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2013年の震災がれき処理動向を振り返ってみる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 今なお現地に残るがれきも少なくない(写真はイメージ)

現場にはまだ100万トンの震災がれきが

2011年3月の東日本大地震・震災から間もなく3年の月日が流れようとしている。しかしその震災で発生したがれきは、今なお約100万トンが現場に残されたままの状態である。今回は復興庁の公開データをもとに、今年一年の処理進捗を振り返ることにする。現時点で最新の公開データは2013年11月30日時点の状況を示したものであり、その値を基に状況を確認する。

なお「災害廃棄物」は各種災害(今件では東日本大地震・震災)によって発生した建物のがれきや木くず、コンクリートや金属の破片などを意味する。そして「津波堆積物」は津波によってもたらされた泥、土砂などを指し示す。「津波~」は「災害~」と比べるとヘドロ化しているものも多く、有機物も高比率で含まれる。そのため、長期間放置しておくと衛生上の問題が発生しやすい。そしてこの2種類を合わせ「災害廃棄物等」あるいは「震災がれき」と呼んでいる。つまり「災害廃棄物」+「津波堆積物」=「災害廃棄物等」となる。

まず始めは各対象物の「仮置き場」への搬入状況。災害廃棄物などは災害発生現場から仮置き場に搬送され、多種多様な方法で処分が行われる。全体では11月30日時点で震災がれき2748万トンに対し、災害廃棄物が97.1%・津波堆積物は94.4%との搬入値が出ている。

↑ 災害廃棄物などの仮置場への搬入状況(2013年11月30日時点)
↑ 災害廃棄物などの仮置場への搬入状況(2013年11月30日時点)

逆算すると、現時点ですら3%近くの災害廃棄物・6%近い津波堆積物が「未だに」現場に残されているのが分かる。

続いて処分された災害廃棄物などの動向を示すグラフを作成し、現状を確認する。「処分」には対象の状況により多用な手法、例えば単純な埋め立て処分以外に再生燃料化、素材として売却処分・再利用などがある。今グラフの「未処理」は、被災現場に残されたままのものだけでなく、「仮置場」に搬入されている状態のものも含む。

↑ 沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況(被災三県・県ベース)(万トン)
↑ 沿岸市町村の災害廃棄物処理の進捗状況(被災三県・県ベース)(万トン)
↑ 沿岸市町村の津波堆積物処理の進捗状況(被災三県・県ベース)(万トン)
↑ 沿岸市町村の津波堆積物処理の進捗状況(被災三県・県ベース)(万トン)

仮置き場への集約率と比較すると、処理・処分済み具合が遅れている。特に津波堆積物では遅れが深刻。この理由としては、「震災がれき」の処理は通常の建築物(例えば老朽化した木造住宅)の取り壊しによるがれきと比べ、内容が複雑で量も多いため(想定されない状況下でがれき化している)、時間がかかることが最大の理由。

そのため、それぞれの被災県内の処理だけでは、能力的・物理的に短時間での作業進行は不可能となる。従って「迅速な」処理には被災県だけでなく県外でも併行しての処理が不可欠。しかし被災地外での処理に関し、非科学的・感情的・煽動的な理由による障害・妨害がある。

がれきの処理が行われなければ物理的、さらには地域住民の心理的な復興への足掛かりは得られない。現場や仮置き場に居残る廃棄物は時間が経てば処理がさらに困難となるだけでなく、その時間の分だけ周囲の人の心を深く、そして広く傷つける。迅速な処理が強く望まれる。

去年秋以降加速化する処理状況

処理・処分が済んだ進行度合いを時系列的にグラフ化したのが次の図。

↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(-2013年11月30日)
↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(-2013年11月30日)

震災から2年以上が経過している今なお、100%にグラフが達していない現状は、震災の規模の大きさ、該当県外での分散処理に対する妨害活動からある程度予想は出来たものの、誠に遺憾である。

グラフのカーブ度合いを見れば分かる通り、災害廃棄物の処理は2012年の年末、津波堆積物は2013年の春先から処理ペースが上がっている。前後の各種周辺環境からかんがみるに、政情の変化によって処理にスピードが付いたと見てまず間違いない(無論、国の直轄処理地域での処理状況が計算から除外されたのも一因)。

未処理部分が少なくなるにつれ、より困難な場所での作業が必要とされる。そのため、100%に近づくに連れて処理スピードは緩やかなものになる。単純計算では災害廃棄物の処理は2014年2月中、津波堆積物はあと2014年5月位までにはカタがつきそうだが、実際に事実上の終了宣言を出すにはさらにもう数か月はかかるはず。

今年の処理進捗のまとめ

今年…といっても11月30日時点だが…の処理状況を一目で把握できるよう、各県ごとの災害廃棄物と津波堆積物双方(つまり「震災がれき」全体)の処理済み・未処理トン数を基に、総重量に対する処理進捗状況を公開値から算出し、その値を元にグラフを生成したのが次の図。

↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(被災三県・県ベース)(対全体進捗比率
↑ 沿岸市町村の災害廃棄物等処理の進捗状況(被災三県・県ベース)(対全体進捗比率

一色で塗りつぶされている部分が処理済、ぼかし効果のある部分が未処理(現場に置かれたままのものだけでなく、仮置き場に移されたものも含む)。現時点では震災がれきの処理は87.6%まで進んでいる。

しかし今なお、339万トンもの震災がれきが処理されず、仮置き場や現場に残されている。引越しに使われることもある大型の4トントラックなら85万台分、戦艦大和(満載時、7.11万トン)ならば約48隻分と表現すれば、その量がイメージできよう。

震災から間もなく3年に届こうとする昨今だが、それでもなお復興目指して震災がれきの処理を現場で進める関係者、そして後方各面で奮闘する方々の労苦がしのばれる。同時に、さまざまな想いを去来させるがれき群を、この時期に及んでもなお視野に収めねばならない現地の方々の心の痛みの深さは、想像を絶するものがある。

復興、さらには飛躍につながる、次なる一歩を確実なものとするため、関係者の作業の障害となるものを極力取り除けるよう、心から願ずにはいられない。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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