対自動車がトップだが…自転車による交通死亡事故の相手の実情
自転車運転中に発生する交通事故で不幸にも本人が死亡してしまった場合、大多数は自動車が相手方との統計結果が出ている。バイクや歩行者が相手、あるいは自転車同士による衝突で自転車側が死亡に至る事例は、対自動車と比較すればそれほど多くは無い。実際に自転車、あるいは自動車を運転していても、自転車が自動車と接触、衝突しそうになる状況を体験した人は多いはずだ。それでは具体的にどの程度の割合で自動車との事故で死亡事例が発生し、死亡数はどの程度なのだろうか。2017年2月23日付で警察庁が公開した、日本国内における2016年中の交通事故の状況をまとめた報告書書「平成28年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」の掲載データから、自転車による死亡事故の、相手方の動向を確認していく。
まずはグラフなどで用いる用語の解説をしておく。「自転車(第1・2当事者)の相手当事者別」だが、これらの意味は次の通り。
・第1当事者…最初に交通事故に関与した車両の該当者のうち、過失の重い側。同程度の時には負傷程度が軽い側
・第2当事者…最初に交通事故に関与した車両該当者のうち、第1当事者以外の人
例えば自転車の故障によるトラブルで転んだり、運転手の不注意で電信柱にぶつかった場合は自転車の運転手がそのまま第1当事者となり、第2当事者は居ない。一方、正しい場所を走行していた自転車に自動車が不注意で接触して事故が発生した場合、自動車側が第1当事者となり、自転車は第2当事者となる。
自転車事故・死亡事故そのものは年々減少を続けている。ただし2012年以降は漸減では無く、もみ合いながらの微減に移行したような感はある。「自転車単独」が増えているのが主要因だが、あと数年はトレンドが変わった否かを見極めねばなるまい。一方で自転車による死亡事故において、相手の大半が自動車であることには違いはない。
これを分かりやすいように比率換算したのが次のグラフ。対自動車事案が多すぎて、他の項目が相対的に小さくなり、見えにくい状態のグラフとなってしまった。そこで縦軸をずらし、最小値を底上げした形で再構築したものも併記しておく。
対自動車比率がわずかずつだが減っており、自転車死亡事故全体数よりも速いスピードで、自転車の対自動車死亡事故が減少していることが分かる(同じ比率で「数」が減るのなら、シェアもそう大きくは変わらない)。他の項目はほぼ横ばいの中で、自転車単独事故が(比率の上で)大きく増加しているのが確認できる。自転車単独事故は最古データの1997年・3.4%と比較すれば、2016年・24.0%は約7倍に値する。
この「自転車単独事故」とは具体的には工作物との衝突、転倒事故を意味する。この件数は50件/年前後で推移していたが、2013年は一挙に87件にまで増加、2014年にはやや減少して78件となったが、直近の2016年では122人となり、前年の3ケタ初突破からの勢いをとどめず、さらに増加の動きにある。この数年の大幅増加は大いに留意すべき状況に違いない。
さらに詳細を確認の上、10年前の2006年当時の値と比較すると、工作物衝突が10件から14件、転倒が14件から27件、その他(多様な事象による、あるい原因が不明な車両単独の死亡事故)が27件から81件と、それぞれ大きく増加する結果が出ており、特定の事象による増加ではなく、各状況下で押しなべて増えているのが分かる。特に「その他」の増加ぶりが大きいのが気になるが、具体的事象は説明に無く、詳細は分からない。
自動車や他人との接触ならともかく、「自転車単独事故」は自責によるところが大きい。自転車に乗る際には無理をせず、注意を十分に払って運転するべき。自転車とて道交法の適用範囲となる車両には違いない。特に判断力に劣る高齢者には「大重量で高速移動する自動車ではなく、人力で動く軽量の自転車だから」と油断することなく、安全第一を心掛けてほしいものである。
なお自転車乗用中による交通事故死者数そのもの、そして該当属性の人口10万人当たりの交通事故死者数を確認すると、ハンドル操作や安全不確認確認のような安全運転義務違反、交差点安全進行や一時不停止、信号無視などの点で、高齢者(65歳以上)の死者数が、高齢者以外と比べて大きいことが確認できる。単純な人数だけでなく、人口10万人当たりでも差が出ているため、高齢者による自転車乗用の死亡事故リスクが高いことがあらためて認識できる。
今後高齢者の自転車乗用中による死亡事故数・全体比率が増加することは容易に想像できる環境であり(高齢者人口の増加、そして高齢者区分の中でもより高齢な人の比率・人数の増加)、安全な自転車運転に関しても、これまでにも増して積極的な手立てを講じることが求められよう。
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