新日銀ネットが稼働する意味
経済の取引には常にお金の受払いや、証券などの受渡しなどが絡んでくる。これは「決済」と呼ばれ、決済の際に受け払いされる現金や預金などは「決済手段」と呼ばれる。日銀はこの決済システムでも大きな役割を担っている。
決済手段には、通常、現金や金融機関の預金などが使われる。このため日銀にある金融機関の当座預金口座が決済手段として利用されている。日銀は国債取引に伴う受渡しを帳簿上の口座振替などによって処理するといったように国債の決済業務も行っている。
金融機関同士が行う資金取引の決済や国債など証券取引の代金の決済や、民間決済システムの最終的な決済に日銀の当座預金での振替が利用されている。日銀が金融機関との間で行っているオペレーションや貸出し、国庫金の受払い、国債の発行・償還に伴う資金の受払いなどについても、日銀の当座預金を介して決済が行われている。
日銀はこうした資金や国債の決済が安全かつ効率的に行われるようにするために、コンピュータ・ネットワークシステムを構築している。これが「日銀ネット」とも呼ばれる「日本銀行金融ネットワークシステム」である。
日銀の本支店と参加金融機関は、日銀電算センターと通信回線で接続されており、全銀システム(全国銀行データ通信システム)や、手形交換制度、外国為替円決済制度などで決済処理された最終的な決済を行っている。証券決済システムとして国債の決済などもこれを通じて行っている。国債の入札なども日銀ネットの端末が使われている。
日銀ネットは、日銀と金融機関との間の資金決済をオンラインで処理するネットワークシステムで、日本の金融取引における重要なライフラインとなっている。このため、大阪に電算センターのバックアップ機能を備えるなどかなり高度なセキュリティ対策も講じられている。
日銀は1988年に稼働した日銀ネットの老朽化に伴い新日銀ネットの構築に向けて、対応を進めていた。最新の情報処理技術の採用や変化に対する高い柔軟性、高いアクセス利便性を基本コンセプトとして、新日銀ネットを構築したのである。新日銀ネットは第一段階として金融調節(オペ)と国債の入札関連業務および国債系オペ等の受渡関連業務が2014年1月から稼働しており、第1段階対象業務以外の業務は2015年10月13日から稼働したのである。
現行の日銀ネットは当座預金取引を対象にしたシステム(当預系)と、国債の決済を対象にしたシステム(国債系)があり、稼働時間は当預系が午前9時から午後7時、国債系が午前9時から午後4時半となっている。13日からは当預系、国債系ともに午前8時半から午後7時までに稼働時間が拡大される。さらに、来年2月には午後9時まで延長される見通しとなっている。これにより日本企業の海外進出に伴う国際的な資金決済や、邦銀の日本国債を担保とした外貨調達などの利便性向上に加え、海外投資家による日本国債保有を通じた円の国際化も促したいそうである(ロイターの記事より一部引用)。