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奇跡は起こせるか 男子バレー五輪予選

柄谷雅紀スポーツ記者
オーストラリアに勝たなければ、何も起こらない。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

勝たなければ何も起きない

バレーボール男子のリオデジャネイロ五輪世界最終予選兼アジア予選で、日本はイランに負けて3連敗となった。1勝3敗で8チーム中7位に沈む。五輪出場権獲得は極めて厳しい状況に追い込まれた。しかし、まだ0%ではない。イランに敗戦後、すぐに日本はミーティングを行った。南部正司監督は「リオへの切符の可能性は低くなったが、最後の最後まで戦い抜いて、可能性が引っ張り出して、自分たちの手に来るようにしよう」と呼びかけたという。「選手たちが諦めたらそこで終わり。苦しい展開だけど、とにかく前を向いてやるしかない」と米山裕太も言っていた。可能性はゼロではない。だが、勝たなければ何も起こらない。

しつこい攻撃で突破口を

オーストラリアは極めて高いチームだ。1日のフランス戦でのリベロを除く先発の平均身長は203.5センチ。日本はこの高いブロックに注意しなければならない。今大会で日本は被ブロックが多い。ベネズエラ戦こそ8本だったが、中国戦では14本、ポーランド戦では11本、イラン戦では16本の被ブロックを喫した。イラン戦では途中出場の米山が、相手のブロックがそろっているときには軟攻でかわしたり、ブロックにわざと当ててリバウンドを取ったりしている場面があった。石川祐希、清水邦広も、中国戦、ポーランド戦よりは工夫しているように見えた。ただ、それでもブロックに捕まった。南部監督は「被ブロックを抑えられれば展開は違ったと思う。トスが短いときに勝負にいってブロックされた」と振り返っていた。清水は「最初はストレートにブロックに跳んで、クロスを抑えられたりと戦略にはまった。もう少し冷静になれていたら被ブロックは抑えられていたんじゃないか」と言っていた。ぎりぎりまでブロックを見極め、攻め急がず、しつこい攻撃の繰り返しで突破口を開いてほしい。

オポジットをどう封じるか

オーストラリアには212センチのエドガーと207センチのキャロルという2人のオポジットがいる。昨年のワールドカップ(W杯)ではエドガーがメインに使われていたが、今大会前に腹筋を痛めたこともあり、キャロルとの併用が続いている。しかし、エドガーの決定力は健在で、キャロルもフランス戦で46本中31本決めて67.39%の決定率を残すなど絶好調だ。このオポジットをどう封じるかが鍵になるだろう。

昨年のW杯では、日本が3-1で勝っている。このときはブロックとディグ(スパイクレシーブ)の関係が完璧だった。ブロックで打てるコースを限定し、抜けてくるコースには確実にレシーバーが入って強打を拾って切り返し、石川や清水が得点を重ねた。それはエドガーに「素晴らしい守備だった」と言わしめるほどだった。この再現をできれば、日本の勝利は近づくはずだ。

弱いローテを乗り切れるか

日本は今大会で、石川が後衛のセンターでレセプション(サーブレシーブ)するローテーションで苦しんでいる。石川がサーブレシーブで狙われて高い決定率を誇るバックアタックを封じられ、攻撃の選択肢が少なくなって他のアタッカーへのマークが厳しくなるからだ。ここをいかに乗り切れるかもポイントになる。ベンチワークも含め、総力で乗り切ってほしい。とにかくオーストラリアに勝たないと奇跡は起きない。日本の土俵際の粘りを見たい。

スポーツ記者

1985年生まれ、大阪府箕面市出身。中学から始めたバレーボールにのめり込み、大学までバレー一筋。筑波大バレー部でプレーした。2008年に大手新聞社に入社し、新潟、横浜、東京社会部で事件、事故、裁判を担当。新潟時代の2009年、高校野球担当として夏の甲子園で準優勝した日本文理を密着取材した。2013年に大手通信社へ。プロ野球やJリーグの取材を経て、2018年平昌五輪、2019年ジャカルタ・アジア大会、2021年東京五輪、2022年北京五輪を現地で取材。バレーボールの取材は2015年W杯から本格的に開始。冬はスキーを取材する。スポーツのおもしろさをわかりやすく伝えたいと奮闘中。

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