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2017衆院選「貧困対策」公約比較

大西連認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長
(写真:アフロ)

2017衆院選「貧困対策」公約比較

2017衆院選が始まりました。

日本国内の貧困や格差の問題、生活困窮者支援に携わる観点から、「貧困対策」について各党の公約比較をしようと思います。

投票行動の参考にしていただければ幸いです。

ちなみに、僕が理事長をつとめる認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいでは下記のリリースを出しました。

こちらもご参照いただければ。

【緊急声明】貧困対策を最優先課題にしてください

なお、「貧困対策」というと政策目標として個別に掲げている党はほとんどなくて、暮らしの安全とか、そういうテーマで書かれていることが多いです。

また、教育や子育て、雇用や社会保障などさまざまな分野にまたがるテーマでもあります。

ですので、ここでは、僕の独断と偏見で「子どもの貧困関係や高等教育の無償化関連」「最低賃金関連」「年金等の給付系の社会保障関連」「生活困窮者支援関連」でピックアップしました。

また、それ以外にも特筆する政策があった場合はそれについても言及しています。

それぞれ、各党の公約についてのリンクも貼ってありますので、気になる点はご自身の目でご確認いただければと思います。

それでは、各党の比較に行きましょう!

■自由民主党

自民党の公約はこちら

幼児教育の無償化や介護人材の確保などを通じてわが国の社会保障制度を全世代型社会保障へ大きく転換するとともに、所得の低い家庭の子供に限った高等教育無償化やリカレント教育の充実など人への投資を拡充し、「人づくり革命」を力強く推進します。

意欲と能力のある子供たちが経済的理由により専修学校や大学への進学を諦めることのないよう、授業料の減免措置の拡充や給付型奨学金の支給額を大幅に増やすことで、真に支援が必要な所得の低い家庭の子供に限って高等教育の無償化を実現します。併せて徹底的な大学改革に取り組みます。

「教育は国家の基本」との考えのもと、安定財源を確保し、「幼児教育振興法」の制定と幼児教育の無償化、低所得世帯の児童生徒への支援強化、学生などへの給付型や無利子奨学金・授業料減免の拡充を行うとともに、「卒業後拠出金方式」を検討し、教育の機会均等を実現します。

働き方改革を推進することで、長時間労働を是正するとともに、賃金などの待遇について、雇用形態ではなく、職務内容によって公正に評価される仕組みを導入します。

長時間労働の是正や「同一労働同一賃金」の実現など多様なライフスタイルを実現する働き方改革を推進するとともに、最低賃金1,000円を目指します。各産業や地域の中小企業の実情を踏まえたきめ細かい支援を行います。

女性・若者・高齢者、障害や病気のある方やその家族など誰もが意欲と能力に応じて就労や社会参加できるよう、ガイドラインの制定など実効性のある政策手段を講じてテレワークや副業・兼業などの柔軟で多様な働き方を進めるとともに、就労支援、生活支援、居場所作りを進めます。

経済成長や企業の収益に見合った実質賃金の上昇、最低賃金の引上げを図り、この流れを中小企業・小規模事業者や非正規雇用へも広げ、消費の拡大に結び付けます。

確立された基礎年金2分の1国庫負担の下で、働き方の多様化や就業期間の伸長を踏まえて厚生年金の適用拡大や就労と年金受給の選択の多様化等を進め、長寿社会においても若い世代や低所得の方々にも安心できる年金制度を構築します。

生活保護世帯の子供の進学支援の強化など生活困窮者の自立に向けた支援や子供の貧困対策を強化します。

まずは、自民党。

今回の選挙では総理が「教育の無償化」を積極的に発信しているように教育分野にかなり大きなウエイトを割いています。

「真に支援が必要な所得の低い家庭の子供に限って」などの対象を限定した形ではあるのがマイナスですが(「真に支援が必要」の定義はどのように決められるのか)、教育の機会均等を目指す姿勢は評価したいと思います。

とはいえ、自民党は政権交代して以降、与党として日本の政策のかじ取りをしてきました。

これまでここで書いてきたことが「できてこなかった」ことの反省はもっと必要です。

たとえば、これは僕個人としても昨年来よりもプッシュしてきた生活保護世帯の子どもの進学支援についてはもっと踏み込んだ書き方をしたもらいたかったところ。

先日、生活保護家庭の子どもの大学進学ダメ問題は解決に向かうのか 審議会の議論がダメなので整理します(大西連) - Y!ニュースという記事を書きましたが、同じ生活保護世帯の子どもの進学支援でも抜本的な変化である「世帯内就学」を認めるのか、現状のマイナーチェンジである支援にとどめるのかでは大きな違いがあります。

