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天津木村、岩手県移住で人気者になっていた!「永住…あると思います」

長谷川まさ子フリーアナウンサー/芸能リポーター
キメポーズもイキイキと番組を進行する天津木村さん(撮影:すべて長谷川まさ子)

 去年12月、大阪の番組で久しぶりにお笑いコンビ「天津」の木村卓寛さんにお会いしました。岩手県に移住されてから初めてだったので、「盛岡はどうですか?」と尋ねると、「僕…人気者になっちゃいました」との答えが。

 エロ詩吟の天津木村ではなく、木村卓寛として岩手朝日テレビの「Go!Go!いわて」(土曜・前7時30分)を仕切っているという。移住から、まもなく1年。木村さんは、本当に人気者になったのだろうか、岩手の皆さんに受け入れられたのだろうか。この眼で確かめるため、盛岡に飛び、現地リポートです。

ー木村さんの人気者ぶり、確かめに来ました(笑)

 まさか本当にいらっしゃるとは思わなかったのでちょっと“盛り”めで「人気者になっちゃいました」と話したのに(笑)。

 東京ではちょっと苦戦しましたが、こっちでは実現しているんですよ。番組のMCをさせてもらっていて、週1回、僕の「さぁ、はじまりました。『Go!Go!いわて』です」という言葉で番組が始まるんです。もう、スゴないですか⁉

ー番組のオファーが来た時はどう思いましたか?

 その頃、ヒロミさんのドライバーをやりながら「自分は10年後何してるのかな?ロケバスドライバーかな?お笑いは難しいやろな~」って考えていた時期でした。

 そんな時にお話をいただいて、自分は“通い”で出演しようと思っていたんですけど、ヒロミさんに「お前な、番組のMCをやらせてもらえるなんて、本当にすごいことなんだぞ。週1回通ってくるお前みたいなやつを、一体誰が愛してくれるんだ」って、移住を勧められて。

 「岩手…MC…移住…永住かもしれん」って思った時に、抱えていた将来への不安がパーンと晴れて、10年後、岩手で人気者になっている自分にすごくワクワクしたんですよね。なんかカチッとハマった感じですかね。結果移住して大正解でした。

ー「Go!Go!いわて」はどんな番組ですか?

 岩手の情報をお届けする番組で、みんなで岩手を明るくしよう…って思ってやっています。

 今芸歴23年くらいなんですけど、恥ずかしながら、こっちに来てやっとロケに慣れてきた感じですね。大阪、東京の時は「ここで結果残さないと」って毎回緊張してたんです。慣れって大切で、今は毎週ロケがあるので楽しんでやらせてもらってます。

 実は先日、岩手朝日テレビさんで特番もやらせてもらって。陣内智則さんに来ていただいて、「天津木村のともナビ」という僕の冠番組が、なんとゴールデンの午後7時から8時でオンエアされたんですよ。これ、スゴないですか⁉冠番組は、我々芸人の夢ですから。僕は今、岩手に来てよかったなー、岩手と相性いいなーってしみじみ思っています。

ー番組MCだけではなく、他でも大活躍だそうで

 今は、移住促進のお手伝いをする「いわて暮らしアンバサダー」を県知事さんから、「いわて牛応援団長」をJA全農いわてさんから任命していただいています。「山田町観光ふるさと大使」もやらせてもらっているのですが、「いいんですか、エロ詩吟ですよ⁉」っていうのが、やっぱり僕の中にはありましたよね。

 「いわて牛応援団長」ではCMもやらせてもらって、例のピンクの着物でエロ詩吟のネタやったんですよ。で、出来上がったCMを見たら、途中でパツンと終わって「続きはWebで」ってなってて、やっぱそうやろなって思いました(笑)。

 岩手の人にもう一度岩手を好きになってもらうために、県外から来た人間が岩手の魅力を伝える講演会もやらせてもらっていて、本当に怖いくらい順調なんです。

 だけど、エロ詩吟で世に出させていただいた時、多少調子に乗っていた時期があったんで。今、知事にお会いしたりして調子に乗りがちなとこやから、毎朝起きた時に「調子に乗るなよー。お前なんか、たかがエロ詩吟やぞー」って自分に言い聞かせて律してます。

「Go!Go!いわて」スタジオより
「Go!Go!いわて」スタジオより

ー人気者になった手応え、感じていますか?

