大学授業料の国際比較をさぐる(2019年時点最新版)
高等教育機関の大学は、国の文化や教養や科学の水準を維持し高めるため、そして優秀な人材を育成するのに欠かせない存在。日本ではその大学の授業料は国際的に見て高いのだろうか。OECDの公開値(※)で確認する。
まずは国公立大学。平均値が計上されている国はそのまま平均値を、値幅が計上されている国は最小値と最大値を併記した。何も書かれていない国はゼロ、つまり授業料が無料であることを意味する(データそのものが無い国はグラフ上に反映されていない)。
アメリカ合衆国、チリ、日本、カナダ、オーストラリアでは、国公立大学の授業料は高いと判断できる。日本は計上されている国に限れば上から3番目。
国毎の傾向を見ると、デンマークやエストニア、フィンランド、ノルウェーなど、ヨーロッパ諸国、特に北欧諸国では授業料が無料、あるいは徴収されても非常に低い額に留まっているのが分かる。これらの国はおおよそ、いわゆる「大きな政府」に属しており、大学での勉学にかかる費用もまた、一般政府がサポートする姿勢を示していることが分かる。
私立大学ではどうだろうか。
平均値ではアメリカ合衆国が、最大値ではラトビアが群を抜いているが、おおよそ国の序列に変わりは無い。ヨーロッパ諸国、特に北欧諸国では無料、あるいは低い値に留まり、それ以外の国では高い傾向にある。日本はアメリカ合衆国に次いで高い値(最大値では韓国やオーストラリア、そしてチリの方が高いが)。
高等教育機関の制度は国によって大きな違いがあるため、一概に単純比較はやや難があるものの、日本の大学授業料は国際比較の観点でも高い水準にあることは間違いなさそうだ。
なお今件値に限れば、日本の私立大学の授業料は国公立大学の約1.61倍。文部科学省の学校基本調査の最新値(2018年度分)で確認すると、国立大学生60万8969人、公立は15万5520人、私立は214万4670人(学部学生、大学院学生、専攻科などを合わせた人数)。大学生の約73%は国公立大学より高い授業料を支払っているのが実情ではある。
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※OECDの公開値
「Education at a Glance」で取得可能。各種大学の1年間における授業料がPPPs(購買力平価による米ドル換算方法、あるいは換算値。同じ商品がどの国でも同じ対価で取引されるとの過程で、各国の通貨を米ドルで換算したもの。OECDでは独自基準でこのPPPsの換算値を逐次更新しており、今回の値もそれを用いている)でどれぐらいになるのかを提示している。
公開対象国は限定されており、OECD諸国すべてでは無い。対象年は2015~2016年。フルタイムの4年生学部を対象としている。大学の種類の区分は次の通り。
・国公立大学…Public tertiary institution(公的高等教育機関)
公立教育機関または国の機関によって直接管理されている、あるいは国や公的な機関から任命された人員によって構成される評議会・委員会などで管理されている高等教育機関。
・私立大学…private tertiary institution(私的高等教育機関)。(1)と(2)で構成
(1)Government-dependent private institutions(政府依存型私立高等教育機関)…運営中核資金の50%以上を政府機関から受け取っているか、教職員の給与が政府機関から支払われている。
(2)Independent private institutions(独立型私立高等教育機関)…運営中核資金の政府機関からの受取額が50%未満で、教職員の給与が政府機関から支払われていない。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。