日銀は総裁インタビューを通じて年内のマイナス金利政策解除の可能性を示唆、9月の会合での修正の可能性も
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読売新聞は9日の朝刊一面で、日銀総裁の単独インタビュー記事を一面に掲載した。タイトルは、『マイナス金利解除「選択肢」、賃金・物価上昇なら』となっていた。
このインタビュー記事の内容で注意すべきは「物価目標の実現にはまだ距離がある」としながらも、マイナス金利解除を選択肢としてあげたことであろう。マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば「やる」と発言。また「ビハインド・ザ・カーブを積極的に許容するというわけではない」とも発言していた(9日付読売新聞)
記事では、読売新聞の単独インタビューに応じたとあったが、タイミングからみて、日銀側から働きかけた可能性は高い。市場が休みの土曜日の朝刊ということからも、市場に配慮していたことが窺える。
4日の週は日銀の高田審議委員と中川審議委員の講演が行われたが、こちらでは特にあらたな示唆はなかった。今回は審議委員などを通じてではなく、総裁のインタビューというかたちで、このタイミングで(インタビューは6日に日銀本店で実施)、日銀の今後の姿勢を示す必要があったものとみられる。
今回の日銀総裁のインタビュー記事から窺えるのは、日銀がマイナス金利解除を視野に入れつつあるというか、入れざるを得なくなってきたということではなかろうか。大きな要因は円安であろう。
昨年12月と今年7月の長期金利コントロールの上限引き上げも、日銀が円安に対して無回答はありえないための修正とみることができる。しかし、日銀は金融政策の方向性は変えず、正常化も拒否しているような格好であり、そこをさらに市場につかれ、再び円安が進行してきた。
これに対処するには、日銀が頑として拒否してきた金融政策の方向性を変える以外になく、その結果、マイナス金利解除を視野に入れざるを得なくなったとみられる。
むろん、総裁のインタビューにもあったが、国内物価が日銀の想定以上に上振れていたことも要因となっていよう。
そもそも物価の番人が、物価上昇に対して何も対応しないことのほうがおかしい。消費者物価指数は米国より日本のほうが上昇率が高くなっているにもかかわらず、米国の中央銀行にあたるFRBが政策金利を5%台に引き上げているのに対し、日銀はマイナスというのはどう考えてもおかしい。
今回の日銀総裁のインタビュー記事は、媒体やタイミング、内容からみて、日銀は年内にマイナス金利政策を解除する可能性を示唆したものとみざるを得ない。
7月の決定会合で長期金利コントロールの上限について実質1%への修正を行ったが、その前の7月8日に内田副総裁によるインタビュー記事が日本経済新聞と共同通信に掲載されたことを思い出してほしい。インタビューを受けた人や、メディアは異なるが、今回も同様かとの印象を持った。
年内の金融政策決定会合は9月21、22日と10月30、31日、そして12月18、19日に予定されている。
タイミングからみて9月21、22日の金融政策決定会合で何らかの動きが出る可能性がある。
たとえば、公表文の最後の文章の「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」の修正あたりからの可能性はある。
むろん、マイナス金利政策の解除の可能性も十分にありうるというか、これが本命である可能性がある。その際には本来であればYCC解除を含め、金融政策の正常化を進めることが必要となるが、そこまでの期待に応えられるかどうかはやや不透明感もある。これによってやっと日銀が重い腰を上げるのか、22日の金融政策決定会合の結果に注目したい。
そういえば、8日の日本の債券市場はやや奇妙な動きとなっていた。債券先物の中心限月が実質的に移行したが、現物債はチーペストに近い5年債や10年債が買われたのはそれが要因であったかもしれない。
しかし、超長期債が前場は買われていたものが特に材料もないなか後場になって比較的大きく売られていた。また、普段それほど動きをみせない2年債が買われ、ゼロ%に利回りが低下していた。これは日銀絡みで何かが出ている可能性はあると個人的にはみていたが(マイナス金利政策解除なら本来は2年債は売られるはずだが)。市場は何かしら動きがありそうなことを察知していた可能性があった。