 うれしいのは、東京では街を歩いていて声をかけてもらうなんてなかったんですけど、こっちでは「天津木村さん、いつも観てます」みたいな感じで声をかけてくれるんです。

 この間、市外のコンビニに行った時は「きょうはプライベート?」って70歳くらいの方に声をかけていただきました。薬局では、止めていた車の前で二家族の方が待っていてくれて、「一緒に写真撮ってください」って。

 今までは、エロ詩吟で夜の男だったので、年配の方や家族連れから声をかけてもらうなんてありませんでした。やっぱり朝の番組は、観てくれる層が違うんだなって思いましたね。

ーご家族も移住されたんですよね

 はい。子供(娘2人)が小学校を転校しなければいけないので、それはネックやなって思っていました。奥さんに相談したら、「いやいや一緒に暮らすのが家族でしょ。私たちも行くよ」って言ってくれて。そこから結構長い時間かけて子供たちに「岩手ってこんないいところだよ」ってプレゼンして、OKをもらいました。

 ただ、やっぱり転校して馴染めるかなって、すごく心配してたんですよ。そしたら初日から、1人は友達連れてきて、もう1人は「今から声かけてくれた子のウチに遊びに行ってくる」ってなって、安心しました。

ー岩手の魅力、教えてください!

 まず、シンプルに食べ物が美味しいんですよ。スーパーの産直コーナーは、その日の朝に畑で取れたんやろうなってものが売っていて、野菜がシャキシャキで。お肉も、生産者さんを手伝わせてもらったりしたので分かるんですけど、手をかけているし、大自然で育っているので、そりゃ美味しくなるわって。

 そして、自然が近い!車で40分も行ったらいいスキー場がいっぱいあるんで「めっちゃおもしろいやんスキー」ってなって。趣味も増えました。

 今までよくキャンプに行っていたんですけど、こっちに来てからはあんまり行ってないんです。わざわざ遠くのキャンプ場に自然を感じに行かんでも、家族で近所にピクニックに行って、シート敷いてラーメン作って食べたりするだけで満足度が以前よりあるので、“がっつりキャンプ”が減りましたね。

 あと、盛岡市の“サイズ感”がちょうどいいんです。役所もスーパー銭湯も、全部車で10分!いやー、岩手たまんないですよ。

「Go!Go!いわて」スタジオより
「Go!Go!いわて」スタジオより

ー番組で「岩手のいい場所、人、コト」と言っていましたが、具体的に教えてください

 「場所」は、小岩井農場の一本桜です。大平原の中に1本だけ桜があって、元々は農作業する人たちの日陰をつくるためのものなんですけど、それが5月にきれいに咲き誇って、後ろにこれまたキレイに岩手山が見えるんですよ。ここは絶景、見る価値ありやなと。

 「人」は、横断歩道でのふるまいです。東京や大阪って、車が意外と強気じゃないですか。こっちは、人も車もピタッって止まる感じで、横断歩道がちゃんと機能していて見事なんですよ。県民性ですかね。真面目なんですよ。渡ったらちゃんとみんなペコっておじぎして。それがすごく心地いいんですよ。

 「コト」はね、岩手って四国と同じくらい面積あって。だから県北と県南で全然文化違うし、沿岸と内陸でもまた違うし、推してるものも違うから多様性がある、いわゆる掘り下げたいことがたくさんあるということですね。

盛岡市内の様子
盛岡市内の様子

ーところで、「天津」としての活動はどうしているんですか?

 今でも月1回は、2人で「天津定例報告会」というオンライントークライブやっています。3月19日に、初めて岩手で単独ライブをやらせていただくんですけど、ネタ合わせはリモートなので、本番はちょっとドキドキです。

 この「定例報告会」は、僕が東京にいる時にはやってなくて。恥ずかしいことを言うと、僕と相方(向清太朗)って、ぼんやりコンビを始めてぼんやり続けてきたって思っていたんです。

 でも、離れてみて気付いたんですよ。20何年も一緒にいるなんて、実は運命の人なんじゃないのって。今までなんとなくやっていたのを、ちゃんと向き合えるようになったら、「やっぱ向ってすげーな」って思えることが増えてきて、もっとあいつ評価されてもいいのにっていう感覚ですね。

 前まではこういうことを言うのは恥ずかしかったんですけど、今は離れてるんで、距離が気付かせてくれたみたいなことはあるかな。

盛岡駅前
盛岡駅前

ー「岩手の永住、あると思います」と話していたのを聞きましたが、それは本心?

