肯定的な「やばい」、10代から20代は4割強が使ってる
広がる「若者言葉」
時代背景や環境など多種多様な要素で少しずつ、そして確実に変化をとげていく、意思疎通のツール、「言葉」。若者たちが用いている、中堅層以降にはあまり聞きなれない新しい言い回し「若者言葉」はどこまで浸透しているのだろうか。文化庁が2015年9月に発表した「平成26年度 国語に関する世論調査」の概要から、いくつかのサンプルに関して浸透ぶりを確認していく。
次に示すのはいわゆる若者言葉に関して、それぞれの言い回しを使うこと・言うことがあるか否かを尋ねた結果。言葉それぞれの選択基準は、少なくとも概要報告書では説明されていない。
左から3つ目までは、本来強めの自己主張である内容に対し、少しばかり焦点をずらした表現を加えることで、その主張を優しく、ぼかしたものとする手法。「●×に違いありません」ではなく「●×だと思うのですが」とする仕方と同じ。また類似表現方法として「というか」「感じ」など、いわゆるギャル語も該当する。自信が欠けていることから相手への強圧感を和らげるため、あるいは相手へのプレッシャーを考慮してとの解釈もできる。
右側3つは方言や過去に使われていた言葉がなまったり、別の意味として広まったもの。従来の意味を知っている人が見聞きすると、誤解を生む可能性もあるので、使う際には注意が必要となる。
左側3つは利用度合いはさほど高くはなく、少数派に違いない。それでも大よそ少しずつ利用される場は増えている。右側3つは経年変化による浸透具合がやや大きく、確実に広まっていることが分かる。特に「微妙」は直近ではほぼ2/3が使うことがあるとしている。
年齢階層別の動きを確認
この利用性向に関して、回答者の年齢階層別に確認したのが次以降のグラフ。まずは上記の左3つまで、自己主張を和らげる形の言い回しに関して。大体ではあるが、2004年度から2014年度の間で、回答者の世代が1項目ずれる(歳を取る)ことになる。
大よそ全体的には経年変化として利用性向が高まる傾向にある。特に若年層の間では広まりを見せ、一方で60代以上はさほど変わりがないのも興味深い。単純に昔使っていた人が歳を経てシフトしただけとは言い難い値の上昇ぶり。
「的には」は10代では逆にすたれる気配もあるが、20代から50代までは大きな浸透ぶりを示し、20代ではほぼ半数が利用するまでに至っている。「とかしてました」も10代では逆に利用者が減り、20代でも直近ではいくぶん減っている。その一方で30代から50代までは大きな伸び。利用世代が少しずつシフトし、現在の若年層間では逆に使われなくなる雰囲気。
「みたいな」はやや傾向が異なり、どの世代でも大よそ良く使われている。しかも「とかしてました」のような世代によるシフトも見られない。世代特有の表現では無く、幅広い世代で、確実に浸透していく表現のようである。
右側3つの表現は1999年度の調査が無いため、2回分(10年分)しか動向を確認できない。
元々の浸透度・利用性向は異なるものの、大よそどの世代でも確実に値を上乗せしている。前回調査からちょうど10年が経過しており、単なる利用者が歳を取りそのまま利用し続けるだけならば、前回調査の値がそのまま一つ右の層にシフトするのみだが、値が増加していることから、「微妙」と「やばい」は確実に広まりを見せている。
「うざい」も値そのものは10年で伸びているが、世代シフトによる上昇には追い付いていない(例えば20代の2004年度は55.0%。この回答者が10歳年齢を重ねれば30代になるので、そのまま利用し続けていれば2014年度の30代は少なくとも55.0%は維持されていなければならないが、実際には43.2%しかない)ことから、言葉の寿命としては「微妙」「やばい」と比べれば短いものとなる可能性はある。
肯定的な意味での「やばい」は若年層間で急速に広まりを示しており、30代までなら半数以上が使用している。逆に60代以上は1割前後でしかなく、世代間の差が大きい言葉としても注目したいところだ。
大本の設問では「●×と言う」と記述されている。それからも分かる通り、今回取り上げた言い回しはすべて話し言葉。対話の中で、あるいは親しい間柄のメールやチャット内での利用はともかく、公式な文章やビジネス書類での利用は避けた方が無難。
他方、冒頭でも触れているが、言葉は社会環境などと共に変化する。それを思い返せば、これらの言い回しは「言葉の進化」の一形態と見なすこともできよう。
■関連記事: