く遂行することで、最終的な目標を果たすことができる」という信念の持ち主です。

拙速に動くのではなく、まず頭を使っていろいろと考えることに時間を使い、その上で最も短い工数でできる最も効率的と考えるやり方で仕事をやり始めます。手が速いタイプが多く、軽やかに作業をさっさとこなしていき、高速でPDCAサイクルを回し、このやり方ではダメだと思ったら、すぐに次のやり方に変更します。

そうこうしているうちに良い方法を見つけることもあれば、本当は愚直な方法しかないのに簡単な方法を探し続けた挙句、成果が出ないということもあります(率直に言えば、これはひとえに「能力」に関係していると言えるでしょう)。

長時間労働や同じことを続けることを嫌い、泥臭い解決策よりも、数学好きな人がよく言う「エレガントな解法」のようなスマートな仕事のやり方が大好きです。

この二派の思想は、それぞれ一つの見識であり、別にどちらが特段良いということもありません。仕事自体の特性やその人の能力や性格によって、成果さえ出せるのであれば「別にどっちでもよい」ものだと思います。経営者が求めているのは、成果だけです。

■「怠け者」「強権的」と互いに否定しあうことも

ところがこの二派は、お互いのことを否定しあうことが多く、よく職場の雰囲気を悪くさせます。愚直派は効率派のことを「楽しようとしている怠け者」「一つのことを続けられない根気のない人」と評します。

さらには「表面的な結果をなんとか繕うだけで、本質的な仕事をしていない粉飾野郎」「結果は出すかもしれないが、自分の力を出し惜しみして最大の成果を挙げることのない組織コミットメントの低い人」などという批判にも発展します。

逆に効率派は、愚直派を「頭を使おうとしないバカ」「諦めが悪く、損切りが苦手で、一度言ってしまったことを改められない潔くない人」「質よりも量でなんとかしようとする時代遅れ」「最適でない方法をメンバーに無理強いする強権的な人」などと否定します。

そして二派は、どんどん仲が悪くなっていくのです。このような対立がある職場の経営者やマネジャーサイドの気持ちを代弁して申し上げたいのは、ただ一言、こういうことです。

「お願いですから、お互いを認め合って仲良くしてください」

■同じ仕事を違うやり方でやっても構わないのでは

これだけ「新しい働き方」を認めていこうとしている時代です。同じ仕事を違うやり方でやったとしても、別に構わないのではないでしょうか。もちろん、特定の仕事にはいずれかの思想が適しているということもあると思いますが、人はそう簡単に仕事の方法論を変えることなどできません。

在宅勤務にあまり適していない仕事でも在宅勤務を認めることがあるのと同じで、その人が一番やりやすい「方法論」でやればいいし、周囲に迷惑を与えなければ、非難する必要はないのではないかと思います。今後の「働き方改革」においては、このような「仕事論」に関する多様性も認められる風潮になればよいのになあと思っています。

キャリコネニュースより転載・改訂

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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