中国の国境警備艇、北朝鮮船に銃撃…被弾して帰還
長期間の厳しいゼロコロナ政策に不満を持った中国国民がデモを繰り広げたことに衝撃を受けたのか、中国政府はゼロコロナ政策の事実上の撤回に追いやられた。それにより、以前と比べて行動が自由になった。
そのことを知り、チャンスと見た北朝鮮の人々は、コロナ前のように密輸に乗り出している。
中国のデイリーNK情報筋によると、先月ごろから北朝鮮と中国の国境沿岸で、密輸を行う船舶が急増した。ただ、北朝鮮の民間人だけで密輸を行うのは難しいので、国境警備隊や保衛部(秘密警察)と組んで行っている。中には、国境警備隊や保衛部が単独で密輸を行うケースもあるとのことだ。
扱う品物は、比較的安い薬草から、高く売れる銅、密輸はおろか、所有がばれるだけでも処刑されかねない金(ゴールド)まで様々だ。
密輸を行う民間人が、国境警備隊に支払うワイロは2000元(約3万8000円)から3000元(約5万7000円)。中国以上のゼロコロナ政策を取っている北朝鮮は、無断で国境を出入りする者には銃撃せよとの指示を下し、一時はその犠牲になる人が後をたたなかったが、状況が変われば国境警備隊も態度を一変。かつてのように密輸に積極的に加担するようになったようだ。
(参考記事:北朝鮮国民が目を背ける「見せしめ射殺体」の衝撃の現場)
だが、彼らの前に中国が立ちはだかった。
先月末、遼寧省丹東の沿岸に接近していた北朝鮮船に向けて、中国の警備艇が銃撃を浴びせかけたのだ。船には5〜6人が乗っていたが、うち1人は銃弾が胸に当たり倒れてしまった。それがゴム弾だったのは不幸中の幸い。怪我は負ったものの、命に別条はないとのことだ。
警告放送を受け、北朝鮮船は慌てて逃げ帰った。デイリーNKの北朝鮮内部情報筋を通じて確認した結果、船は北朝鮮の国境警備艇で、平安北道(ピョンアンブクト)の鉄山(チョルサン)を出港、密輸品を積んで中国の南方に向かっていたことがわかった。
事件は上部の知るところとなった。乗船していた全員が職を解かれ、船長は下戦士(二等兵)に降格処分を受けた上で、軍事裁判を受けている。北朝鮮は制限付きながら貿易を再開したものの、人の出入りは依然として厳しく禁じていることから、船長は重罰を避けられないものと思われる。