採用面接でよく聞かれる「会社選びの軸」とは一体何なのか。そしてどんな話をすれば納得してくれるのか
■会社選びの「軸」って何?
多くの面接担当者が「あなたの就職活動や会社選びの『軸』は何ですか?」という質問をします。ところが、なにげなく聞くこの質問が、多くの就活生を苦しめているようです。
学生向けの就職相談会をすると、必ずといっていいほど「今の自分には軸がないので、どうやって作ったらよいのでしょうか?」という悩みが出てきます。
軸とは「自分の中にある、動かない、中心的な価値観や判断基準」を指します。これが「ない」と感じる人のために、今回は軸の探し方について書いてみます。
■「理屈」で考えようとすると落とし穴にハマる
採用担当者は、なぜ「軸」を聞くのでしょうか。それは、採用候補の学生が持っている軸が自社に適合しているかどうかを把握することで、入社後に頑張ってくれる可能性を推測しようとするためです。
「軸」が合っていなければ、ミスマッチになってしまうので、お互いに不幸にならないためにも確認する必要があるのです。
20年以上も生きてきた中で、培われた「好き嫌い」はあるでしょう。意識していないのもしれませんが、「軸」はきっとあるのです。
そうは言っても、採用面接においては、自分の中にある軸を取り出して、言葉にして説明しなければなりません。あるのはわかっていても、言葉にするのは難しい。
そこで、多くの人は努力して「演繹的」に考えようとします。世の中はこういう状態であるから、こういうことが必要で、だからこういう軸で会社や仕事を選ぶ「べき」だと、理屈で考えようとするのです。
ところが、このやり方には落とし穴があります。理屈で軸を考えると、社会的に正しいと思われそうなもの、多くの人が一見いいと思えるものは作れるのですが、それが本当にその人の「自分の中」にあるものなのか分からなくなるからです。
■聞きたいのは正しさではなく「根っこの生えた軸」
いくら一般論を話しても、面接担当者には響きません。いくら立派な軸を語られても、その人の中に根付いている軸でなければ意味がありません。
きちんとした面接担当者は、軸が何かを聞いたら、すかさず「その軸はなぜ生まれたのか?」を聞きます。そしてそれが、取ってつけた浅いものなのか、根っこの生えたものなのかを判定します。
いくら掘っても一般論しか出てこない場合は「浅い」と判断しがちです。面接担当者が納得する根っこの生えた「本当の自分の軸」を見つけるには、理屈ではなく自分の直感、「心の声」を聞く必要があります。
とは言っても、別にスピリチュアルな話ではありません。例えば、就活ナビなどに出ている会社をランダムに並べて、「この会社はなんとなく好き」「こちらは嫌」などと、理由などなくてよいので、どんどん分けていきましょう。
そして、好きな会社や仕事からさらに「より好き」なものを選び出し、ある程度(例えば10数社)ぐらいになったら、ここからようやく理性を使って、「自分が選びだしたこの会社群に共通する要素は何なのだろう?」と考えるのです。
そこで出てきた共通する要素が、自分の軸=「判断基準」です。
■「根っこ」が見つからなければやり直す
会社を選ぶ作業は自分にしかできませんが、そこから「共通する要素」を導くときには、他人の手を借りることができます。自分でわからない場合は、誰かを頼ってもよいでしょう。
すると「大手で安定」だとか、「知名度が高くて社会的影響力がある」だとか、「仕事を通じて成長ができそう」などの軸が出てくるわけです。
次に、その軸がどこから出てきたのかを考えなくてはなりませんが、それを理屈で正当化するのではなく、自分のライフヒストリーを振り返って、軸を作ったきっかけや環境や出来事がなかったかを探せばよいのです。
いくら探しても、過去の人生の中で軸が生じた理由を見つけられなければ、それは最近になって、就職活動内の情報に流されて作られた軸かもしれません。
つまり、面接担当者が求めている「根っこの生えた軸」ではない。そうなったら、もう一度、最初の会社群の選別からやり直してみてください。
なるべく偏らないように、五十音順とか、日経などの何かのランキングなどでやってください。そうして、過去に理由のある軸が出てきたら、ようやく面接担当者がわかりやすい、いいねと思いやすい軸となるのです。
手間のかかる作業ではありますが、就職活動という人生の節目に自分を振り返ってみるという意味でもよいのではないかと思います。よろしければ試してみてください。
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