どこまで下がるか原油先物
13日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は反落し、WTIで9月限は前日比1.07ドル安の42.23ドルで取引を終えた。一時は42ドルを下回り、41.91ドルを付けた。
WTIは2009年12月19日に32.40ドルまで下落していたが、このときは2008年7月11日に147.27ドルという史上最高値を記録した反動と言えた。
2008年といえば、すでにサブプライムローン問題が起きており、2008年3月に欧米での信用収縮への懸念が強まりからFRB、ECB、そしてイングランド銀行にスイス中銀、カナダ中銀は各国の短期金融市場で資金供給を拡大するとの緊急声明を発表した。
OPECの生産調整や、中国の経済成長を背景にした需要増等によって原油価格は上昇を続けていたが、欧米の中央銀行による資金供給も手伝い、原油先物には投機的な動きが発生していた。そうでなければすでに金融危機が発生し、景気が減速していたにも関わらず、原油価格が急速に上昇していた説明が付かない。いわば原油先物でプチバブルが発生していており、それが現実を見据えて弾け、その結果がWTIの147ドル台から32ドル台への下落となった。
これも売られ過ぎとみられ、OPECが大幅な協調減産に踏み切ったことや、中国を中心とした新興国の需要はさほど後退していなかったことから原油価格は再び上昇した。2011年5月には112.8ドルにまで上昇。そこでいったんピークアウトしたものの、2014年7月ぐらいまでは100ドル台をつける場面もあり、高値圏で推移していた。
異変が起きたのが2014年7月以降であり、再び一方的な下落を続け、2015年3月17日に43ドル39セントに下落した。ここからいったん買い戻されて60ドル台を回復する。このあたりは日銀のシナリオ通りとなったが、そこから再び下落し41ドル台となった。
この原油下落の背景には、米国でのシェールオイル生産拡大で対米輸出が減っているなど、原油は世界的に供給過剰となっていたことがあった。ここに中国の経済減速があらためて材料視された。
WTIが40ドルを割り込むのも時間の問題ともなってきた。原油を輸入に頼る日本経済にとっては恩恵となろうが、資源国には打撃となる。物価の上昇抑制要因となり、世界的なディスインフレ傾向がさらに強まる可能性がある。これは日銀の物価目標達成をさらに困難にしかねない。