高齢者の自動車運転、日本は他国と比べて多いのだろうか
高齢化の進行と地域の過疎化に伴い、高齢者による自動車事故が社会的問題の一つとしてスポットライトを浴びている。生活の維持のためには行動範囲を広げる自動車などの移動手段は欠かせないが、心身の衰えに伴う判断ミス、不意の発症のリスクは大きく、交通事故が生じれば自身だけでなく周囲の人まで被害を受ける。今回は内閣府が2016年5月に発表した、高齢者の生活と意識に関する国際比較調査の最新版となる第8回調査(2015年9月から12月にかけて日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンにおいて、60歳以上の男女(老人ホームなどの施設入所者は除く)の結果から、日本だけでなく他国の状況も合わせ、高齢者が外出する時の利用手段の中から、自らの体力を消費することなく移動先を決められる移動手段として、バイクやスクーター、そして自分で運転する自動車を取り上げ、その利用実情を確認していくことにする
次に示すのは「ふだん、外出する時に何を利用するか」との複数回答の問いにおいて、選択肢として「徒歩」「自転車」「バイク・スクーター」「自分で運転する自動車」「家族などの運転する自動車」「バス・路面電車」「電車・地下鉄」「タクシー」「自分で操作する車椅子」「介助者が必要な車椅子」「その他」を用意した中で、冒頭にある通り「自らで移動経由や行先を細かく決められる」「移動の際に体力の消費を必要としない」「いつでも利用できる」の条件に合致した、「自分で運転する自動車」「バイク・スクーター」の回答率を抽出したもの。例えば日本では「自動車(自運転)」が51.9%とあるので、60歳以上の半数強は自分で運転する自動車を普段外出する際に利用していることになる。
どの国でもバイクやスクーターを利用する人はごく少数。運転時の安定性や運動能力の必要性などを考えると、自動車運転と比べて格段の難しさがあるため、バイクよりは難易度が低いスクーターでも利用する人はあまりいないのだろう。自分で運転する自動車ではアメリカ合衆国の81.5%がもっとも多く、次いでスウェーデンの64.7%、ドイツの61.8%が続く。日本の51.9%は実のところ今回調査国の中では一番低い。
これについて、各国の年齢階層別に見たのが次以降のグラフ。
「バイク・スクーター」が全体値では一番値が高かった日本だが、(海外と比べて、ではあるが)高齢でも少なからぬ人が利用しているのが分かる。アメリカ合衆国の85歳以上・3.9%はイレギュラーの感があり、それを除けば日本の高さが際立っていることは一目瞭然。特に70歳以降の利用者の多さは、後述する自動車(自運転)と合わせ見ると、自動車の代替手段的な形で利用している人が多分にいるのではと思わせる。もっとも、一番値の高い日本ですら数%でしかないので、誤差の範囲と解釈すれば、それまでなのだが。
自分で運転する自動車の割合は、当然ながらどの国でも歳を経るほど減少する。歳を重ねるほど心身ともに衰え、自動車の運転に耐えられなくなる(・耐えられないと周囲が判断して止めさせる)からだ。
他方、各年齢階層の値を見ると、ベースとなる60代前半の値は日本が低く、ドイツとスウェーデンはやや高めだが減り方は類似している。一方で、アメリカ合衆国は60代前半で8割強の人が用い、約8割の値は80代前半まで維持されている。さらに85歳以上でも約6割の人が自分で自動車を運転すると回答している。同国において自動車は生活必需品となっている実態が容易に理解できよう。
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