原油先物価格は調整局面入りか
7月5日にサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の厳しい対立を受けて、8月以降の減産縮小見通しがいったん消えたことで、5日の原油価格は上昇した。WTIの先物価格は一時、76ドル台前半と2年9か月ぶりの高値をつけていた。
どうやらここが原油先物の直近の高値となった。それ以降、原油先物は調整局面入りし、20日のニューヨーク原油先物相場では、WTI先物が2019年以来で最長となる7営業日続落となり、9月限は1.37ドル安の62.32ドルとなっていた。
7月15日にOPECプラスの生産方針をめぐりサウジとUAEの協議が妥結した。OPECプラスが原油供給を段階的に増やすことで合意したことなどから16日のWTI先物8月限は5.39ドル安の66.42ドルと大きく下落。その後は、新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)の感染拡大による世界経済への影響も懸念材料となった。
アジアを中心としたコロナのデルタ型の感染急拡大で、中国などが行動規制を強めるとの観測が浮上した。20日はオーストラリア政府やニュージーランド政府が外出制限の延長を決め、日本政府も緊急事態宣言の対象地域を広げた。アジアなどで経済活動が停滞し、原油需要が伸び悩むとみた先物売りが続いた(21日付日経新聞)。
WTI先物のチャートをみると、77ドル近辺が前回の高値となっていた。もしここを抜けて80ドルあたりに上昇すると、次の目処は100ドルあたりとなっていた。結局、WTI先物は77ドルを抜けることはなかった。
昨年4月にWTI先物は一時マイナスとなるなど異常な事態が発生したが、その後は戻り基調となって77ドル近くまで上昇した。中国や米国などの景気回復による原油需要の回復などが意識された。しかし、それもここにきて頭打ちとなりつつある。
8月22日にWTI先物は一時62ドルを割り込み、2019年以来で最長となる7営業日続落となっていた。しかし、その後は回復し、23日には3.50ドル高の65.64ドルと急回復したが、特に材料らしきものはなくショートカバー主体の動きとみられる。これでトレンドが変わったとも思いづらい。
原油先物価格が調整局面入りとなれば、当然ながら物価への影響も出てくる。日本はさておき、欧米では物価の上昇が続いていた。昨年同月からの反動という面も強いが、原油価格の上昇も下支えとなっていたとみられる。このため原油価格が調整局面となれば、物価の上昇圧力も緩和されると思われる。