消費税変更の年は何かが起きる?
4月1日から消費増税がスタートした。17日に日銀の大阪支店長は支店長会議の終了後の会見で、4月の消費税率引き上げ後の近畿経済について、企業からのヒアリングを基に、駆け込み需要の反動減の影響は短期で収束する見通しと語ったそうである(ロイター)。
黒田日銀総裁は講演などで、4月の消費税率引き上げについて「日本経済は一時的に落ち込むものの、生産・所得・支出という前向きのメカニズムが維持され、潜在成長率を上回る成長を続けていく」との見通しを示していた。大阪支店長の発言はこの総裁の見方を裏付けるようなものとなったが、日銀としては消費増税による経済への影響は限定的であり、反動減を意識して追加緩和を決定するつもりはないことを示したと思われる。
消費増税による景気への影響等については、過去の消費増税後の動向も参考になる。以前にもこのコラムで紹介したことがあるが、ここで再度、日本の消費税の歴史を振り返ってみたい。
1988年の竹下政権時に消費税法が成立し、1989年4月からは、所得税や法人税などの大規模な減税と引き換えに消費税が導入された。消費税導入後の1989年5月に日銀は公定歩合を3.25%に、さらに10月には3.75%に、12月には4.25%と引き上げ、完全に金融引締策へと転向した。これは消費税の導入の影響ではなく、景気の過熱感というかバブルへの対処であった。日経平均株価は1989年の大納会の大引けで3万8915円を付け、これが最高値となってバブルは崩壊する。1989年4月の消費増税導入の金利への影響については、バブル期という特殊事情もあり、その影響だけを見ることは難しいが、消費税導入後の短期金利は上昇し、債券相場も1989年には下落基調となっており、金利は上昇局面にあった。
1997年4月に、減税の財源として消費税の5%への引き上げが実施された。財政構造改革と、この消費税の導入がその後の景気後退の要因とも指摘されたが、実際にはバブルの後遺症ともいえる不良債権処理の遅れがその大きな要因となった。1997年7月には企業の破綻が相次ぎ、11月に入ると金融システム不安が一気に表面化し、三洋証券が会社更正法適用を申請、北海道拓殖銀行が経営破綻し北洋銀行への営業譲渡を発表。さらに証券大手の山一證券が自主廃業を届け出、徳陽シティ銀行が分割譲渡と金融機関が相次いで破綻したのである。
このように1997年4月の消費税の引き上げの影響についても、バブル崩壊後の金融システム不安などによる影響もあり、その影響だけを判別することは難しい。長期金利の動向だけみれば、1988年の消費税導入以降は上昇基調となり、5%への消費税の引き上げ以降は反対に歴史的な水準にまで長期金利は低下した。たしかに消費増税のタイミングは金利にとっては大きな変革期であったことは確かであるが、長期金利の動きだけみても消費増税の影響ははっきりせず、ほかの要因による影響が大きかったといえる。
ある意味、金利は景気や物価の動向を示すひとつの目安となる。いわば体温計の役割も果たすものと思うが、4月の消費増税があっても、その体温の数値は0.6という非常に低い水準で止まったままとなっている。これは、日銀が熱の上昇を抑える薬を大量に投与しているためだけによるものであろうか。
消費増税が導入された1989年はバブルの年であり翌年にバブルが崩壊しデフレに至る原因となった。消費税が引き上げられた1997年はバブルの後遺症による不良債権処理の遅れが金融システム不安を引き起こした。2014年は何が起きるのか。
消費増税の影響そのものより、過去2回の消費税の変更の年は、振り返れば日本経済に大きな影響を与えるような出来事が起きた。債券市場でも1989年で債券のディーリング相場が終焉を迎え、1997年の消費増税翌年の1998年に日本国債の格下げや運用部ショックも起きている。この債券市場を含めて、消費増税変更以降、何かしら大きな動きが出てきてもおかしくはないのかもしれない。