何故、日銀が利上げをしても緩和的なのか
7月31日の日銀金融政策決定会合の公表文では、「政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている」とあった。
実質金利とは名目金利から物価上昇率等を差し引いた金利となる。物価上昇率等というのは、一般的には「予想物価上昇率」を使うようだが、予想物価上昇率を的確に算出する方法はないため(物価連動債から算出するのは無理がある)、ここは実際の物価上昇率を使う。
現在の政策金利は0.25%、直近発表された消費者物価指数(除く生鮮)は7月分で前年同月比2.7%の上昇となっている。実質金利は大幅なマイナスとなっている。
また公表文には「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」とあった。
利上げを行っているのに金融緩和の状態にあるというのはおかしいのではないかとの見方もあるかもしれないが、ここには「中立金利」というものが意識されている。
自然利子率に予想物価上昇率を加えたものを「中立金利」と呼んでいる。
自然利子率とは経済や物価に対して引き締め的でも緩和的でもない実質金利のことを指す。これは過去の研究などから、マイナス1%からプラス0.5%あたりかとされているが、具体的な数値は出しにくくかなり幅を持って見る必要がある。
仮にマイナス1%としてみれば、日銀の物価目標は2%となっており、単純に自然利子率に適正とされる物価上昇率を加えると、下限はプラス1%という数値が出てくる。上限は2.5%ということになる。
中央銀行が政策金利を引き上げたとしても、その水準が「中立金利」を下回っている限り金融緩和的と言うことができる。そのため日銀は「緩和的」とか「金融緩和の度合いを調整」といった表現を使っていると思われる。