美濃加茂市長と上告審弁護団が記者会見
浄水装置の設置をめぐって、業者から30万円の賄賂を受け取ったとして受託収賄罪で起訴され、一審で無罪となったものの、控訴審で逆転有罪となり上告中の藤井浩人・美濃加茂市長が7日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護団と共に記者会見に臨み、最高裁での上告審に向けての思いを語った。
元高裁裁判長らの参加で弁護団強化
藤井市長は、「不当判決と闘いながら市長職を続けることに市民の信任をいただきたい」として、昨年暮れに辞職。先月29日に行われた市長選で再選されたばかり。
また、上告審弁護団には郷原信郎主任弁護人ら従来の弁護人に加え、東京高裁裁判長として多くの逆転無罪判決を出した原田國男弁護士、いわゆるロス疑惑や強制起訴された小沢一郎衆院議員の裁判などいくつもの無罪を勝ち取った刑事弁護の経験豊富な喜田村洋一弁護士ら新たに3人の弁護士が加わった。
イメージカラーの緑色のネクタイ姿の藤井市長は、
「裁判を背負いながら市長職を続けることに、市民からもしっかり信頼を得ることができた。この弁護団と、誤った判決を覆すために戦っていけるのを心強く思う。市民にも手続きはお伝えしながら、公務は公務、裁判とは切り離して、しっかり市長職に邁進していきたい」
と述べた。
「裁判の根本に関わる手続きの誤りがある」と
一審の名古屋地裁は、現金授受の直接的な客観証拠がなく、現金を渡したというとされる業者の証言には疑念が残るとして、無罪とした。これに対し名古屋高裁は、本件贈賄と金融機関からの融資詐欺で有罪が確定している業者を再度呼んで証人尋問したが、この業者の証言の信用性に関わる証人や藤井市長には一切話を聞くことなく、一審での業者証言の信用性を認め、逆転有罪とした。
これについて喜田村弁護士は
「刑事裁判の基本は直接主義。高裁は、裁判官が自分で見たもの聞いたものではなく、(一審証言が書かれた)紙を元に、一審の判断をひっくり返した。刑事裁判の根本に関わる手続きの誤りがある」
と指摘。
また、原田弁護士は
「僕は(東京高裁裁判長時代に)、逆転に至らない場合でも、(事実に)争いがある時には、必ず被告人質問をやった。本人に話を聞くのがまず基本。(名古屋高裁の裁判官が)それをやらなかったのは理解できない」
と述べた。さらに、「控訴審が第1審判決に事実誤認があるというためには、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを具体的に示すことが必要」とした、平成24年の最高裁判例(「チョコレート缶事件」)にも、名古屋高裁は反しているとの見方を示し、
「最高裁は、自ら下級審に課した考えが徹底されていないことについて、(本件に対する判断を通して)ねじを巻いてもらいたい」
と語った。
上告審は最高裁第3小法廷に係属。上告趣意書の提出期限は3月18日までとされたが、新たに加わった弁護人がいることから、期限の延期を申請する、とのこと。控訴審判決の破棄、一審無罪に対する検察側控訴の棄却を求めていく、としている。