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サラリーマンのこづかい防衛作戦2018

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自前のお弁当持参も節約方法のひとつ。(写真:アフロ)

・サラリーマンでこづかい面で最近やりくりをしている人は8割強(2018年)。

・やりくりの具体的な内容は昼食代節約がもっとも多く全体では4割強。次いで飲む回数を減らす、水筒の持参。

・こづかい不足時のねん出方法のトップは「使わずに我慢」で全体では6割強。次いで預貯金の取り崩し、家計からねん出。

節約方法のトップは「昼食代を削る」

多くのサラリーマンにとってこづかいはもっとも身近で、自分自身に大きな影響を与える金銭問題となる。そのこづかいが自分の望む額を下回る場合、多様な工夫を凝らし、節約をすることになる。今回は新生銀行が毎年発表している、サラリーマンのこづかい事情を調査した定点観測の報告書「サラリーマンのお小遣い調査」(※)の最新版にあたる2018年版などから、サラリーマンにおけるこづかいの防衛作戦の実態を確認する。

今報告書によればサラリーマンの直近における平均こづかい額は3万9836円(月額)となり、昨年と比べて大きくアップする形となった。

↑ サラリーマンの平均こづかい額(月額、円)
↑ サラリーマンの平均こづかい額(月額、円)

個々の金銭感覚や消費実情はそれぞれだが、この額では不足する人もかなりいるはず。必要経費に近い昼食代、携帯電話料金などを差し引くと、自分の自由意思をある程度以上反映できる余剰資金にどれだけ残せるかを考えれば、誰もが納得できるはず。

「こづかいが足りない、首が回らない」。その際、どのような工夫・節約で「こづかい防衛」を果たしているのだろうか。やりくりをしている人は全体で8割強。若い方がやりくりをしている人の割合は大きい。

↑ こづかい面で最近やりくりをしていることがある人(サラリーマン)(2018年)
↑ こづかい面で最近やりくりをしていることがある人(サラリーマン)(2018年)

そこでやりくりをしている人に限定し、上位項目について年齢階層別に区分し、グラフ化したのが次の図。全体、そして各階層でも「昼食代(を削る)」がもっとも多く3割台の結果が出た。

↑ こづかい面における自衛策(やりくりをしているサラリーマン限定、複数回答、対処する項目、一部、年齢階層別)(2018年)
↑ こづかい面における自衛策(やりくりをしているサラリーマン限定、複数回答、対処する項目、一部、年齢階層別)(2018年)

20代の昼食代節約率は42.8%と他の年齢階層より高め。30代も41.2%と4割超え。弁当持参が難しい未婚者の率は若年層では高く、社員食堂の利用機会があればそちらを利用している可能性は高い。社員食堂を利用できる環境下にあるのなら、外食や購入弁当よりも廉価で昼食を取ることが容易だからだ。

続く回答は「飲む回数(を減らす)」。大よそ1/4。サラリーマンにとっては昼食同様、数少ない憩いの場、息抜きの時間であることから、それを減らさねばならないのはよほどの苦痛に違いない。

「水筒持参」は全体で25.2%。20代が飛び抜けて高く、30~40代は低め。同じ持参の「弁当持参」よりも高めなのは、弁当を作る・作ってもらうよりも気軽に用意できるからだろう。その「弁当持参」でも20代が一番高い値を示しているのは意外ではあるが(既婚率が高く子供がいる可能性も高い30代以降は、子供の弁当作りの際に一緒に作ってもらえるはず)、30代以降は気恥ずかしさがあるのかもしれない。その気恥ずかしさの上でも、お弁当よりは水筒はまだ大丈夫という人が多いのが、「水筒持参」の方が高い値を計上した理由なのだろう。