もちろん、ゼロからイチになるのはいいじゃないかという視点もあると思いますが、そのあたりの違いついては、与党を担ってきた責任として辛口に見る必要があるでしょう。

■公明党

公明党の公約はこちら

進学を断念することがないよう、給付型奨学金を2018年度の本格実施以降も、その給付額・対象枠を拡充し、希望すれば誰もが大学等へ進学できる社会を構築します。

希望するすべての学生等への無利子奨学金の貸与をめざし、「有利子から無利子へ」の流れを加速するとともに、2017年度から導入された新たな所得連動返還型奨学金制度の既卒者への適用を推進します。

家庭の経済状況が厳しい小学生・中学生への支援を強化するため、就学援助の対象に学習支援費などの新たな項目を追加します。また、給食費未納の実態調査の結果を踏まえて、学校給食の在り方について検討し、必要な対策を行います。

同一労働同一賃金を実現し、正社員の6割程度である非正規労働者の時間当たり賃金を、欧州並みに引き上げることをめざします。その際、正社員の処遇を引き下げて対応しないよう取り組みます。具体的には、雇用形態に関わらず「合理的な理由」のない不利益取り扱いを禁止する法整備を行います。

非正規労働者の能力開発機会の充実などにより、処遇改善や正社員転換を図るとともに、全国加重平均1000円をめざして最低賃金を年率3%を目途として着実に引き上げ、所得向上に取り組みます。

低年金者への福祉的な措置として、最大月額5000円(年6万円)を支給する「年金生活者支援給付金」の前倒し実施をめざします。同給付金の実施状況等を踏まえ、さらなる拡充を検討するとともに、障害基礎年金の加算など所得保障の充実に取り組みます。

社会保険における格差を是正するため、被用者年金のさらなる適用拡大を図ります。

生活困窮者一人ひとりに寄り添う自立支援を実現するため、居住支援や子どもの学習支援など生活困窮者支援のさらなる充実を図るとともに、生活保護世帯の子どもの大学等への進学を含めた自立支援を推進します。

「改正住宅セーフティネット法」に基づき、高齢者、障がい者、若者・子育て世帯、低所得者などの住宅確保要配慮者が安心して空き家や既存の民間賃貸住宅、UR等公的賃貸住宅に円滑に入居できるようにするため、全ての市区町村において「居住支援協議会」の設置を促進するとともに、登録住宅への改修補助、入居者への経済的支援等の居住支援を一層強化します。合わせて「居住支援法人」の指定を促進するとともに、その活動支援を強化します。

ひとり親家庭の自立を支援するため、親の就労支援や生活支援及び税制上の支援などを拡充します。

女性の貧困や失業、離婚後の母子家庭の問題、児童虐待等が社会問題化する中、現行の婦人保護事業を抜本的に見直し、支援を必要としている女性のセーフティネットを再構築します。

次は公明党。

ここでは詳細は書きませんが、SDGsや難民支援、夫婦別姓にもふれるなど横断的にきめ細かい丁寧な政策を考えているイメージがあります。

実際に、ひとり親家庭の支援や、就学援助の対象拡大、女性の貧困への視点など、他党にはあまりない福祉の党を自称するだけのラインナップです。

また、年金の適用範囲の拡大など、セーフティネットのほころびをうめようとする意欲も感じます。

最低賃金の上昇を年率3%と具体的な数値を掲げていたり、住宅政策もきちんと押さえているなど、要点がわかっているな、と。

ただ、個人的には所得連動返還型奨学金制度などは(いわゆる「オーストラリア方式」なのだと思いますが)、あまり賛同できなくて、大学授業料が値上がりしている以上、所得に応じて返さなくてもいいではなく、そもそも返さなくてもいい、にしていく必要があるとも思います。

