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知らないことで不採用も…SNS文化でメールも手紙も書けない子どもたち

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
子どもたちの手紙を書く機会は激減し、ルールやマナーを知らない子は多い(写真:アフロ)

今年の全国学力テストで、中学校の国語で、手紙の書き方を尋ねた問題が出されました。しかし、正答率は57.4%と6割以下にとどまりました。

右隅に住所を記し、真ん中に敬称をつけた宛名を記すのが正しいのに、宛名と住所の位置を逆にしたり、住所に続いてメールアドレスを記した間違いなどが見られたのです。

なぜこのような事態になっているのでしょうか。知らないことに、問題はないのでしょうか。

「手紙を書かない」子どもたち

子どもたちの手紙を書く機会は激減しています。子供の頃に「文通」などをしていた人もいると思いますが、今はその役目は完全にSNSが担っているからです。

小学生を見ると、彼らが手紙を書くほぼ唯一の機会が「年賀状」です。そのときに手書きで書いていれば、住所と宛名の書き方はわかるはずです。しかし、実際に届く年賀状の数割は、住所と宛名部分は印刷となっており、子どもは本文を書いているだけのことは多いのです。

中学生になると、手書きの年賀状は更に減ります。主にLINEで、「あけおめLINE」(LINEでの「あけましておめでとう」メッセージ)や、その1年間で撮ったお気に入りの写真に新年のメッセージを添えてタイムラインに投稿する例がほとんどです。

ただし、中学生はまだ全員がスマホを持っているわけではないので、オリジナルの年賀はがきをを作成してSNSに画像をアップし、その上でスマホを持たない子には郵送で送るなど、使い分けているようです。しかし、やはり手書きで宛名を書く例はとても少ないのです。

手紙のルールとマナーは知っておくべき

「メールやSNSで事足りるのだから問題ないのでは」と思う方もいるかもしれません。

しかし、メールは手紙文化を引き継いでおり、書き方のルールとマナーがあります。ルールとマナーを知らずに書いてしまうと、失礼ととらえられてしまうことは少なくないのです。

数年前、ある男子大学生がこんなことを言っていました。「先日、インターン希望の会社にスマホでメールしたんですよ。そしたら、『こんなメールを送ってくる人はうちではお断りです』と断られてしまって…」。

話を聞いたところ、彼はメールのルールとマナーを知りませんでした。先方の宛名を書かず、自分の所属なども名乗らず、ただ「インターン希望します」という旨のみ送っていたのです。先方としては、自社のインターンにクライアントなどに対して同様のメールを送られてはかなわないと思ったのでしょう。

また大学のゼミを休む際に、教授に「休みます」と名乗りもせずにLINEを送ってくる学生は少なくないそうです。教授は、「僕は友だちではないのに…」とため息を付いていました。このような学生は少なくないので、ある会社では、数年前から新入社員に対してメールの書き方から教えるようになったそうです。

手紙やメールでは、冒頭で相手に敬称をつけ、挨拶を述べ、本題をわかりやすく書き、結びの文も必要です。初コンタクトなら、自分の所属を明らかにして名乗る必要もあります。メールなら、最後に署名も着けるべきでしょう。

しかし、今は多くの子供達がスマホメールでさえほぼ使わず、ルールやマナーを知る機会がありません。「自分のメールアドレスは調べないとわからない」という学生がいるほどです。SNSではいきなり本題を送れるのでスピーディにやり取りできますが、学ぶ機会は失われています。

手紙やメールのルールとマナーを知らないことで、先程の大学生のようなトラブルが実際に起きています。経験がないので仕方ない面はありますが、少なくとも「ルールとマナーがある」ことを知らないと、人生の大切な局面で相手の心証を害し、大きな失敗をするかもしれません。この機会に、手紙やメールのルールとマナーについて子どもに身に着けさせるといいのではないでしょうか。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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