「ボクの望んだ仕事が無い」…完全失業者の「仕事につけない理由」とは
最多失業理由は「希望する種類・内容の仕事が無い」
仕事にすぐに就ける状態にあり、仕事をしたくて探しているが見つからず、無職状態にある人を「完全失業者」と呼ぶ。失業中だが怪我のためにすぐには働けない人、すぐに働けるが退職直後なのでしばらく休みたいので仕事は探していない人などは該当しない。2013年ではこの「完全失業者」は265万人・前年比マイナス20万人との結果が、総務省統計局発表の労働力調査では出ている。
これら「完全失業者」に関わる議論では、その失業理由が問題視されることがある。高望みをしているから職に就けないのだと非難する声がある一方、中長期に渡り生活を支え時間を費やす仕事であるからこそ、自分の望みは極力充足させるべきであるとの声も多い。
そこで完全失業者における失業理由のうち、ある程度明確化しているものについて、まとめた結果が次のグラフ。もっとも多い理由は「希望する種類・内容の仕事がない」とするもので、人数では74万人が該当している。
次いで多い失業理由は「求人の年齢と自分の年齢が合わない」で45万人。これは後述の通り、多分に中堅層以降が該当する。そして子供の養育や介護で時間の制限がある人などが該当する「勤務時間・休日などが希望と合わない」が28万人で続いている。
「賃金・給与が希望と合わない」の回答者数は2003年以降ほぼ横ばいを続け、2012年以降は減少傾向の一方で、「希望する種類・内容の仕事がない」「求人の年齢と自分の年齢が合わない」「条件にこだわらないが仕事がない」の回答人数が2008年から2009年にかけて急増している。「リーマンショック」で労働市場が急激に悪化し、多少就業先条件のハードルを下げても就業がかなわない人が増えた結果が表れている。
直近の流れを確認すると、理由が分かる範囲ではほぼすべてで該当者数が減少。特に最低限の求人があれば充足される「条件にこだわらないが仕事が無い」の値は金融危機直後の水準にまで戻している。また条件が限定される「希望する種類・内容の仕事が無い」は金融危機ぼっ発以前の水準にまで減少している(グラフ上には無いが2007年は79万人)。「リーマンショック」による労働市場悪化の影響はまだ残るが、雇用市場の改善が進んでいることがうかがえる。
若者は「希望に合わない」、シニアは「歳が合わない」
これを年齢階層別にみると、世代別の失業事情を見ることができる。
・若年層ほど「技術・技能」不足が多い
・家族を抱えている人が多いことから、中堅層は(35-44歳は特に)「勤務時間・休日」などの条件がクリアできず、仕事が見つからない
・どの年齢階層も「条件にこだわらないが仕事がない」割合は1割ほど存在し、世代別の差異はほとんど無い
・若年層ほど「希望する種類・内容の仕事がない」が多い(A)
・高齢層ほど「求人の年齢と自分の年齢が合わない」が多い(B)
(A)は「仕事における需要と供給のミスマッチ」が多分に影響している。さらに「技術・技能」が不足しているので、希望職種・内容が限定されてしまうパターンも存在すると考えると(例えば自動車免許が無ければタクシーのドライバーは出来ない)、単純な「ミスマッチ」以外に「経験・技能不足による選択肢の少なさ」が就職活動の足を引っ張っている場合も十分あり得る。
(B)は「年齢のミスマッチ、あるいはハードル」が問題。本人はやる気(、さらには技術や経験)を持つが、年齢という越えられない壁が立ちはだかり、職につくことができない。「一般職における再就職は30代まで」との話もあるが、40代が含まれる「35-44歳」の層から「求人の年齢と自分の年齢が合わない」比率が急激に高まるのも合点がいく(ただし厚生労働省側では事業主に対して、労働者の募集及び採用について年齢制限の原則禁止を義務付けている)。
失業理由は世代によって大きな違いがあるが、個々の世代における問題点の明確化ができれば、各世代の雇用問題がさらに改善できる可能性は高い。無論年単位での施策が求められる。特に「労使間条件のミスマッチ」は情報の集約と容易な検索ができる環境の整備、「経験・技能不足」はそれらの技術を習得させることで、小さからぬ進展が期待できる。
他方、労働市場そのものが大きくならないことには、やりくりをするのにも限界がある。そのためにも景気の回復と新たな雇用市場(=産業)の創生もまた、完全失業者を減らす施策として高い優先順位で求められよう。
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