国の借金1200兆円は誰の借金なのか、それはどのようにして返済されるのか
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国債と借入金、政府短期証券の残高を合計したいわゆる「国の借金」が2020年12月末時点で1212兆4680億円となり、初めて1200兆円を突破した。財務省が10日、発表した。同年8月1日時点の日本人の人口(1億2333万人)を基に単純計算すると、国民1人当たりの借金は約983万円に上る(10日付時事通信)。
この場合の「国の借金」とは何か。これは下記の財務省のサイトをみると詳細がわかる。
「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和2年12月末現在)」
https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/202012.html
この「国の借金」について、これは国の借金であり、国民の借金ではないとの見方がある。また、国は債務だけでなく資産も持っているので、実際の債務はそれほど大きくないとの見方もある。また、国債はその9割程度を国内で保有しているため、問題なく、自国通貨建てでの債務は無制限に増やすことができるとの見方も出ている。
それでは国債とは何か。ここをまず知らないと上記の疑問に答えることはできない。
大昔、国王が国を統治していたとき、国王は簡単に借金を帳消しにするなどしたことで、実際にはかなり高い金利を求められた。これに対して、永久機関である議会が将来得られる税収を担保として債券を発行して、借金をするシステムが国債であった。この制度が英国を中心に整備され、今日に至る。
現在、日本政府が発行する国債は議会での承認が必要となり、これは議会、つまり日本政府という組織の債務が国債(及び借入金等)となる。
ただし、国債には上記の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和2年12月末現在)」をみてもわかるように種類がある。
このなかには財投機関に返済義務がある財投債(残高表の財政投融資特別会計国債)なども含まれている。しかし、主要な国債といえる建設国債と赤字国債、さらにその60年償還ルールで発行される借換債については(残高表のうちの普通国債)、将来の税収が担保として発行されるものとなる。
このため、我々の借金との見方が正しいのかどうかについては、いずれ国民の税金で賄わなければならないという意味では、国民の借金との見方は間違ってはいない。
そして、我々の預貯金や生命保険、年金などが国債に投資しており、我々国民はむしろ債権者との見方もある。さらに日銀が大量に保有しているから問題ないとの見方もある。
前者については債務と債権を帳消しできるとの認識であるのか。そうであれば、いわば借金の取り消し、徳政令ともいえる行為となる。政府の一部機関である日銀が保有する国債は相殺できるとの見方もあるようだが、日銀は政府の一部機関ではないし、日銀がもし帳簿から国債をなくすと、その反対側の債務にある民間銀行が日銀に預けている当座預金だけでなく、我々の使っている紙幣なども価値がなくなる格好となる。
これは当然、現実的ではない。現実的でないといえば、政府資産をすべて売却することもそうであろう。
それではこれだけの政府債務をどう返済するのか。政府に対する信認がある限りは、すべて返済することも現実的ではない。事業会社が銀行から借りたお金をそのまま維持するように、政府もある程度の規模の債務のロールオーバーは可能である。ただし、その規模をあまり拡大すると信認に影響を与えかねない。だから基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を均衡させなければならないとの考え方がある。
巨額の政府債務を削減するにはどうしたら良いのか。穏やかな政策としては財政再建と景気回復、金利の抑制などをミックスさせた財政健全化、やや思い切った手段として半ば強制的に国民から税として吸い上げる手段、さらにデフォルト、そしてインフレによる債務削減等がある。
英国ではナポレオン戦争後の1821年に政府債務のGDP比は288%に達した。これを1914年までかけて29%まで低下させている。このときにはデフォルト等もなく、それほど極端なインフレも起きていない。このときの債務削減の主たる方法は経済成長とされる。金本位制のもとでの均衡財政政策、軍事費の削減とそれにともなう国債発行の減少、長期債への借換えなど各種の国債管理政策による金利負担減少、1875年に導入された減債基金法などが債務削減の背景にあったとされる(日銀金融研究所の金融研究、藤木裕氏の「財政赤字とインフレーション」より一部引用)。
第二次大戦後の英国については、公的債務の利払い費抑制や長期債利回りを超低水準に誘導する国債価格支持政策が導入された。イングランド銀行による短期債の無制限購入も行っていたが、成果はあまり上がらなかったようである。それでも高いインフレ率に対して長期金利が人為的に抑制されていたこともあり(金融抑圧)、政府債務は徐々に削減されていた。名目GDPそのものが拡大したことで、政府債務のGDP比が低下した面も大きかった。
第二次大戦後の日本は、対外債務は実質的なデフォルトとし、対内債務についてはハイパーインフレでかなり目減りしていたが、最終的には預金封鎖と新円切り替えで国民の財産を差し押さえ、財産税により徴収した資金でそれを返済した。戦時中に国民や国内企業に対して約束した補償債務については、戦時補償特別税の課税というかたちで相殺したのである。
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