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18歳投票率が高過ぎると話題になった青葉区を大きく超える72%神崎町ってどこ?

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

神崎町の18歳投票率が72%と、高過ぎると話題の横浜市青葉区の68%を大きく超えた

高橋亮平(一般社団法人政治教育センター代表理事・NPO法人 Rights代表理事・元中央大学特任准教授・元市川市議・元市川市長候補)ブログでは、先日も『【18歳選挙権×東京都議選】18歳投票率、参院選では東京都が全国1位だったが、都知事選は9%減』(https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashiryohei/20170412-00069799/)を書いたばかりだが、今回は市区町村レベルの基礎自治体ごとの18歳投票率について紹介したいと思う。

総務省が2016年7月に実施された参議院選挙について各都道府県の18、19歳の有権者を抽出して実施した選挙区の投票率の調査で、横浜市青葉区の市立荏子田小学校の投票所の18歳の投票率が73.49%と高過ぎると話題になったことがあった。

この結果を受けて、神奈川県警青葉署が横浜市青葉区の県立高3校に「区の18歳投票率が高いが、特別な取り組みをしたのか」と電話で問い合わせ、さらにそれに対し弁護士たちによる自由法曹団神奈川支部が「教育内容への不当な干渉」などと抗議する声明を出すなどの問題にもなったほどだった。

青葉区全体の18歳投票率は結局67.54%ということだったが、今回、千葉県内自治体の18歳投票率について調べていたところ、驚くような結果が見られた。

個人的には全国の自治体ランキングを出したいところだったが、総務省が全国の基礎自治体ごとの18歳投票率を公表しているわけではないので、今回はその調査の第一弾として地元千葉県を題材に自治体ごとの18歳投票率について書いていく事にしたい。

図表: 自治体別18歳投票率ランキング(千葉編)

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出展: 第24回参議院議員通常選挙における18歳、19歳の投票率(千葉県)等から筆者作成

千葉県内で18歳投票率が最も高かったのは、意外にも神崎町(こうざきまち)だった。

しかもその投票率は、71.64%という驚きの数字だった。

まだ全国の自治体の投票率を調べたわけではないが、全国で最も18歳投票率の高い自治体である可能性すらある10人中7人以上が投票に行くという日本では考えにくいような割合だ。

神崎町は千葉県香取郡にあり、成田空港のある成田市に隣接し、成田市への通勤率が30%弱という人口約6,000人の町である。

今回の対象となった18歳の有権者は67人しかおらず、県の選挙権利委員会に話を伺いに言ったところ「小さな自治体ですから、とくにこの事について調査などは行っていません」との事でしたが、それでも67人中48人が投票するというのは驚異的な結果であり、どういった事がこの結果に結びついたのか検証はすべきように思う。

ちなみにこの神崎町の選挙管理委員会にヒアリングしたところ、とくに何か目新しいことをやったわけではなく、県選管が用意したチラシなどを対象となる10代全員に直接郵送を行なったぐらいだという。

2位は長柄町(ながらまち)の69.49%と小規模自治体が上位をしめる結果となった。

県内3位で市として最も18歳投票率が高かったのは、「さすが民度が高い」という感じだが、東京に最も近く東京ディズニーランドがあることでも知られる浦安市で66.48%だった。

県内18歳投票率ベスト10に入った市でいうと、印西市が61.44%で5位、白井市が60.83%で6位、流山市が59.71%で7位、船橋市が57.97%で9位となった。

人口100万人近い政令指定都市である千葉市も57.32%の11位と検討した。

地元の市川市も56.74%の14位ということで、人口が48万人、18歳の有権者3,849人中2,184人が投票に行ったということを考えれば、国や県の投票率も超えたので、頑張ったといったところだろうか。

逆に最も18歳投票率が低かったのは、旭市の36.98%だった。

神埼町では18歳の投票率が全体投票率より16%も高い

図表: 18歳と全世代の投票率の差ランキング(千葉編)

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出展: 第24回参議院議員通常選挙における18歳、19歳の投票率(千葉県)等から筆者作成

今回18歳投票率について調べるに当たって、それぞれの自治体における全世代による全体の投票率との比較についても調査した。

18歳選挙権導入後初の国政選挙となった参議院議員選挙。

この際の国全体の18歳投票率は最終的に51.28%だったわけだが、総務省が選挙直後の7月11日に出した抽出調査の結果である51.17%という数字に対して、ほとんどのマスコミは「低かった投票率」などと、18歳選挙権導入によって新たに選挙権を得た18歳、19歳の投票率に対して厳しい論調だった。

この18歳投票率の結果については以前にコラムを書いているので、興味のある方はこちらも見てもらえればと思う。

18歳投票率51%とノルマ達成、次は大人が応えろ!』(https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashiryohei/20160712-00059894/

個人的には、18歳選挙権実現前から「10代だけ極端に高い投票率になることはあり得ず、世界的に見ても20代前半よりは10代の投票率は年齢が低いほど高くなる傾向はあるが、全体の投票率は低くなる」とメディアや取材などでも話し続けてきた。

その点で言えば、今回の参議院議員選挙では、このコラムに書いたように10代はノルマを達成し、それなりの結果を出したと思っている。

では、なぜメディアや新聞等マスコミはこぞってネガティブに伝えたのかを考えたい。

おそらく、マスコミはもちろんマスコミが話を聞きに行った政治家、自称専門家も含めて、事前の調査不足や勉強不足だと言ってしまえばそれまでだが、その比較対象として置いているのが、全体投票率であり、結果的に「18歳投票率の方が全体の投票率より低かった」という事象から反射的にコメントしたように思う。

