生徒・学生の平均通学時間は1日往復53分…通学時間の実情(2021年公開版)
大人が就職先に毎日通勤するのと同様に、子供は学校に毎日登校し就学する。小中学時代は義務教育のためにおおよそ居住地域近辺の公的学校への通学となるが、高校では義務教育課程からは外れるため、自宅から距離のある学校へ通う人も出てくる。今回はNHK放送文化研究所が2021年5月に発表した2020年国民生活時間調査(※)の報告書を基に、学生の通学時間について検証していく。
今件における時間表記は「時間:分」となる。例えば3時間45分なら「3:45」。学生時分は「学校が自宅の隣にあれば遅刻もしなくて済む。より長く寝ていられる」との妄想を抱いた人も少なくあるまい。しかし現実にはそのような夢の環境で生活している人はごく少数で、大抵は少なからぬ通学時間をかけて学校へ通学することになる。今調査では直近年における生徒・学生全体(小学生から大学生まで)の平均通学時間は往復53分。片道26分強をかけての通学との計算になる。なお大学生は高校生までのように平日の通学が事実上義務化されているわけではないので、値をグラフに反映させていない。
2015年まではいくつかのイレギュラーが見られるが、おおよそ通学時間は伸びているように見える。それだけ遠くの学校に通うようになっていたのか、交通機関が複雑化しているのか。
他方2020年ではどの学校種類でも通学時間は大きな減少を示している。特に生徒・学生全体の減少度合いが著しいが、これはグラフでは反映されていない大学生の値が大きく縮んだからに他ならない。2020年で大幅な通学時間の短縮が生じたのは、自宅から学校までの距離が縮んだ、交通機関が整備されたなどではなく、新型コロナウイルス流行により長距離通学者を中心に休学や在宅学習となったからではないかと思われる(今件値は行為者の平均時間で、通学をしなかった人はゼロとして計算されるわけではない)。
直近分について回答者の属性別に見ると、いくつかの特徴が確認できる。
小中学生と比べて高校生の通学時間が長いのは、公立小中学校の場合は学区単位での通学となり、自宅近辺での就学が原則となるからに他ならない。高校ではそのような取り決めが無いため、遠場の学校への就学率も高くなり、当然通学時間も伸びる。電車で通学する高校生も多いだろう。
また都市規模別では東京圏より大阪圏の方が通学時間が長い。大阪圏の方が(主に高校における)就学先学校に強いこだわりを持っているのだろうか。他方、一般都市区分では5万人未満の市町村で長めの傾向が出ている。新型コロナウイルス流行という特殊事情をかんがみれば、地方の場合は学校が休校なり在宅学習とはならなかった割合が多いのかもしれない。
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※2020年国民生活時間調査
住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。
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