薄型テレビの出荷減はようやく終焉か
2011年7月24日のテレビ放送におけるアナログ波の停波・地デジ化に伴い、家庭用テレビの地デジ化が一挙に推し進められることになった。何しろチューナーを接続しない限り大抵のテレビ環境では放送を視聴できなくなるのだから、テレビ好きには一大事件・買い替えが急務だったのには違いない。テレビが欠かせない世帯にとっては、それこそ同じ家電に例えれば「冷蔵庫が使えなくなります」レベルの大問題。
内閣府の消費動向調査によるとカラーテレビの買い替え年数は約8-9年程度。直近の2013年でも7.9年との値が出ている。
「買ってから10年近く経つので良い機会だから買い替えよう」とする人もいれば、「買ってからまだ5年だが受信できなくなるのは困るし割引セールも行われているので、良い機会だから地デジ対応型のに買い替えよう」と、通常の買い替えペースを前倒し(=需要の先取り)して地デジ化に合わせる形で買い替えた人も少なくない。当然その分、先取りされた需要の反動は、地デジ導入以降に来ることになる。
実際、薄型テレビの国内出荷実績は地デジ化前が特需的な状態(特に区切りのよい年末や年度末、そしてアナログ波停止直前に買いこまれている)、停波後は一貫して低迷状態が続いている。次のグラフは出荷台数実績だが、その状況が良くわかる(以降のグラフは電子情報技術産業協会(JEITA)が同協会公式サイト内で毎月発表しているデータを基にしている)。
停波後から薄型テレビの出荷は大幅減。2011年12月にはやや伸びたが、これは停波後における最後の駆け込み需要に過ぎない(被災三県は2012年3月末までアナログ波が用いられていたので、その部分もある)。以降は季節変動もほとんど無く、低迷どころか減退する一方の状況にあった。季節が一巡する1年を経過しても回復する兆しは無く、特需による需要の先取りは、1年分をはるかに超えた量でなされたことが分かる。
一方前年同月比を算出すると、昨今の状況変化がよりよく把握できる。
テレビの型で多少の差異があるものの、全般的には停波から1年が経過した2012年7月までは出荷台数の下落は強まる傾向を示しており、それ以降は減少幅が縮まる動きに転じている。需要の先取りによる反動が続いていることには違いないが、その反動の加速化は1年でピークを迎え、それ以降は少しずつ緩やかになっている様子が分かる。もっとも出荷数が減っていることに違いは無いが。
そして先月発表の2013年7月分では小型テレビが、今月発表の8月分では中型・大型テレビが、ようやく前年同月比でプラスを示すこととなった(8月では小型は再びマイナスに転じてしまっているが)。これはようやく出荷台数の減少に歯止めがかかったことを意味する。
とはいえ出荷台数が低迷していることに違いは無い。上記の「出荷実績」を見れば分かる通り、各サイズのテレビも20万台内外での低迷が続いており、地デジ化以前の面影は無い。また、地デジ化の反動に伴う出荷減の傾向が終わったとして、その後、薄型テレビの販売動向が増加に転じ、その動きを継続するかどうかは分からない。世帯数は増加しているものの世帯構成人数は減少し、若年層のテレビ離れは続いている。良くて横ばい、つまりは現状の低迷状態を維持、さらには再びマイナス圏で低空飛行、という動きも十分ありえる。
薄型テレビの出荷数において、下落傾向が終焉を迎えたらしい動きを示したこと自体は喜ばしい話だが、五里霧中な状況には変わりが無い。地デジ化の影に隠れてしまい把握が難しいが、この数年の間に薄型テレビそのものの純粋な需要がどのように変化をしていたのか、それが今後の動きでつかみ取れよう。
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