菅首相が辞任の意向との報道を受けて、株高・円安・債券安で反応したのはどうしてか
菅首相は自民党の臨時の役員会で、今月行われる自民党総裁選挙に立候補せず、辞任する意向を表明した。官邸筋は3日、菅義偉首相の自民党総裁選不出馬について「6日に予定していた党役員人事に行き詰まっていた」と指摘したそうである。いわば四面楚歌に置かれたものと思われる。
これを受けての金融市場の反応は株高・円安・債券安となった。ここにきて日経平均は強含みの地合が続いていた中で、米国株式市場の上昇を受けてという面もあったが、菅総理を見限った動きであったのかもしれない。政権の支持率が低下し、衆院選挙を菅首相で行った場合には、自民党の議席が大きく減少することも予想され、政局の不透明感が強まりかねない。菅首相以外であれば、少なくとも菅首相よりもましな選挙となるのではとの期待も出てこよう。
現状、自民党総裁選に出馬を表明しているのは岸田文雄前政調会長だけとなり(その後、河野太郎規制改革相が出馬の意向を表明)、もし岸田氏が総裁となれば、大規模な経済対策を打ち出してくる可能性がある。29日、記者団に対し「来年の春までしっかりと見通せるような数十兆円規模の経済対策を早急に取りまとめて、打ち出すべきだ」と述べていた。
株式市場では不透明感がやや後退したことに加え、大規模な経済対策への期待による買いも入ったのかもしれない。また、国債増発が意識されて国債が少し売られたとも思われる。円高や長期金利の低下が起きなかったということは、少なくともリスクオフではなく、リスクオンの動きであったともいえる。最低最悪の事態は回避されるとの期待もその背景にあったのかもしれない。
ただし、菅首相の総裁選も不出馬により、あらたな候補者も出てくることが予想され、岸田氏が有利かどうかは今後の候補者次第との面もある。衆院選挙を控え、国民からの期待を集めるためにも、人気面なども重視されるかもしれない。今後の金融市場の動向は自民党総裁選の動向に大きく影響を受けると思われる。総裁選と衆院選のスケジュールにも注目したい。