また、政権与党であった以上、これまで実現できなかったことの是非については問われてしかるべきとも思います。

■希望の党

希望の党の公約はこちら

幼児保育・教育の無償化、大学における給付型奨学金の大幅拡充により、格差の連鎖を断ち切る。

若者が正社員で働くことを支援し、家計における教育費と住宅費の負担を下げ、医療介護費の不安を解消する(総合合算制度)。

同一価値労働同一賃金など、女性が働きやすい社会を創る。

中小企業は雇用を通じて地域社会に大きな貢献をしている。正社員雇用を増やした中小企業の社会保険料負担を免除する「正社員化促進法」を制定し、正社員で働ける社会を目指す。

家計における二大負担である住宅費と教育費負担を引下げ、実質的な可処分所得増、個人消費増を目指す。役所の持つ空き家関連情報の抜本的流通拡大等による中古住宅市場の活性化、リバースモーゲージの拡大、生前贈与の促進などにより高齢富裕層から若者への所得移転を促す。

ベーシックインカム導入により低所得層の可処分所得を増やす

次に希望の党。

新設された政党なので、自公に比べると政策集が薄いのは仕方がないにしても、いろいろ気になる点が多いのも事実。

たとえば、同一価値労働同一賃金は女性が働きやすい社会にも寄与するとは思うが、非正規労働の待遇改善の話であって女性が働きやすい社会のための施策ではないよな、とか。女性が働きやすい、を目指すなら男女の賃金格差や子育て支援施策が前面に出るべきでは?など。

またほかにも、リバースモーゲージはどちらかというと低所得高齢者へのアプローチで、高齢富裕層から若者への所得移転効果はなくない?とか、突っ込みたくなります。

一番は、「ベーシックインカム」で、これ自体悪くないアイデアではあると思いつつも唐突な印象があるというか、どのくらいの財源規模で、既存の年金や医療、介護などの社会保障施策とどのように共存するのか(もしくは代替させるつもりなのか)などによって、是非は大きく変わってきます。

このあたり、なかなか作りこむ時間がなかったのかもしれませんが、少し雑ではないかと率直に思います。

ここにはピックアップしませんでしたが電子投票とかは面白いアイデアかなと思いましたが。

■立憲民主党

立憲民主党の公約はこちら

児童手当・高校等授業料無償化ともに所得制限の廃止、大学授業料の減免、奨学金の拡充

子どもに引き継がれてしまう貧困の連鎖を断つための教育生活支援、 虐待をなくすために児童相談所や児童養護施設、民間団体との協働を強化

長時間労働の規制、最低賃金の引き上げ、同一価値労働同一賃金の実現

正社員の雇用を増やす企業への支援、赤字中小企業・小規模零細事業者に対する社会保険料負担の減免

保育士・幼稚園教諭、介護職員等の待遇改善・給与引き上げ、診療報酬・介護報酬の引き上げ、医療・介護の自己負担の軽減

所得税・相続税、金融課税をはじめ、再分配機能の強化

中間支援組織やNPO団体などを支援する「新しい公共」の推進

立憲民主党も新設された党ということで、まだまだ政策としてはボリュームも含めてもっと作りこんでいってもらいたいです。

とはいえ、例えば、児童手当や高校授業料無償化の所得制限の廃止など、「all for all」的な要素を残しているのは評価したいところ。

大学授業料の減免についてふれている数少ない党であることも注記しておきます。

それから、「新しい公共の推進」というのが、急場でできた政策のなかでも入っていることには少なからず驚きました。

枝野代表は演説などで「ボトムアップ」という言葉を再三連呼していますが、市民参加という意味での「新しい公共」というのは、これからの社会課題解決にあたっては必須のものとも思うので大きな特徴だと思います。

■日本維新の会

日本維新の会の公約はこちら

経済格差で教育を受ける機会を奪われないことと、教育の全課程の無償化を憲法上の原則として定め、国に関連法の立法と恒久的な予算措置を義務付ける。大学等に行けなかった大人の再チャレンジも可能にする。