「タクシー乗らず」「少しでも歩く」は全体で2割強。20代が高めだが、30代以降でもそれなりの値を示している。特に「少しでも歩く」は年齢階層による差があまり無い。差し迫った状況下になければ、少しぐらい時間をかけても交通費を使わずに徒歩で行き来した方が、節約につながるとの考え方なのだろう。例えば電車通勤の人は最寄駅では無く、少々離れた駅まで歩いて利用するなどが想定できる。健康増進の観点でこの選択を行う人も多いはずだ。

全体的には年齢階層別で「飲む回数」「少しでも歩く」を除き、20代が他の層を大きく上回る値が出ているのが目に留まる。20代はさまざまな工夫を凝らしてこづかい面の自衛策を図っている様子がうかがえる。

節約しても足りなかったらどうしよう

出費がかさむ、あるいは支出したいものがある、しかし節約しただけではどうしても足りない。その場合、どのようにしてその資金をねん出するのか。サラリーマン諸氏におけるもっとも多くの人が同意した回答は、「使わずに我慢」だった。大体6割強の人が「こつがいが足りない時は我慢して使わない」と答えている。

↑ サラリーマンにおけるこづかい不足の際のねん出方法(複数回答、一部、年齢階層別)(2018年)
↑ サラリーマンにおけるこづかい不足の際のねん出方法(複数回答、一部、年齢階層別)(2018年)

「使わずに我慢」は数年ほど前の景況感の悪化時には、増加の傾向を示していた。こづかい面では「サラリーマン」ならぬ「ガマ(ン)リーマン」的な状況だったといえる。もっと、減少に転じた昨今でも他の項目と比べれば、群を抜いて高い値を示していることに違いは無い。

次いで多いのは「預貯金取り崩し」「家計からねん出」。不足理由次第だが、一時的な出費、突発事項による不足の場合(例えば友達の結婚式へのお呼ばれ)ならば、それも仕方あるまい。

2013年調査分から項目に加わった「副収入」(ポイントサイト、株式投資、FXやネットオークションなど。2018年分では「アルバイト」は別項目として分離しており、こちらは1.9%)は6.4%。ねん出できる点で、意外に多いものだと感心させられる。これらの手段は必ずしも「収入」が手に入るとは限らないからだ。むしろさらにこづかいが減る可能性も十分にある。

このねん出方法の上位陣、気になる項目につき、経年変化を見たのが次のグラフ(2014年分の「アルバイト」は、「副収入」そのものの回答値とその具体的配分から逆算して値を算出している)。

↑ サラリーマンのこづかい不足の際のねん出方法(複数回答、注目項目)
↑ サラリーマンのこづかい不足の際のねん出方法(複数回答、注目項目)

「預貯金の取り崩し」「家計からねん出」「クレカ利用」のような、他方面から融通する方法は中期的に減少している(直近年では前年比で増加したのは気になるところだが)。一方で「使わずに我慢」は2011年から2012年にかけて大きく上昇した後は大よそ高止まりにある。この上昇が始まった2011年は、こづかい額が大きく減少した2010年の翌年にあたり、こづかい実額の大削減を受けて、サラリーマンにおいて心境の大きな変化が生じたことを示している。具体的には「やりくりしてもどうにかなる額では無いので、あきらめよう」といったところか。

出費上の我慢は浪費を防げるとの考え方もできるが、同時にストレスは溜まる。浪費を奨励するわけでは無いが、6割強が「足りなかったら我慢する」との状況は、健全か否かについて判断に苦しむレベルである。見方を変えればこの値が、2010年当時の50%台にまで低下すれば、サラリーマンのこづかい事情も改善の兆しが見えてくると考えればよいのだろうか。あるいはサラリーマンの心情そのものに大きな変化が生じ、この値は上値のまま半固定されてしまうかもしれないが。

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※サラリーマンのお小遣い調査

直近年分となる2018年分は2018年4月12日から16日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2713人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料では多くを占める会社員は男性1252人・女性791人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が40.0対60.0、女性は59.9対40.1。今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけでは無いことに注意。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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