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親友のような「相棒」も「金次第」!?ミケルソンが新キャディをPGAツアーから巨額で略奪!! #ゴルフ

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
兄弟愛の話ではなく、巨額が動いたという話(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「引退の話」かと思ったら、最後はやっぱり「お金の話」になった。

何の話か?リブゴルフ選手のフィル・ミケルソンが、PGAツアーのベテラン・キャディを高額のお金をオファーして略奪したという話だ。

ミケルソンのバッグを担ぐ相棒キャディといえば、かつては、アリゾナ州立大学時代からの親友だったジム・“ボーンズ”・マッケイだった。2人は、コース上でもコース外でも常に一緒と言っても過言ではないほど親しくしていが、そんな2人の密な関係は2017年に突然、終わってしまい、それからはミケルソンの実弟ティムが兄のバッグを担ぐようになった。

兄ミケルソンと同様、弟ティムも幼いころからゴルフクラブを握り、プロになることを目指していた。だが、ツアープロへの道をなかなか切り開くことができず、地元のサンディエゴ大学ゴルフ部のコーチに就任。数年後、ティムは今度はアリゾナ州立大学のゴルフ部コーチに転身。そこで出会ったのが、同大学ゴルフ部に入部してきたジョン・ラームだった。

ラームが大学を卒業し、プロ転向してPGAツアーにデビューするタイミングに合わせ、ティムは大学ゴルフ部のコーチを辞め、ラームのエージェントを務めるようになった。

しかし、ほどなくして兄ミケルソンと長年の相棒だったボーンズが決別。新たな相棒が必要になった兄のために、ティムは専属キャディとなる道を選んだ。それが2017年のことだった。

翌2018年、ミケルソン兄弟は当時の世界選手権シリーズの1つだったWGCメキシコ選手権を制し、2019年にはAT&Tペブルビーチ・プロアマでも勝利。2021年全米プロでミケルソンが最年長優勝を果たしたときも、バッグを担いでいたのは弟ティムだった。そして2022年にミケルソンがリブゴルフへ移籍したとき、ティムも迷うことなく兄と行動を共にした。

しかし、8年にわたった兄弟の二人三脚にピリオドが打たれることになった。兄ミケルソンはSNSで弟ティムがプロキャディの世界から引退することを発表。

「ティムが独身だったころと比べると、彼が人生のパートナーと2人の子どもたちを得て新たな人生を歩み出した今は、たくさんのことが変化している」

「この8年間、ティムを相棒キャディにすることができ、そしてティムを弟に持った僕の人生は、とても幸運だ」

ここまでは、弟ティムがキャディ業から引退するという発表であり、美しい兄弟愛が感じられるストーリーだった。

しかし、その先には、こんな略奪の話が待っていた。

新たな相棒キャディが必要になったミケルソンは、PGAツアーのベテランキャディたちを「物色」し、すでに自身の新たな相棒キャディを獲得した様子だと米ゴルフウィーク誌が報じた。

キャディ歴20年のジョン・ヤーブロー。これまでスコット・スト―リングスのバッグを長年、担いできた熟練キャディで、スト―リングスとヤ―ブローは、かつてのミケルソンとボーンズのように、常に行動を共にするほどの親友のような関係だった。

しかし、米ゴルフウィーク誌によると、すでにヤ―ブローはミケルソンからの勧誘に応じた様子。今週のPGAツアーの大会であるヒューストン・オープンでスト―リングスが自身のスイングコーチを臨時キャディとして登録したことは、彼が相棒キャディを突然、失ったことを示している。

ヤ―ブローは来週のリブゴルフのマイアミ戦からミケルソンの相棒キャディ業を開始し、その翌週はマスターズの「晴れ舞台」にも立つことになる。

今のところ、ヤ―ブローは米メディアからの取材に対して「ノーコメント」の姿勢だそうだが、こんな一言は口にしたとのこと。

「(ミケルソンから)オファーされたマネーが、信じられないほどの巨額なんだ」

巨額のお金を得ることができるのなら、親友に背を向けてでも、お金をゲットできる場所へ行く。それは彼の自由な選択であり、彼なりの決断であり、誰も彼を責めることはできない。

だが、ミケルソンに象徴されるリブゴルフは、PGAツアーのスター選手を次々に奪った上に、今度はベテランキャディまで奪っていくのかと思うと、少々やるせない気持ちになる。

そして、ヤ―ブローの決断の決め手が、「ミケルソン」でも「リブゴルフ」でもなく「巨額のお金」であることは、頷けなくはないものの、やっぱり少々淋しい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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