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「アストンマーティン」と「ブラウ・シューペリア」英国名門ブランド合作による夢のスーパーマシン誕生!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
AMB 001 撮影:佐川健太郎(以下同)

007ボンドカーとアラビアのロレンスが愛したバイク

11月初旬にミラノで開催されたEICMA2019では、名の知れた2輪のメジャーブランド以外にも注目したい発表があった。そのひとつが英国のスポーツカーブランド「アストンマーティン」と同じく英国のモーターサイクル史に燦然と輝く「ブラウ・シューペリア」とのタッグだろう。

アストンマーティンは言わずと知れた英国車を代表する超高級ブランドで、1913年の創業以来、高性能・高品質・高価格を貫いてきた。最新モデルでも1台軽く3,000万円ぐらいはする4輪界の王様のような存在。「007」では歴代のジェームズ・ボンドの愛車として銀幕を飾ってきたことでも有名だ。

一方、ブラウ・シューペリアは1919年、ジョージ・ブラウによって英国・ノッティンガムに設立。2輪のロールスロイスとも呼ばれ、当時最も高性能かつ高価なモーターサイクルとして名を馳せた。モータースポーツでも活躍し、僅か20年という短い製造期間の中で数々の最高速記録を打ち立てるなど走りでも一流のパフォーマンスを誇った。著名なオーナーの一人で映画「アラビアのロレンス」で知られる第一次大戦の英雄、ロレンス中尉は実に7台ものブラウを乗り継いだが、最期はその愛車による事故で波乱万丈の人生に幕を閉じたことは運命の皮肉としか言いようがない。そして時は流れ、長い年月を経て2013年に復活したブラウは、当時の雰囲気をオマージュした現代のマシンとして登場。現在はハンドメイドの高級ブランドとして数種類のVツインモデルを展開している。

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インタークーラーVツインターボで180psを実現

さて、前置きが長くなってしまったが、今回EICMA2019でアンベールされたのが、そのアストンとブラウという英国生まれの名門同士のコラボから生まれた「AMB 001」である。

AMB 001 画像提供:BROUGH SUPERIOR
AMB 001 画像提供:BROUGH SUPERIOR

リリースによると、エンジンのベースはブラウ製の水冷V型2気筒(挟角88度)排気量997ccで、ボア×ストロークも94mm x 71.8mmと高回転重視のショートストロークタイプ。これに最新の可変ジオメトリータイプのインタークーラー付きターボを搭載し、最高出力180psを実現。フレームはエンジンを剛体の一部とするCNC加工アルミ材によるバックボーンタイプでコンパクト化しつつ、足まわりにもダブルウィッシュボーン式フォークなど4輪で培った先進的なメカニズムを搭載。フルカーボンボディにチタン、鍛造アルミ材などを組み合わせることで乾燥重量180kgと軽量に仕上げられている。

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100台限定で価格は1,300万円!

デザイン要素にもアストンの最新スポーツカーのイメージが投影され、ウイング状のエアロパーツや4輪と同品質の本革製シートやグリップを採用。アストン伝統のスターリンググリーンで仕上げられるなど、その名に恥じない本格的な作り込みが印象的だ。

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「AMB 001」はフランスの航空産業の拠点でもあるトゥールーズ郊外にあるブラウの工場で組み立てられ、限定100台が10万8,000ユーロ(約1,300万円)で販売。最初のデリバリーは2020年の最後の四半期あたりを予定しているとのことだ。また、これは両社によるコラボの第一弾であり、今後さらにラインナップを増やしていくことも視野に入れているとか。

ひとつのブランドで2輪と4輪を持っているメーカーはホンダやスズキ、BMWなど珍しくはないが、伝統と歴史あるそれぞれの老舗2社が協業して本格的なモーターサイクルを作った例は最近ではあまり見かけない。「AMB 001」がどんな走りをするのかは想像するしかないが、チャレンジングな企画であることは確か。興味を持って見守っていきたいと思う。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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