10年国債の入札低調、10年債利回りはプラスに浮上する可能性も
3日の10年国債(利率0.1%、356回リオープン)の入札は、最低落札価格101円24銭、平均落札価格101円40銭となった。最低落札価格は予想を大きく下回り、テール(平均落札価格と最低落札価格の差)は16銭と大きく流れた(なぜか差が大きいことをテールが流れるという表現を使う)。応札倍率(応募額を募入決定額で割ったもの、低い方が好調、高いと低調との見方となる)も3.28倍と前回の3.62倍を下回り、低調な結果となった。
これを受けて3日の債券先物は大きく下落したのであるが、相場下落のきっかけと10年国債入札低調となった背景に欧米の債券相場の変調があった。
前日の2日、米ISM製造業指数が改善かとの予想に反して落ちこんだことに加え、トランプ大統領がブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに直ちに関税を課すと表明、両国の意図的な通貨切り下げへの報復措置とみられ、これを受けて米中が第1段階の貿易合意で署名に近づいているとの期待が後退した。
2日の米国株式市場は大幅続落となり、ダウ平均は268ドル安となった。ところが、これだけ株が下がっていたのに米債はリスクオフで買われるどころか、売られていたのである。2日の米10年債利回りは1.82%と先週末の1.77%から上昇していた。特に売り材料は見あたらなかったが、欧州の国債もこの日大きく下げていたので、こちらも要因のひとつであったと思う。2日のドイツの10年債利回りはマイナス0.28%と先週末のマイナス0.36%から上昇、フランスの10年債利回りもプラス0.02%と先週末のマイナス0.05%から上昇してプラスに転じていた。
ただし、3日の米国市場では、米中協議の長期化などによる世界経済への影響も懸念され、米国株式市場は大幅続落となり、ダウ平均は280ドル安となった。この日の米債は素直にリスク回避の動きで買い戻されて、米10年債利回りは1.72%と前日の1.82%から大きく低下した。ドイツの10年債利回りもマイナス0.35%と前日のマイナス0.28%から低下。フランスの10年債利回りもマイナス0.05%と前日のプラス0.02%から低下した。
結局、2日の売られた分は3日にしっかり戻した格好となっていた。しかし、2日の欧米の国債の妙な売られ方、さらには3日の日本での10年国債入札の結果を見る限り、債券を取り巻く地合が変化してきているのではないかと思っている。
ここで何故、国債を売らなければならないのか。その理由のひとつにチャートがある。チャート上からは日米欧の長期金利の低下トレンドはいったん終了した。今回の日米欧の長期金利はやや異常なまでに低下してしまっていたともいえる。その反動、調整がここにきて入りつつあるのではなかろうか。
米中の通商交渉の行方は不透明となり、それが世界経済にも影響を与えることも予想される。しかし、それに対して日米欧の中央銀行のここからの緩和手段は限られる。ファンダメンタルズから株価や長期金利が乖離しているとすれば、いずれその調整も起こりうる。そうなると日本の10年債利回りが久しぶりにプラスに転じても何ら不思議ではない。