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「いざ転職」その時。採用担当者が着目する履歴書の“意外”な7項目

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
こんなもので、どうやって差別化すればよいというのか(写真:アフロ)

■履歴書は就職・転職では必須だが

中途採用でも新卒採用でもどこかの段階で必ず提出するものが履歴書です。

最近では「手書き必須」とする場合は少なくなり、データでも提出できる場合がほとんどです。合格後に提出する場合は、公的な書類として履歴を証明することが目的です。もしそこに虚偽があれば解雇にもつながる可能性があるものですので、正確さが大切です。

しかし、選考の最初や途中で出す履歴書は、当然ながら評価の対象となるものであり、「正確さ以上のもの」が必要になります。

さて、そんな履歴書ですが、採用担当者はどんなところを見ているのかを、解説します。

1. 最初に「いつ書いたか」をみる

すぐ目に入るのはその履歴書がいつ書かれたものかです。直近の日付であればふつうに「最新版だな」と思うだけですが、まれに数カ月前の日付が入っているものもあります。

もちろん情報に改定がなければ内容自体は問題ないのですが、そこで仮説として思うのは「ああ、この人はもしかすると数カ月間も転職活動を続けているのかな」ということです。長い転職とは、なかなか受からないということを想像させ、あまりポジティブな印象とは言えません。

事実はどうあれ、そう思うのは人事の性です(それぐらい思わないと逆にやっていけません)。痛くない腹を探られないようにご注意ください。

2. 写真で、真面目さをみる

写真はごくふつうのものでよいと思います。ポイントは、真正面を向いているか(斜めになっている写真がたまにあります)、サイズは履歴書の写真欄と合っているか(大きすぎず、小さすぎず)、顔だけでなく胸から上が映っているか、服装は私服でなくスーツか(スーツでないのがふつうの仕事の場合は除く)、ネクタイや襟が曲がっていないか、無表情すぎないか(歯を見せない笑顔がよい)くらいのことです。

しかし、真面目さや誠実さは、仕事のパフォーマンスと一定相関していることがわかっており、採用担当者としてはネガティブチェック項目としてみている場合が多い部分です。

3. 「住んでいるところ」から人となりを想像する

出身地など人の能力とは関係のないことから差別的な採用を行うことは禁じられていますし、実際、出身地で差別する人事など今ではほとんどいないでしょう。

しかし、そういう意味でなく、住所や帰省先が書いてあれば、ふつうに「どんなところに住んできたか、住んでいるのか」から「人となり」を探ろうとはするでしょう。

地方から都会になぜ出てきたのかとか、戻ったのかとか、通勤時間が長いのはどうしてかとか、どうして今住んでいるところから遠く離れた自社を受けたのか、など。自分の「人となり」を表す情報でなければ詳しく記す必要はありませんが、知ってもらいたければ書いておくとちゃんとみる部分です。

4. 学歴はできるだけ書いて欲しいと考えている

学歴欄は、最終学歴だけでも問題ないのですが、人事の世界でよく言われる格言で「高校を見ろ」というものがあります。人のアイデンティティは思春期に確立されるため、高校や中学を知れば校風などいろいろな情報がわかるということです。

実際、長く採用をしている人事担当者は、全国の学校のことをよく知っています。また、同じ大学でも系列校出身なのか、地方公立校出身なのかによって、人物仮説が変わります。

もちろんどちらがいいとかはありませんが、面接での質問内容や、応募者の発言の解釈には影響を与えます。自分をよく知ってもらうためにはできるだけさかのぼって学歴は書いた方がよいでしょう。もちろんどちらがいいとかはありませんが、面接での質問内容や、応募者の発言の解釈には影響を与えます。自分をよく知ってもらうためにはできるだけさかのぼって学歴は書いた方がよいでしょう。

5. 言葉遣いから知的レベルを推定する

文章からは知的レベルが推定できる、と多くの採用担当者は考えています(本当にできるかどうかは別として)。

難しい漢字でもきちんと使っているか、一方で文末が「御座います」のように無駄な漢字を使っていないか、一文がやたら長くないか、用語が統一されているか、専門家であれば間違わないような言葉を間違えていないか(人事であれば「適正検査」、経理であれば「原価償却」など)。

文章の巧拙が知的レベルに直結しているわけではありませんが、例えばそのようなことから応募者の知的レベルを測ろうとします。

6. 固有名詞からコンプライアンスレベルをみる

これは履歴書よりも職務経歴書の方でのチェックポイントかもしれません。

過去の履歴において、文面でお客様の会社名など出して成果のアピールなどをしていると、ネガティブな評価となるかもしれません。

それは守秘義務というビジネスパーソンとして基本的なことができているかどうかが怪しまれるからです。守秘義務が守れない人は、他のコンプライアンス的な面での問題がある人かもしれないと思われてしまう可能性があります。自分が在籍した社名などは当然問題ありませんが、そこでの成果を語る際には、守秘義務に抵触していないか注意しましょう。

7. 中身よりも「形」の方を見ている

そもそも、日本ではなぜ履歴書と職務経歴書があるのでしょうか。詳しさの差だけで、同じようなことを書いているになぜ統合されないのでしょうか。

歴史的経緯はさておき、今でも統合されずにいるのは、それなりの価値を採用側が感じているからでしょう。

それが本稿で述べてきたような「形」を見たいからではないかと思います。

人はコミュニケーションを取る時、基本的にはその中身に注意します。しかし注意していることはコントロールできることなので、本当のことがなかなかわかりません。偽れるということです。

逆に意識していない部分に真実が現れる。それが履歴書・職務経歴書の中の「形」に関するところなのです。だから採用担当者は今も履歴書を応募者に提出してもらっているのではないでしょうか。

BUSINESS INSIDERより転載・改訂

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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