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サウジから聞こえてきたスター選手たちの声。ミケルソンは「競争に感謝」と語ったが、残る大きな疑問!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

フィル・ミケルソンやダスティン・ジョンソンなど米欧両ツアーのスター選手たちが複数参加しているPIFサウジ・インターナショナル会場から、「彼らの声」が少しばかり聞こえてきた。

誰もが「秘匿」を守るべき状況下にある様子で、詳細に語られたわけではないが、伝統あるPGAツアーのAT&Tペブルビーチ・プロアマを欠場し、あえてPIFサウジ・インターナショナル出場を選んだ彼らの胸の内が、少しばかり垣間見える「声」ではあったが、それを聞いて「何か」を思ったファンもいるはずである。

米国の国民的スターであり、30年の長きに亘り、PGAツアーを盛り立ててきたミケルソンは「僕はこの競争に感謝している」という。その真意は、どういうものなのか。

【競争原理!?】

今週開催のPIFサウジ・インターナショナルは、今年からアジアツアーのフラッグシップ大会となり、賞金総額500万ドル(約6億円)と高額のアピアランスフィーをオファーして大勢のトッププレーヤーたちを彼の地に引き寄せている。

アジアツアーには、すでにグレッグ・ノーマンCEO率いるリブ・ゴルフ・インベストメンツが総額3億ドル(約345億円)の投入と年間10試合にわたるインターナショナル・シリーズ創設を発表したばかりだ。

その背後にいるのが、今年から同大会のタイトル・スポンサーになった政府系投資ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)。さらにその背後にはサウジ政府と莫大なサウジ・マネーがうごめき、PGAツアーに対抗するSGL(スーパー・ゴルフ・リーグ)なる新ツアーを立ち上げようとしている。

PGAツアーは欧州ツアーと戦略的提携を結び、「サウジ勢力」をけん制。ツアーメンバーである選手たちの新ツアーへの流出を阻止する目的で、昨年から次々に新たな対応策を打ち出している。

人気や露出の度合いをランキング化し、トップ10にボーナスを支給するPIP(プレーヤー・インパクト・プログラム)を創設。プレーヤーズ選手権の賞金総額を20ミリオンへアップさせ、年間王者に授けるボーナスも10ミリオンから15ミリオンへ、さらには20ミリオンへと引き上げている。

「サウジ勢力」が動き出したことで、PGAツアーがそんなふうに牽制のための対応策を打ち出し、その結果、「PGAツアーに(僕らにとって)より良い仕事環境が生まれる」と考えているミケルソンは、「(両者の)競争に感謝している」と語った。

【もっとエキサイティング!?】

スコットランドのメディアの報道によれば、英国のリー・ウエストウッドは、すでにSGLあるいは「サウジ勢力」と「秘密保持契約」を交わしたとのこと。しかし、それでも彼はこんな考えを口にした。

「72ホールのストロークプレーを延々映し出すTV中継は緩慢ではないか?ゴルフはもっと熱くてインパクトのある動きで魅せるほうがいいのでは?」

これは、SGLが提唱しているチーム戦のことを暗に示していたのだろう。ダスティン・ジョンソンも「(チーム戦は)いいコンセプトだと思う。ファンにとってもプレーヤーにとっても、より楽しいものになる」

仮にチーム戦が「より良い」ものなら、それをPGAツアーに採り入れるという道もあるはずだが、今のところ、そういう声は聞こえて来ず、もはや2者択一しかないかのような空気が広がりつつある。

【“全員”がオファーされている?】

今週のサウジ・インターナショナルに出場しているミケルソン、ジョンソン、ウエストウッドをはじめ、ブラインソン・デシャンボー、ザンダー・シャウフェレ、セルジオ・ガルシア、ポール・ケーシーといった選手たちが、高額と引き換えに新ツアーへの移行をオファーされていることは想像に難くない。

だが、ミケルソンいわく、「世界ランキング100位以内のほぼ全員が交渉やオファーを受けていると思う」。

「イアン・ポールターが30ミリオン(3000万ドル)をオファーされた」という情報を掴んだ米メディアが、その数字をジョンソンにぶつけ、「アナタへのオファーも似たような数字ですか?」と問いかけてみたそうだ。

「いや、似たような数字ではないね。そんな数字ではない」

桁が違うという意味なのだろうか?そうだとすれば、数十億円ではなく数百億円ぐらいのオファーを受けているということになる。

ミケルソンは「競争」に感謝していると語ったが、こんな「マネー競争」に感謝するゴルフファンは、果たして、どこに、どれほどいるのだろうか?

それが最大の疑問である。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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