ネットの成長が良くわかる経産省の広告費動向
起伏を経て拡大する広告市場、伸びる新興勢力のインターネット
先日「2013年の広告業界を経産省発表の売上動向から振り返ってみる」でも解説した通り、2013年は経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」における広告業の売上動向の上で、月次ベースで見た限りでは「新聞」と「インターネット」の広告費が逆転したことが確定出来た、メディアのすう勢を推し量る上で重要な年だった。それでは中長期的には両者を含め、主要メディアはどのような勢いを示し、変化が生じているのだろうか。今回は、この主要メディア間のパワーバランスの中期的な動向を、「広告費」という観点から見ていくことにする。
「特定サービス産業動態統計調査」の時系列データを年次ベースで取得し、主要メディア、具体的には従来型4マスの「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」、そして「インターネット」、それ以外の一般広告などを全部合わせて「プロモーションメディア広告など」とし、全部で6区分化。それぞれの広告費をグラフ化したのが次の図。4マスとインターネットについては、折れ線グラフも併記した。なお2005年までは「プロモーションメディア広告など」の項目に「インターネット広告」が含まれている(2006年から分離された)。
広告費は景気と高い連動性・正の比例的関係がある。ここ数年ではリーマンショックの影響を大きく受け、2009年において前年から格段と落ち込んだものの、2010年以降は順調に持ち直し動きを見せている。
そして各メディアの事情、例えばテレビ広告費は2000年前後がピークで、それ以降は減少の一途をたどり、さらにリーマンショックで大きな影響を受けたこと、それ以降は少しずつ額面を戻してはいるが、金融危機以前の水準までにはまだ届いていないことなどが把握できる。
また一般広告全体(プロモーションメディア広告など)もリーマンショックの影響を大きく受けたが、それ以外は比較的堅調に推移していたことなどが分かる。さらに月次ベースでは2013年で確定した「新聞とインターネットの逆転現象」は、実は年次ベースではすでに2012年の時点で確定しているのも確認できる。
「新聞」や「雑誌」、「ラジオ」広告費はこの10年で約半減。「広告費」と「利用率・媒体力」はそのまま直結するわけではないものの(景気動向、技術の変化、ライバル媒体とのパワーバランスも影響する)、激動する時代の変化を感じさせる。
シェアの変化で分かる各メディアのパワーバランス
次に各メディアの広告費の動向を、各年の広告費全体におけるシェアの変化で表したのが次のグラフ。
公開データで「インターネット広告」が独自算出された2006年から、従来型4マスと「インターネット」の合計シェアはほぼ同じ比率を示し、「インターネット」が他の4マスを浸食しているようすがはっきりと分かる。記録の限りでは、「インターネット」は項目として登場して以来、毎年シェアを確実に増加させ続けている。
また2010年ではシェア増加の動きすらみられた「テレビ」(0.4%ポイントの上昇)も2011年以降はシェアを落とし続けている。額面は微増しているものの、広告費全体の伸びには追い付かないための結果である。一方「プロモーションメディア広告など」が大きな伸びを示しているが、これは東日本大地震・震災の影響、例えば強制的節電に伴い、電力消費での配慮があまり要らない従来型広告への再注目の影響によるところが大きい。
繰り返しになるが今件は広告費の推移で、部数・視聴者数、その業界全体の売上とはまた別のもの(例えば新聞なら広告費以外に新聞そのものの購読料も売り上げに入る)。しかしそれぞれの「媒体力」を示す一つの重要な指針との認識で間違いない。「媒体力」の無いメディアに巨額の広告費を投入するほど、クライアントは酔狂では無い。
上記グラフで黒枠を用いて囲った各メディアは今世紀に入るに至り、胸を張って第三者に誇れるようなものとは言い難い、色々と大人げない、過去の実績・権威すら汚すような挙動が相次いでいる。とりわけ震災以後、頭に疑問符を浮かべてしまう質、内容、姿勢を見せるそれらのメディアの挙動を目のあたりにした人も少なくあるまい。そのような動きの原因の一つとして、今件データが示す実情を受けての「焦り」があるとする解釈は、決して的外れなものでは無かろう。
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