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89%は「対策強化が必要」…高齢運転者の実情

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 瞬間の判断ミスも事故につながる自動車運転。応対が鈍る高齢者ではリスクも高まる

7割近くは「高齢運転者は反応が遅い」と思っている

社会の高齢化と地域の過疎化に伴い、高齢者の運転者率が増え、それは必然的に高齢運転者(75歳以上)による事故の多発につながり、社会問題視されているのが現状である。それでは実態としてどれほどまでに事故率は高く、そして社会全体として、高齢運転者への現状以上の対策はどの位の人達から望まれているのだろうか。昨今の情勢にかんがみ、警察庁も対応を検討するため、その裏付けとなる調査を行い、先日その結果「高齢運転者による交通事故防止に関するアンケートの実施について」が発表されている。今回はその公開データを基に、高齢運転者の実情を確認していくことにする。

2013年における原付以上運転者による第一当事者(事故において責任が重い側)の運転免許保有者10万人あたりの死亡事故件数は、75歳以上に限定すれば75歳未満の2.5倍という結果が出ている。絶対数は75歳以上の方が当然少ないものの、比率の上でははるかに高い重要事故発生比率であることにも違いない。

↑ 2013年の免許保有者10万人当たりの死亡事故件数
↑ 2013年の免許保有者10万人当たりの死亡事故件数

このような状況の中、世間一般には高齢運転者に対して、どのような印象があるのだろうか。12%強の高齢運転者該当者自身も含む調査対象母集団に、複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。「ブレーキを踏むのが遅れるなど、運転時の反応が遅い」とする意見は68.9%。7割近くの人は「運転時の反応が遅い」というイメージを高齢運転者に持っている。

↑ 一般的に75歳以上の高齢運転者にどのようなイメージを持つか(複数回答)
↑ 一般的に75歳以上の高齢運転者にどのようなイメージを持つか(複数回答)

似たような回答で、注意力が減退することにより「周囲の状況に注意を払わない」とのイメージを持つ人は56.3%。一方で好意的な内容、例えば「周囲の状況によく気を配って運転している」は13.0%でしかない。大勢としては「高齢運転者は(加齢などの影響で)運転の上では若年層と比べて反応の面でリスクが大きい」との認識ということになる。

89%は「高齢運転者には今以上の対策をすべし」

このような厳しい認識を持つ社会全般として、高齢運転者にはどのような対処をすべきという考えが有るのだろうか。対策方面で選択肢を用意し、いずれか一つを選んでもらった結果が次のグラフ。現状以上の対策を求める意見が88.9%を大勢を占める形となった。

↑ 75歳以上の高齢運転者による交通事故について、どのように思うか(択一)
↑ 75歳以上の高齢運転者による交通事故について、どのように思うか(択一)

グラフでは左側の選択肢ほど高齢運転者対策への重要認識度が強い。最優先は3割足らずでしかないが、(最優先では無いにせよ)現状以上の対策を打つべきであるとの意見は6割に及び、現状以上の対策は必要ないとの意見は1割にも満たない。今調査対象母集団のうち12%強が高齢運転者自身なので、それらの人の中にも対策強化を願う人が少なからずいることになる。

警察庁では今件調査結果を受け、検討委員会の開催などを経て、具体的な対策に乗り出す姿勢を見せている。高齢者の数・人口比が今後も増え、リスク体現「実数」が増加することが容易に想像できることを考えれば、極めて順当な対応ではある。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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