新社会人への「つうこんのいちげき」な言葉
新しい環境に足を踏み入れたばかりの新社会人にとっては、就業中の出来事や仕組みは、何もかもが目新しいものばかり。戸惑い、焦り、自信喪失すら覚えるかもしれない。学生時代にアルバイトやインターンなどで訓練、事前知識の習得をしていても、勤めてからはじめて知ったことなどは山ほどあり、不慣れなことからミスをしてしまうことも少なくない。そのような場面において、先輩達からキツイお小言を受けることも当然ある。
そのお小言の中でも理不尽な内容、または理解はしていても内容的に、あるいは言い方次第でモチベーションを削られる、やる気を奪われてしまう、ある意味「魔法の呪文」的な言い回しは多数存在する。そのような言葉を列挙し、「自分ならばこんな言葉をかけられたら、やる気が減退する」と思うものを3つまで挙げてもらった結果が次のグラフ。ソニー生命保険が2014年4月に発表したもので、今春就職する社会人1年生と就職してから1年経過した社会人2年生、合わせて500人ずつ計1000人から聞いた結果である。
もっとも多くの人が「これを言われたら凹む」と同意を示したのは「この仕事向いてないんじゃない?」で、同意者率は44.9%。仕事の成果がうまく出せない、作業でもたつく、さらにはミスをしてしまった時に、このような言葉をかけられると、追い打ちをかけられた気分になり、やる気を失ってしまう。
せっかく選んだ仕事への希望や夢そのものがぐらつき、気持ちを揺るがされてしまうかもしれない。何しろその仕事の先輩からの言葉なのだから。たとえ声をかけた先輩側が深い考え無しに、さらには「奮闘してもらうべく発破をかけた」と意図的にやったのだとしても、その通りに新社会人が認識することはあまり多くない。
「この仕事向いてないんじゃない?」と似たようなものには「やる気ある?」も該当する。新社会人側の人格そのもの、少なくとも仕事面における本人を否定するような、自らの誠意や努力そのものを無下にするニュアンスにとらえてしまうもの。
また、個人にではなく、同一世代全体にレッテルを貼る形で酷評する「ゆとり世代だなぁ」「私が若いころは●●だったのに」「学生気分が抜けてないんじゃない?」のようなものも、モチベーションを下げやすい。自分自身の具体的な問題点の指摘ならともかく、所属属性をひとくくりで云々と酷評されてしまっては、なすすべもないからだ(例えば自分の卒業した大学名を挙げられ「まったく●×大学はこれだから」となじられたら、あなたはどう思うだろうか?)。さらには「自分を個人としてでは無く、世代・属性全体の一部としてしかとらえてない」と、個人としての人間性の否定としてすら認識してしまうかもしれない。
また、価値観の相違を先輩側の絶対真理として押し付ける、理不尽な指導的言い回し「そんなことは常識でしょ」「空気読もうね」「言い訳はするな!」「いや、そうじゃなくて」「社会ってそういうものだから」なども新社会人のやる気を削ぎやすい。理由づけの無い強要は、得てして反発を招くものである。
これらの言葉はケースバイケースな事例が多い。(一部を除けば)一律で否定するわけでは無い。しかしながら、今回挙げられた言い回しの多くは、新社会人に理解納得してもらい知識や経験として会得して欲しいとの想いから発せられる「叱り」ではなく、単なる「怒り」あるいは「嘲笑」的な意味合いが強い。それらは「指導」では無く、単なる先輩らの憂さ晴らし的なものとなり、新社会人には何らプラスとならない。それどころかマイナスの影響すら与え得る。
社会人の先輩諸氏は、くれぐれも配慮をしてほしいものである。
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