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日本に向けられた北朝鮮の「4本の矢(ミサイル)」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
昨年発射に成功した潜水艦弾道ミサイル「北極星」

北朝鮮の外務省は昨日(29日)、日本が軍国化に向けての法的名分のため我々を利用しているとして「これまで日本にある米国の侵略的軍事対象(軍事基地)だけが我々の戦略軍の照準内にあったが、日本が現実を正しく直視せず、米国に追従し、我々に敵対的に出るなら、我々の標的は変わらざるを得ない」と日本を威嚇した。

どういう形であれ、朝鮮半島で戦争が勃発すれば、在日米軍は自動的に参戦する。沖縄から米海兵隊が朝鮮半島に上陸し、横須賀から米空母が出動し、そして三沢など在日米軍基地から戦闘機や爆撃機が発進される。

日米安保条約が適応され、日本は米軍の補給基地、兵站基地、あるいは後方基地と化す。日本から武器、弾薬、燃料など軍需救援物資が運ばれる。日米安保条約の中(第6条)に日本の安全と、極東における国際平和と安全を維持するため米軍が日本の施設と区域を使用することが許されているからだ。

自衛隊が直接戦闘に加わらない後方支援であったとしても、北朝鮮は「準軍事行動」とみなすのは必至だ。

朝鮮半島有事の際にはF-22ステルス戦闘機やF-15戦闘機、E-3早期警報機などが数時間内に出動できる沖縄の嘉手納基地、F-35Bステルス垂直離着陸戦闘機が配備されている山口の岩国基地、4万トン級の大型上陸艦など上陸に不可欠な艦艇が配備され、数百万トンの戦時用弾薬も備蓄されている長崎の佐世保海軍基地、原子力空母など第7艦隊の母港である横須賀海軍基地のほか、Xバンドレーダのある車力に近い青森の三沢空軍基地や横田空軍基地などが攻撃のターゲットとされている。というのも、北朝鮮は昨年2月23日の最高司令部の重大声明で朝鮮半島有事の際の第二次攻撃対象に「アジア太平洋地域の基地」、即ちグアムと在日米軍基地も含まれていることを公言しているからだ。

朝鮮半島有事が現実となれば、湾岸戦争で米軍に協力したことでイラクからミサイルを撃ち込まれたサウジアラビアの二の舞になるのは避けられない。北朝鮮が核爆弾の軽量化、小型化に成功し、ミサイルに搭載可能ならば、朝鮮半島有事が現実となった場合、日本の安全保障にとって死活的な脅威となる。実際に北朝鮮には日本への攻撃可能なミサイルを4種類保有している。その4種類は以下のとおりである。

(参考資料:知られざる北朝鮮ミサイルの威力

「ノドン」(火星7号)

全長15.5m、搭載重量700kg、射程距離1千~1千3百kmの1段式中距離弾道ミサイル。

昨年(2016年)は3月18日平安南道(粛川)から発射され、朝鮮半島を横断し、約800km飛行し、日本の防空識別区域(JADIZ)内に落下。続けて、7月19日にも黄海北道(黄州)から高角で発射され、150km以上上昇し、発射地点から600kmの日本海に着弾。北朝鮮は「目標上空の、設定された高度でミサイルに搭載された核弾頭の起爆装置の爆破動作を調べた」として、核起爆実験を行った可能性を示唆していた。

そして8月3日には黄海南道・殷栗から発射され、1000km飛行し、日本の排他的経済水域に落下。9月にも黄州から3発が発射され、およそ1000キロ飛んで、日本の排他的経済水域の中に落下している。昨年だけで4回、計9発も発射されている。

「スカッドER」

今年(2017年)3月6日に平安北道(東倉里)から4発発射され、そのうち3発が100km飛行し、排他的経済水域に落下。残り一発の落下水域は石川県能登半島から北北西約二百キロの日本の海上と推定された。北朝鮮は「在日米軍基地を狙った演習だ」と公然と宣言している。

潜水艦弾道ミサイル「北極星1」(KN-11)

昨年(2016年)8月24日に燃料と角度を調整(高度)して発射された固形式2段ミサイルである。最長の500キロを飛び、発射地点の咸鏡北道(新浦)から日本の防空識別圏内(80km内進入)に落下。6回目の実験で成功している。

固形燃料を一杯にして、正常に発射していれば2000km以上は飛行。金正恩委員長は「SLBMが生産に入り、近いうちに実践配備されれば、敵対勢力の背後でいつでも破裂するかもしれない時限弾を仕掛けるのに等しい」と語っていた。実戦配備され、領海に侵入し、不意に発射されれば、対応のしようがない。偵察衛星やレーダーでは事前に兆候をキャッチできない。海上哨戒機や水中ソーナー探知機を持ってしても東西南北の4海を全てカバーすることは容易ではない。

準中距離弾道ミサイル「北極星2型」(KN15)

潜水艦弾道ミサイルである「北極星」を地上発射型に変えたミサイルである。2017年2月12日、平安北道(亀城)から発射され、高度550km、飛距離500km飛行。さらに、3か月後の5月21日平安南道(安州)から再度発射され、高度560km、飛距離500km。通常飛行すれば、2500~3000km飛行可能。沖縄が射程内に入る。

(参考資料:どこからでも発射可能! 北朝鮮ミサイル発射場の全貌

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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