サラリーマンのゆとり感をおこづかい面からさぐる
若年層はややゆとりあり
心理的な状態の一形態を表す「ゆとり」との言葉は、それに付随する文言により多種多様な意味合いを持つ。物事の考え方、他人とのやりとりにおける精神面、そして金銭勘定の上での余裕のあるなし。今回は新生銀行が毎年定点観測的に調査発表している「サラリーマンのお小遣い調査」(※)の最新版(2017年6月発表)をもとに、「おこづかい」の観点からサラリーマン諸氏のゆとり感を確認する。
今調査によれば男性サラリーマンの2017年における平均月額こづかい額は3万7428円となり、前年比で445円の減少を示している。
それではそのおこづかい額で、サラリーマン諸氏は「生活のゆとり感」をどの程度感じているのだろうか。「大いにゆとりあり」「まあまあゆとりあり」「やや苦しい」「大変苦しい」の4選択肢から一つ選んでもらい、前者二つを「ゆとり派」、後者二つを「苦しい派」として集計した結果が次のグラフ。
おこづかいの額面の上では各年齢階層中一番低くなった30代だが、ゆとりの観点では40代より上。額面上ではそれに続く低い値の20代が、年齢階層別では唯一「ゆとり派」の方が大きいという意外な結果が出ている。額面で一番大きな50代は「ゆとり派」の割合は42.5%と40代に続いて低い値。20代は未婚者が比較的多いことから、子供に関わる金銭的なプレッシャー(子供向けに自分の懐から出費しなければならない事案も想定される)が小さく、余裕感を覚えやすいのかもしれない。
一方で見方を変えれば、どの世代でも押し並べて半数前後は「おこづかいが今の金額では苦しい」との感想を抱いている。上を見渡せばきりがないが、昼食代や遊興費など日々の消費の中で、お財布事情の厳しさを覚え、多分にストレスを感じている人が多数いることになる。
経年変化のゆとり感
サラリーマンのこづかいは額面上は横ばい、あるいは漸減の値動きの中にある。そのこづかい額で生活上のゆとりを感じる人の割合は、大きな変化は見られない。
こづかいの使い道のトップを行く「昼食代」はワンコインランチ時代が続き、雑誌や新聞などもあまり買わなくなり、ニュースなどの情報取得もスマートフォンなどのモバイル端末で済ますようになる。低消費生活に慣れ、少ないおこづかいの中でもやりくりをして、バランス調整をしているのかもしれない。2009年から2010年に大きくゆとり派が増えて以降は、大きな差異が見られない。それどころか直近の2017年ではゆとり派が大きく増加し、2013年を超える値を計上するまでになった。
2012年に発表された、過去30年分のデータを収録した「サラリーマンのお小遣い調査30年白書」で確認すると、中期的には「大変苦しい」「大いにゆとり」が漸減し、「まあまあゆとり」が漸増、「やや苦しい」が横ばいの動きを示している。サラリーマンが購入する物品の価格変動ややりくり、ライフスタイルの変化が、「まあまあゆとり」派を増やし、結果としてゆとり派増加の動きを見せている。そして現在の安定感のある状態にシフトしたのだろう。
とはいえ全体では未だに「苦しい派」が過半数にあることに違いはない。
各年齢階層で均等にゆとりのあるなしが分散しているのなら、双方ですべて25.0%ずつの区分になるはずだが、ゆとり派では30代までで54.9%なのに対し、苦しい派では45.9%しかいない。それだけ中堅層以降に苦しい派が多いことが改めて確認できる。
またゆとり派のうち未婚者は47.7%、苦しい派は40.2%。全体では43.6%であることから、いくぶん未婚者の方がゆとりを感じている人の割合が多いことになる。
中堅層以降、既婚者はおこづかい以外でもストレスの多い属性であるのを考えると、せめて金銭面でもう少し状況の改善を願いたいところではある。
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※2017年サラリーマンのお小遣い調査
今調査は2017年4月7日から9日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2714人。男女正規就業者に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料で多分を占める会社員(正社員以外に契約・派遣社員も含む)は男性1252人・女性789人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が43.6対56.4、女性は64.9対35.1。なお今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけではないことに注意。