最終的に総務省が公表している数字を見ると、国全体では▲3.42Pと18歳投票率の方が低かったものの、千葉県では逆に1.90P、東京都は4.73P、神奈川県2.98P、埼玉県3.37Pと、首都圏の4都県では逆に18歳の投票率の方が、全体の投票率より高い結果になっているのだ。

今回18歳投票率が最も高かった神埼町では18歳の投票率が全体投票率よりも15.57Pも高いという驚きの結果となった。

この結果を見ると「何やってんだ大人は!」という声も聞こえてきそうだが、神崎町の全体の投票率は56.07%で千葉県内では10位と決して低いというわけではない。

ただそれを差し引いても大人より15P以上投票率が高くなった要因分析はして行く必要があると思う。

県内においては、2位の長柄町も18歳投票率の方が15.11P、3位の浦安市も12.78P高いという結果となるなど、この3自治体だけが抜きに出て高い結果となった。

一方で、今回調査対象となった千葉県内自治体54市町村でも29市町村では全体投票率の方が高いという状況であり、この差がワーストだった鋸南町(きょなんまち)は▲10.40P、ブービの南房総市も▲10.14Pと18歳投票率が全体投票率より10P以上も低い状況になっている。

こうした若年層に向けてどういう働きかけをして行くかは今後の課題になる。

その意味でも、偶然かもしれなくても高い結果が出た自治体が行なった事例はしっかりと検証して紹介して行くべきではないだろうか。

新たな課題、住民票を実家に置いて行く「19歳投票率」を今後どう対応するか

図表: 自治体別19歳投票率ランキング(千葉編)

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出展: 第24回参議院議員通常選挙における18歳、19歳の投票率(千葉県)等から筆者作成

もう一つ最後に触れておきたいのが「19歳投票率」についてだ。

今回の千葉県内自治体調査の中で最も19歳投票率が高かったのは、芝山町(しばやままち)の56.8%、次いで白井市の53.87%、一宮町(いちのみやまち)の 53.77%、浦安市の51.82%と続いた。

ちなみに県内で18歳19歳を合わせた10代投票率で見ると、最も高かったのは浦安市の59.05%だった。

今回の参議院選挙の結果を見ると、全国では18歳が 51.28%に対して42.30%と▲8.97P、千葉県全体でも18歳53.92%に対して19歳46.01%と▲7.91P、東京都も18歳62.23%・19歳53.80%で▲8.42P、神奈川県18歳58.44%・19歳51.09%で▲7.35P、埼玉県18歳55.31%・19歳46.31%で▲9.00Pといずれも10P弱19歳投票率が低い結果となっている。

こうした傾向は日本だけでなく、世界的な傾向であり、単純化して言えば、投票率は一般に「年齢が若くなるほど投票率が低くなる」と言われるが、こと10代においては、「年齢が低いほど投票率が高くなる」という傾向がある。

今回の結果でも20代の投票率よりも19歳、その19歳よりも18歳が高くなった。

ヨーロッパで「16歳選挙権」を実現している国や地域においては、さらに18歳よりも17歳、17歳よりも16歳の投票率が高い傾向が出ている。

19歳投票率が低投票率になる要因には色々なものがあるが、その一つに大学生などが住民票を実家に置いたまま移さずにしていることなどもあると言われる。

ヨーロッパでは、年齢が低いほど親との同居率も高く、こうした同居による親の影響や政治教育などによる効果だと言われている。

以前のコラムでも『両親さえ投票に行けば、子どもの投票率は71%になるが、大事なのは投票率じゃない』(https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashiryohei/20150806-00048233/)と紹介したように同居する両親が投票に行くと、その子どもの投票率は高くなる。

投票率の低下は、総務省や選管の抱える大きな課題、情報は引き続き公表を

千葉県では、今年3月に千葉県知事選挙が行われている。

今回、18歳投票率が極めて高かったと紹介した神崎町だが、この知事選においては、ここまでの高い投票率にはならなかったとの事だった。

県知事選挙時の18歳19歳の投票率については県の調査項目に答えたが、県が公表していないので現段階では話せないとの事だった。

自治体のデータでありながら県がしてないことは勝手にできないなど、地方分権化が進んだ現在において1990年代以前の役所か…と思うが、町役場だからしょうがないということだろうか。

一方で県選管にヒアリングをすると県知事選の18歳・19歳の投票率については、県全体の数としてはGW後に公表するが、市町村別データについては公表しないという。

「データの量が膨大になるので…」ということが理由のようだが、ビッグデータの時代に一体いつの時代の人ですか…と言いたい。

これも千葉県のレベルということだろうか。

投票率の低下は、総務省や選管の抱える大きな課題でもある。

各都道府県選挙管理委員会の状況が千葉県と同レベルであるのであれば、総務省当たりが責任を持って自治体ごとの世代別投票率についてもしっかりと公表することで、どの自治体のどういった対応が投票率についても良い影響が出るのかなどといった調査も行なってもらいたいものだ。

少なくとも情報は引き続き公表をしてもらいたい。

今年はこの後に夏には都議会議員選挙、その他の地域でも首長選挙など様々な選挙が続く、18歳の投票がどうなって行くのかについて、周りの環境も含めて引き続き見て行くことにしたい。

図表: 自治体別18・19歳投票率ランキング(千葉編)

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出展: 第24回参議院議員通常選挙における18歳、19歳の投票率(千葉県)等から筆者作成

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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