教育予算の対GDP比を他の先進国並みに引き上げる。

消費税の軽減税率や一律の給付金ではなく、「給付付き税額控除」を実現。必要な人に必要な額の生活支援を行う。

「同一労働同一賃金法」を制定し、労働移動を阻害する年功序列型の職能給から、 同一労働同一賃金を前提とする職務給へ転換する。

高齢者雇用の創出を図った上で年金の支給開始年齢を段階的に引き上げる。

ワーキングプア、無年金の高齢者、一定の所得に達していない低賃金労働者等に、勤労インセンティブを与えるため、勤労税額控除制度を導入する。

さて、日本維新の会です。

日本維新の会は、教育の無償化について、自民、公明よりも先んじて標榜していました。それは評価するべきでしょう。

教育予算の対GDP比に触れている点も同様です。

また、自民、公明の「軽減税率」ではなく「給付付き税額控除」を掲げているところも特徴です。

「給付付き税額控除」はかつて民進党も提案していたもので個人的にも軽減税率よりも賛同できる考え方です。

とはいえ、たとえば、年金の支給開始年齢の引き上げなど、低所得者には厳しい施策が並びます。

また、低賃金労働者は「勤労していないから低賃金」ではないですよね。勤労インセンティブを与えるため勤労税額控除制度を導入とか、なめていると思います。

それから、公約の書き方として大阪での取り組みを例示してそれを全国でも、という形式をとっています。そこで書かれていた下記の部分は批判します。

【維新改革】大阪市による生活保護の抜本的見直し

○自立支援の強化と審査の適正化の取組により平成24年度に初めて前年を下回る。

○国に対し生活保護法の改正を働き掛け平成25年12月に実現し、福祉事務所の調査権限の強化や返還金と保護費の相殺など多くが盛り込まれた。

上記の問題点は、生活保護法改正法案を成立させてはいけない理由(大西連) - Y!ニュースに書きましたが、生活保護利用者の家族に扶養を求めることを強化したりと、ここで日本維新の会が自慢げに記載している内容は、低所得者や生活保護利用者を圧迫する内容のものです。これは特記したいと思います。

■共産党

共産党の公約はこちら

高等教育の無償化をめざし、当面10年間かけて国公私立の学費を半額にします。給付制奨学金の抜本拡充と、貸与制奨学金の無利子化に取り組みます。

雇用保険の拡充、失業者への生活援助、再就職支援をおこないます。

同一労働同一賃金、均等待遇を、労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、労働者派遣法に明記するなど、非正規への不当な差別・格差をなくします。

最低賃金を時給1000円に引き上げ、さらに1500円をめざします。社会保険料減免や賃金助成など、中小企業の賃上げに本格的な支援を行います。最低賃金の地域間格差を是正し、全国一律最低賃金制に踏み出します。

最低保障年金制度をめざします。

生活保護の改悪をやめさせ、国民の命と人権をまもる制度として改善・強化します。

共産党の公約は膨大な量に及びます。コピペして文字数カウントしたら2万字近くになりました。

これだけの各分野にわたるテキストを要している党は他にはありません。この点については見事としか言うことはありません。

個別に見ていくと、最低保障年金制度や生活保護の改悪をやめさせる、などの政策を掲げているのは共産党と社民党のみであり、この分野では大きな特徴があります。

また、最低賃金を1500円にする、ということも同様です。地味なのですが、雇用保険の拡充や失業者の支援を列記しているのは他党にはなくて、網羅的であることの強みがここで発揮されます。

あまりネガティブなことはないのですが、あえて言うマイナスは2万字におよぶ政策集を読む人がいるのか、といったところでしょうか。

■社民党

社民党の公約はこちら

子どもの貧困と児童虐待を防止するための切れ目のない支援体制をつくります。

ひとり親家庭の就労環境の改善、児童扶養手当などの充実、仕事と子育ての両立支援策の拡充、非婚のひとり親に対する寡婦(夫)控除の適用拡大などに取り組みます。

子どもの相談・救済機関となるチャイルドラインの拡大、「子どもオンブズマン」の実現に取り組みます。子どもの居場所づくり、学習支援、「子ども食堂」など地域の多様な支援を促進します。

公的教育予算を国際標準のGDP5%水準に引き上げます。私学への助成を拡充します。小学校30人以下学級の早期完全達成と教職員定数の拡大を着実に実現します。義務教育における完全給食の実施を目指すとともに、学校給食の無償化を推進します。

高校授業料は私立高校も含め直ちに無償化します。外国人学校等にも差別なく適用します。

高等教育(大学、大学院等)の学費は、将来的に無償化を目指し、段階的に引き下げます。奨学金は無利子を原則とし、給付型奨学金の対象・水準を拡大します。返還中の方の負担軽減・免除策を導入します。

