滋賀県で死亡例 マダニの感染症、日本紅斑熱とは
滋賀県で日本紅斑熱による死亡例
先日、「マダニにかまれ男性死亡」というショッキングなニュースが報道されました。
滋賀県に住む50代男性が、日本紅斑熱という感染症で亡くなったというものです。今年は他にも広島県や静岡県で日本紅斑熱による死亡例が相次いでおり、警戒が必要です。
日本紅斑熱とは、マダニが媒介する感染症で西日本を中心に発生しています。
今回、滋賀県で初めて日本紅斑熱の症例が報告されましたが、隣の三重県は日本紅斑熱が最も多い地域の一つであり、日本紅斑熱を媒介すると考えられているフタトゲチマダニやキチマダニは全国的に分布していますので、程度の違いはあれどどの地域でも日本紅斑熱に罹患する可能性はあると考えておいた方が良いでしょう。
またマダニの活動性の高い夏から秋にかけて感染例が増えることが知られており、特に10月は日本紅斑熱の報告が多い月です。
日本紅斑熱の症状は?
日本紅斑熱はマダニ刺咬後2〜8日後に発熱、頭痛、関節痛、皮疹などの症状が出現します。図のような痂皮と呼ばれるマダニが刺した後の壊死所見が見られることがあります。
マダニに刺された、あるいは野外活動の数日後にこのような症状がみられたらすぐに病院を受診しましょう。医師には野外活動の日、場所についてお伝えください。抗菌薬が有効ですので、日本紅斑熱が疑われれば治療として抗菌薬が処方され典型的には数日で解熱します。ただし、診断が遅れるとときに命にかかわる感染症ですので、症状が出たら早く病院を受診することが大事です。
マダニに刺されないために
マダニによる感染症として国内では他にもSFTS(重症熱性血小板減少症候群)、ライム病、Borrelia miyamotoi感染症、ヒト顆粒球アナプラズマ症、ダニ媒介性脳炎、バベシア症などの報告があります。またダニの仲間であるツツガムシによるツツガムシ病は北海道を除く日本全国で報告があります。
これらのマダニによる感染症を防ぐ最も大事なことは、当たり前ですがマダニに刺されないことです。
行楽シーズンに登山をされる方もいらっしゃると思いますが、ハイキング、農作業など、山や草むらで活動する際にはマダニに刺されない服装をすることが重要です。
また露出した部分には虫よけ剤を使用しましょう。DEETまたはイカリジンという成分を含む虫よけ剤がマダニに有効です。
野外活動後にはマダニに刺されていないかお風呂に入ったときなどに体の隅々まで確認しましょう。
もしマダニに刺されたら
もしマダニに刺されたからといってすぐに慌てる必要はありません。マダニが日本紅斑熱の病原体であるRickettsia japonicaを保有している頻度は多くの都道府県で1%未満です。つまり、マダニに刺されても日本紅斑熱にならない人の方が圧倒的に多いのです。ですのでマダニに刺されただけで抗菌薬を飲む必要はありません。
ただし、マダニは自分で引っこ抜こうとするとクチバシが残ってしまうことが多いので、病院を受診してキレイに取ってもらうようにしましょう。クチバシが残ってしまうと、私のように肉芽ができてしまいます(涙)。
そして、もし熱や皮疹が出たらすぐに病院を受診してマダニに刺されたことを伝えましょう。
マダニによる感染症、日本紅斑熱は闇雲に恐れる必要はありません。正しい知識を持って正しく恐れましょう。