 やっぱり、人によって合う合わないはあると思うんですけど、僕はめっちゃ合ったんですよ。今、コロナ禍で移住を考えている方もいるかもしれませんが、僕は迷ったらやってみてもいいんじゃないかなって思います。

 僕、最初は芸人仲間に「岩手いいですよ、住んでください」って言ってたんですけど、人間って欲深いから、自分のポジションを脅かす人には来てほしくないって思うようになってて、今は、お笑い芸人は誰も移住してくるなって思ってます(笑)。

 永住するかどうかは、番組が終わってしまうかもしれないし分からないですけど、岩手朝日テレビさんと岩手の皆さんにご恩を受けたと思っているので、これから僕は恩返しをしていかなければならないと思っているんです。今の計算で行くと、結構もらっちゃったので、全ての恩を返すのに、20~30年かかるんです。今僕45歳でしょ。もう30年かかったら75歳なんですよ。永住する気なかったとしても、もはや永住ですよね。「岩手の永住、あると思います」。

ー今回、客観的な目線として、「Go!Go!いわて」の矢野一プロデューサーに、起用理由など伺いました

矢野氏)

 社員の中に、木村さんのMCを観たことがある者がいて、エロ詩吟の感じじゃなくて良かったというので、お願いしました。ただ、「住みます」と言われた時、まだ番組が立ち上がっていなくて、どれだけ続けられるかということもありましたので、まずは木村さん1人だけに住んでいただいたのですが、夏にはご家族が越してくると言われて、正直大プレッシャーでした(笑)。

 キャスターぶりは、今までやってきた番組キャスターの中でピカイチですね。それまでは、局アナだけで回していたものを、思い切ってメインMCとしてお願いして、それが正直素晴らしいですし、うちのアナウンサーのよさを引き出してくれている部分もあります。

 反響も、視聴者の方からメールをいただいて、「一発屋芸人だと言われている人がMCやって大丈夫かって思っていたけど、おもしろいね」とか、イベントで視聴者の方から「観てますよ、頑張ってください」って声かけられているのも見ているので、受け入れられていると思います。

 この先10年、20年と番組を続けたいですし、MCはずっと天津木村さんで…と思っています。もっともっと今以上に岩手を愛して、ずっと岩手にいてほしいです。

「Go!Go!いわて」のポスター
「Go!Go!いわて」のポスター

■インタビュー後記

番組の本番後、反省会をやっている部屋からは、飲み会が始まっちゃったのかと思うくらい、いろんな人の意見、そして自然な笑い声が何度も聞こえてきた。本当に、みんなでいい番組にしたいと思う気持ちが伝わるようだった。そんな番組のMCを任されている木村さんは、以前よりも逞しく、何より表情が穏やかに感じられた。そして、その口からは、岩手の情報がいくらでも溢れ出た。コロナ禍なのでリモートも考えたが、実際に現場へ行って木村さんの奮闘ぶりを取材できてよかった。盛岡を出る私の両手は、木村さんオススメのお土産でいっぱいになっていたことは言うまでもない。

■天津木村(てんしん きむら)

木村卓寛(きむら・たくひろ)。1976年5月22日、兵庫県生まれ。吉本興業所属。9歳より父から詩吟を教わり始め、30歳で詩吟師範代の資格を取得。1999年、NSC大阪で知り合った向清太朗と漫才コンビ「天津」を結成。M‐1グランプリでは2002年から毎年、準決勝に進出した。2007年よりピン芸「エロ詩吟」を確立。現在は岩手県盛岡に移住し、2021年4月より岩手朝日テレビ「Go!Go!いわて」にてMCを担当している。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】

フリーアナウンサー/芸能リポーター

群馬県生まれ。大学在学中にTBS緑山塾で学び、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」で7年間アシスタントを務める。ワイドショーリポーター歴はTBS「3時にあいましょう」から30年以上、皇室から事件、芸能まで全てのジャンルをリポートしてきた。現在は芸能を専門とし、フジテレビ「ワイドナショー」、日本テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」ほか、静岡・名古屋・大阪・福岡の番組で芸能情報を伝える。趣味は舞台鑑賞。

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