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アメリカ合衆国の国民は同盟国との関係で「妥協すべき」「自国の益を優先すべき」どちらを望んでいるのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 同盟関係の維持は自国にも益をもたらす。妥協は必要か、それとも。(ペイレスイメージズ/アフロ)

アメリカ合衆国は巨大な経済力と軍事力を持ち、多くの国と同盟関係を結んでいる。その同盟関係の中では一方的に同国の利益を主張し同盟国に押し付けるのではなく、時として自国に益をもたらさない内容でも妥協する必要が生じる場合がある。個々の案件の益を優先するのか、良好な同盟関係の維持による総合的な益を見極めるのか。アメリカ合衆国の国民自身はどのような考えなのだろうか。同国の民間調査会社Pew Research Centerが2019年4月に発表した、アメリカ合衆国における他国情勢への関与の是非やNATO(北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organization)へ加盟していることの意義に関する調査報告書「Large Majorities in Both Parties Say NATO Is Good for the U.S.」(※)を基に、その実情を確認する。

次に示すのはNATOに限らずさまざまな同盟関係にある他国との間において、その同盟国との関係でいかなる態度を示すべきか、二者択一で選択してもらった結果。自国の個々の益を優先するか、(同盟関係維持のため)妥協してでも同盟国の利益を考慮すべきなのか。この類の話は得てしてケースバイケースだが、傾向としてどちら側を向くべきかとの意見を求めていると解釈すればいいだろう。

↑ アメリカ合衆国における同盟国との関係について(アメリカ合衆国)
↑ アメリカ合衆国における同盟国との関係について(アメリカ合衆国)

調査の期間内においては一様に、同盟関係維持のために妥協は必要だとする意見が多数派となっている。2016年4月に両者の値の差が縮まる動きを示しているが、その後は2017年6月に大きく差が開く形となり、最近になってまた縮まる動き。もっとも妥協は必要との意見が半数割れを示したことは無い。

これを支持政党別に見たのが次のグラフ。

↑ アメリカ合衆国は同盟国と妥協してでも、同盟国の利益を考慮すべき(アメリカ合衆国、支持政党別)
↑ アメリカ合衆国は同盟国と妥協してでも、同盟国の利益を考慮すべき(アメリカ合衆国、支持政党別)

他国との同盟関係の維持のため、アメリカ合衆国は妥協してでも同盟国の利益を考慮すべきであるとの考えは、民主党支持者の間では多数派。他方、共和党支持者の間では少数派となっている。元々両者の間には一定の格差があったものの、トランプ氏が大統領に就任した2017年1月以降は差が大きく開いた感はある。民主党支持者はさらに妥協すべしとの声が増え、民主党支持者は減っている。トランプ大統領の政策に合わせた動きなのだろうか。

直近の2019年3月分の調査結果を属性別に区分したのが次のグラフ。

↑ アメリカ合衆国における同盟国との関係について(アメリカ合衆国、属性別)(2019年3月)
↑ アメリカ合衆国における同盟国との関係について(アメリカ合衆国、属性別)(2019年3月)

同盟国との関係維持のためには妥協も必要との考えは若年層、高学歴に多い。人種による違いで学歴別の動きが影響するとの考えから白人限定の簡易な学歴別の値もあるが、その値でも高学歴の方が妥協が必要派の値が多数となっている。高齢者、低学歴の人ほど、短絡的な自己利益を優先すべきとの認識なのかもしれない。

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※Large Majorities in Both Parties Say NATO Is Good for the U.S.

2019年3月20日から25日にかけてアメリカ合衆国内に住む18歳以上の男女の中からRDD方式によって選ばれた人に対し、電話による対話回答形式によって行われたもので、有効回答数は1503人。固定電話は300人、携帯電話は1203人。国勢調査の結果に基づいたウェイトバックが実施されている。過去の調査も同様の様式で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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