「アフターコロナ」接近。いよいよテレワークをどうするか決める必要が。フィードバックへの好悪が分かれ目
■アフターコロナで「どこまで戻すか」が議論に
感染力の強いオミクロン株によって再びコロナが広がっていますが、世界の情勢を見ているとピークアウトは早そうな予想もあります。いずれにせよ、徐々にコロナが落ち着いてきている可能性があり、多くの会社ではいよいよ「アフターコロナ」(もしくは「ウィズコロナ」かもしれませんが)の働き方について明確な意思決定をするための議論が起きています。
要は、来期4月からはテレワークをどうしようかという話です。
■肯定派と否定派の間でどう合意形成するのか
この際に考えなくてはならないのは、テレワーク肯定派とテレワーク否定派の間の合意形成をどうするかということです。
コロナ禍によってテレワーク化が進む中、奇妙な現象がおこっています。それは同じようにテレワークをしていても、孤独感などのストレスを強く感じ、早く以前のような働き方に戻りたいと「鬱々とする人」と、逆にとても精神的に健康な日々を送れるようになった「いきいきする人」に分かれるということです。
私の実感値では割合としては半々ぐらいでしょうか。そのためアフターコロナで、どこまで「コロナ以前の働き方」に戻すか、なかなか合意形成が難しいのです。
■テレワーク否定派の言い分
まず、テレワーク否定派の言い分を聞いてみましょう。
彼らがテレワークを嫌がる理由は、仕事上の指示が曖昧になるとか、相談できる相手がいなくなるとか、プロセスを評価されなくなるとか、どうやら「コミュニケーション量の減少」によるものが多いようです。
より具体的に言えば、以前よりも仕事を通して注目されないため、「承認欲求」が満たされにくいということでしょうか。コミュニケーションが減り、自分がやったことにフィードバックを受けられないことが相当ストレスにつながっているようです。
■テレワーク肯定派の言い分
一方、テレワークを肯定している人は、「自己充足」しているケースが多いです。
心の内にある価値観や判断基準、興味関心などによって自分の仕事を自分で評価して生きているので、別に誰にどう思われようがあまり気にしていない。「自己満足できる人」とも言えるかもしれません。
その人の中の「内なる基準」が会社にもメリットをもたらすようなものであれば、自己満足できる人は決してネガティブな人材ではありません。
なぜ後者の人たちはリアルな職場を離れることで前者の人たちよりも満足感を高めることができたのでしょうか。テレワークに移ってから「以前よりも働きやすくなった」という人たちに尋ねると、「上司や先輩から口出しされる機会が減ったから」と言います。
■いろいろうるさく言われたくない
この点で私は彼らに共感することがあります。私が新卒で入ったリクルートは「フィードバックの文化」と呼ばれるほど、「お前ってこうだよね」と、他者にどんどん言及する職場でした。私はメンタルの弱い人間でしたので、実を言うと、人の心に土足でズカズカと入り込む文化が最初は嫌でした。
自分の中に信念があっても、上の人からフィードバックを受けると、ブレてしまい悩みます。そして、そこまで言うならと上司や先輩のフィードバック通りにやって失敗し、やっぱり自分の思う通りにやればよかったと後悔することも多くありました。
もちろん素晴らしいアドバイスもありましたが、多くのフィードバックは私にとってはむしろ障害だったのかもしれません。
■「フィードバック文化」はテレワークでこそ重要
決してフィードバックすることや、それを受け入れることを否定しているわけではありません。むしろ、人間はフィードバックを受けなければ成長できない生き物です。
しかし中には、フィードバックよりも、他者の観察や自己反省を通じて成長するタイプの人材がいることも事実です。そうした人材は、信頼関係が十分でないような他者からのストレートなフィードバックを本気で受け止め、傷ついたり、それが足かせになったりしてしまう可能性もあります。つまり、フィードバックが「ノイズ」となってしまうわけです。テレワークだとノイズが減るため、前述のテレワーク肯定派のようなタイプはいきいきとするのではないでしょうか。
もしテレワーク導入後、いきいきとする社員が増えたのなら、無理に以前のような働き方に戻さないほうが会社にとってもメリットが大きいのかもしれません。
このように自社の社員がどのようなタイプであるかをきちんと見極めた上で、アフターコロナでどこまで元に戻すのかを考えるべきでしょう。