Yahoo!ニュース

株価下落の背景にインテル・ショックもあり

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ここにきての米国株式市場の下落の背景のひとつの要因に「インテル・ショック」があった。

 インテルの株価が2日の米株式市場で前日終値に比べ約26%下落したのである。2日の相場下落は、雇用統計を受けての景気への不安だけでなく、インテル・ショックにより、半導体株が下落しハイテク株全波に売りが入ったことも影響した。

 3日付の日本経済新聞によると、『前日に発表した業績悪化と1万5000人の人員削減を受け、売りが広がった。同社の時価総額は1日で4分の3に目減りし、株式市場全体で売りが膨らむなか「インテル・ショック」とも言える状況になっている』。

 この記事にはなかったが、インテルは現在大きな問題を抱えている。インテルの第13・14世代のCPUには欠陥があることが指摘されていたのである。

 第13世代および第14世代の「Intel Core」デスクトッププロセッサーで、製造時の問題により広い範囲で動作が不安定になる現象が発生。インテルは既にパッチを用意しており、8月中旬にも公開する予定としているが、プロセッサーが既に恒久的な損傷を受けているおそれがあるとの指摘も出ている。

 これだけが原因ではないと思われるが、市場参加者を不安にさせかねない問題でもある。インテルは競合に比べ人工知能(AI)半導体の開発で出遅れ、収益機会を逃したこともたしかである。それが今回の業績悪化にも影響したのであろう。

 やはりインテルの名前は大きな影響を与えかねない。いまは確かに生成AIの機能開発においてエヌビディアに恩恵が集中したことで、エヌビディアが半導体株の価格を引き上げ、米国株式市場の底上げにも寄与していた面がある。

 ただし、半導体といえばインテルという時代もあった。今回のインテルの株価の急落が、エヌビディアを含めた半導体株の下落を促し、株価全体に影響を与えた可能性も否定できない。

 これも週明けの東京株式市場に影響を与える可能性が高い。すでにインフレ・トレードの巻き戻しとともに、米長期金利の低下などによる円高が、東京株式市場を直撃した。

 東京株式市場で日経平均を過去最高値に引き上げた原動力のひとつが半導体関連銘柄であったこともたしかであり、インテル・ショックが東京市場を直撃する可能性も出てきた。

 2日のナイトセッションの日経平均先物は1120円安の34800円となっている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事