「賃上げ目標」を設定し、月例賃金アップに政策を総動員します。最低賃金を全国一律、時給1000円に引き上げ、さらに、生活できる賃金を確保するために時給1500円を求めていきます。あわせて中小企業への支援を一体的に行います。

ILOが示す同一価値労働・同一賃金原則に沿って、非正規社員に均等待遇を徹底します。非正規から正社員への転換を促進します。「官製ワーキングプア」とよばれる非正規公務員の待遇を改善します。

「社会保障と税の一体改革」をやりなおします。国民本位の社会保障改革に取り組むとともに、社会保障の空洞化の大きな要因である雇用の劣化や格差・貧困の拡大に歯止めをかけ、国民合意にもとづいて負担のあり方を見直します。

社会保障費の自然増の「3年で1.5兆円」への抑制を許しません。

「年金カット法」(2016年)の見直しを求めます。基礎年金をマクロ経済スライドの対象外とします。将来的に、「最低保障年金」制度をつくり、低年金・無年金を防止します。

生存権を保障する生活保護制度の縮小を許しません。行政の対応を点検、改善するとともに、ケースワーカーの育成、増員、資質の向上に取り組みます。

「住宅基本法」を制定し、「居住の権利」を保障する観点から、住宅政策を抜本的に見直します。公営住宅の供給拡大、空き家等の活用、家賃補助の充実、公的保証制度等の総合的な「住宅支援制度」を創設し、すべての人に安定した住まいを保障します。

子どもや若者への支援を行うNPO法人等への寄付控除額の拡充や、資産寄付に対する相続税の控除を実現します。

続いて社民党。実は、結構独自の観点の施策が並びます。

たとえば、非婚のひとり親に対する寡婦(夫)控除の適用拡大や子ども関係の各施策、社会保障費自然増への抑制に反対、など。

また、生活保護関連分野でのケースワーカーの育成、増員、資質の向上などにふれているのは、現場のニーズをわかっているなという感じ

実は、住宅支援制度についても他党がふれるはるかに以前から主張してきた論点でもあり、政策的な一環性もあります。

子どもや若者への支援を行うNPO法人等への寄付控除額の拡充や、資産寄付に対する相続税の控除という点に関しては、子どもや若者への支援という分野に限定せず、分野をとわずにでいいと思います。

少数野党の強みとして他党があまり主張しない地道な政策、派手さはないが困っている人に届く政策を訴えていくというのは好感のもてるアプローチだと思います。

■日本のこころ

日本のこころの政策集はこちら

我が党は、家族を基底においた温かな社会を創り、国民ひとりひとりが夢を持ち、充実した日々を過ごせる国の実現を目指す。

・貧困対策の充実

・一人親世帯への支援策の充実

我が党は、医療制度、公的年金制度、介護制度等の改革を行い、生涯にわたり安心して暮らせる社会保障制度を構築することを目指す。

・同一労働同一賃金の徹底や組合組織化等により非正規雇用労働者の待遇を大幅に改善、より付加価値の高い産業に労働力が円滑に移動できる流動性の高い労働市場を形成する。

・生活保護制度を見直し、給付付き税額控除制度の導入による最低所得保障と一体化を図る。また、生活保護者への医療制度の改革を推進する。

最後に、日本のこころ。「貧困対策の充実」という項目があることに驚いたのですが、何をやるのかは書いていません。

もうちょっと公約を作ってください

■まとめ

各党の政策比較、いかがだったでしょうか。

各党に共通しているのは「子どもの貧困対策」「教育の無償化や支援」「同一価値労働同一賃金」「最低賃金アップ」などでしょう。

実は、これらの施策が公約のラインナップに並ぶのは最近のことです。このことには正直、驚いています。

これらの政策がすべての政党で掲げられている意味は大きいと思います。

これは逆説的に言うと、貧困の連鎖の問題や、低賃金で働く人の問題は、思想や政治的スタンスをこえた日本の喫緊の課題であると認識されてきた、ということでもあります。

むしろ、これらの課題をどうやって解決するのか。その方法、対象の取り方、予算の配分、優先順位や政策実現のスケジュール、そういったことが大きな違いや論点になってくるのかもしれません。

私たちの一票はたかが一票かもしれませんが、一票で政治が変わることもあります。投票行動の参考にしていただければ幸いです。

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わっています。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言しています。主著に『すぐそばにある貧困」』(2015年ポプラ社)。

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