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ハーレーダビッドソン新型「スポーツスターS」 すべてが個性的、これはハーレーからの挑戦状だ!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
HARLEY-DAVIDSON SPORTSTER S 画像webikeニュース

60年の歴史を持つハーレー随一のスポーツモデル

スポーツスターシリーズは1957年に初代が誕生して以来、空冷VツインOHVエンジンを採用した軽快なスポーツモデルとして60年以上にわたって世界中のファンを魅了してきた。

長い歴史においてカスタムシーンだけでなく、レコードブレーカーとして世界最速記録を打ち立て、米国伝統のダートトラックレースを席巻するなどアグレッシブな側面を持ったモデルでもあった。その名を受け継ぐ「スポーツスターS」は、すべてを刷新しつつも紛れもなくその血筋を引く後継者と言える。

パンナムの最新ユニットを現代のスポーツスターとして最適化

パワーユニットは新開発の水冷60度VツインDOHC1,252ccの通称「Revolution Max 1250Tエンジン」で、今年デビューしたハーレー初のアドベンチャーツアラー「Pan America 1250」がベース。同様に可変バルブタイミング機構を搭載するが、ヘッドまわりから新設計された別物で、ピストンや燃焼室形状も異なり、吸排気も最適化されるなど、より低中速トルク型の特性に作り変えられている。

シャーシも軽量シンプル化されエンジンを剛体の一部として利用する現代的な作りに。足まわりも前後サスペンションにショーワ製φ43mm倒立フォークとリンク式モノショックを採用、前後フルアジャスタブルとして幅広い走りに対応。ブレーキも前後ブレンボ製でフロントにはラジアルモノブロック4Pを採用するなど完全にスポーツライドを意識した装備へと進化。

電子制御も5種類のライドモード(スポーツ、ロード、レイン、カスタム2種)に加え、コーナリング対応のABS&トラコンに過度なエンブレを電気的にコントロールするC-DSCSやクルーズコントロールを標準装備するなど安全で快適な走りをサポート。

これらのデバイスは丸型4インチのTFTディスプレイで簡単に操作できるなど、今の2輪業界の最先端が惜しみなく注がれている。ひと言で表現するならば、Pan Americaで成功を収めたエンジンと車体と電制パッケージの組み合わせを、現代のスポーツスターのあるべき姿として再構成したモデルと言えよう。

スポーツスターのマインドを持ったまったくの別モデル

新型スポーツスターSの第一印象は未来からやってきたスポーツスターという感じ。往年のフラットトラッカーを彷彿させる2-1-2ハイマフラーや、フォーティエイトの流れを感じさせる極太フロントタイヤなど、全体のシルエットにかつての面影を残しつつも近くで見ると何ひとつ同じものはない。スポーツスターのマインドを持ったまったく別のモデルである。

前後にストレッチされた伸びやかなスタイルはハーレー流。安易にスポーティさを狙ってシートを高くしたり、車体をコンパクトにしたりせずに本当に良かったと安堵する。たとえスポーツモデルであっても頑固に伝統のスタイルを貫くところに王者の貫禄が見える。

ライポジは米国製らしく大柄だが、シートは755mmと低くフラットで、跨りやすく足着きの良さもバツグン。車重は228kgとこのクラスとしても軽量でハーレーの中では特段に軽い。スタンドを払って起こすときから低重心で安定していてバランスの良さを感じる。

その加速、エキサイティングでスパイシー

セル一発でズドンと目覚める腹に響く轟音。大排気量Vツインらしい脈動するパルスの重厚感はPan Am以上の迫力だが、走り出すと呆気にとられるほど回転が滑らか。重いクランクがドコドコ回っている従来のハーレーのイメージとは異質のフィーリングだ。

低中速にフォーカスした出力特性はピークパワーこそ120ps台に抑えられているが、一方でトルクはPan Amに対し3000rpm~6000rpmで最大10%アップするなど強烈至極。「ロード」モードでも凄いが、「スポーツ」で少し強めにアクセルを開けると百戦錬磨のベテランライダーでものけ反るほどの加速を見せる。

エキサイティングで刺激的、まさに公道を走るドラッグマシンのようだ。ちなみに「レイン」だとレスポンスがだいぶ穏やかになり扱いやすくなる。普段の街乗りだとこれで丁度いい感じだ。

腕力が正義!?の超個性派ハンドリング

ハンドリングはとても個性的だ。前後タイヤサイズを確認すると、160/17と180/16の組み合わせ。なんとフロントに通常のバイクのリヤタイヤに相当する極太サイズを履いているのだ。だからフロントが重くねちっこく、常に存在感を主張してくる。マッチョな米国人が腕力でねじ伏せるイメージのハンドリングだ。

「え、なんでこうなの!?」と乗り始めは頭の中を?マークが飛び交ったが(笑)、都内近郊を走り込んで慣れてくると、この骨太な乗り味がなかなかクセになってくるのだ。よく考えると、これだけの巨大トルクである。軽すぎても逆に怖いだろうし、この車格とパワーに見合ったフロントの接地感が必要だったのかも。

ハンドリングというと枕詞には「軽快感」がくるのが当たり前のような現代において、この曲者は逆に気持ちいい。

これぞハーレー流、USA魂みなぎるスポーツマシン

それでいて、キャスターは立ち気味でフォークオフセットも現代的に詰まっているし、加えてフロントタイヤのプロファイルも比較的尖っているのでステアリングの応答性自体は鋭い。だから、きっかけさえ与えてやればスパっと舵角がついてきれいに曲がっていく素直さもある。

低速ターンでもステアリングの切れ込みにビビッて押さえてしまうとダメで、逆に切られてやることで小さくも曲がれる。そして、速度レンジが上がるほどにピタっと安定圏に入り、ハーレーらしいどっしりとした盤石の走りを楽しませてくれる。良くも悪くも“手応えのあるハンドリング”。

これぞハーレー流のスポーツライディング、これぞメイド・イン・USA!の醍醐味だろう。

インチからセンチへ、すべてが新しく個性的

ブレーキタッチもかっちりしてよく効くし、クラッチも軽く発進・停止も楽。今や業界標準となったコーナリングABS&トラコンという保険があるお陰でリラックスして難しいコーナーにも入っていける。LEDヘッドライトも明るく丸型TFTメーターもスタイリッシュで見やすいなど枝葉末節のディテールにも手抜きがない。

そういえば、今回のスポーツスターSからボルトのサイズもインチからセンチメートルへと単位が変更されたとか。いろいろな意味で高精度になり機械としての信頼性もアップしているようだ。

すべてが新しくすべてが個性的。「スポーツスターS」はハーレーからの挑戦状なのだ。

一点、最後に気になったのは、このマシンの過激な走りに対してステップ位置が前過ぎること、そしてリヤサスの乗り心地が固いこと。この辺りは好みもあるし、タンデムキットやミッドコントロール用キットなどのカスタムパーツがちゃんと用意されているので、自分好みに仕上げていけば良いだろう。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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