宇宙飛行士の山崎直子氏、ロケット打ち上げ会場で宇宙を語る「人が想像したことはいつかは実現できる」
2017年7月29日と30日に、堀江貴文氏が創業した「インターステラテクノロジズ社」が開発した宇宙ロケットMOMOの打ち上げが北海道で行われた。その模様はライブ配信プラットフォーム SHOWROOMでもリアルタイムに配信され、合計8万人以上が視聴していた。前回は堀江氏らがロケット打ち上げ直後の思いを語っていたことについて触れた。
30日は朝4時半から配信を開始。早朝にも関わらず、スペシャルゲストとして日本人宇宙飛行士の山崎直子氏が登場。AKB48 チーム8の大西桃香、NGT48の荻野由佳、中井りかの3人が番組を進行しながら、宇宙での経験や苦労話について質問が飛び交った。またSHOWROOM配信は視聴者とのインタラクティブなコミュニケーションができることから、視聴者からの質問にも山崎氏は丁寧に答えていた。
日本人宇宙飛行士の山崎直子氏が語る宇宙での経験「今度は、月から地球を眺めてみたい」
まずはMOMOの見どころについて「日本はこれまでもたくさんのロケットを打ち上げて来た。でも国の事業体でなく、民間の有志が集まって作ったロケット打ち上げはMOMOが初めて。とても楽しみ」と語った。その後、番組進行を務める3人から、宇宙での生活や思いについて、興味深い内容の質問が相次いだ。
-- 無重力ってどんな感じなんですか?(荻野)
山崎氏「無重力は楽しい。遊園地のフリーホールみたいな感じだが、落ちてる怖さはないから体がフワーってなっている感じで楽しい」
-- 宇宙に行って、初めて発した言葉は?(大西)
山崎氏「ロケットに乗っていくと、ロケットは音よりも速い。打ちあがってから8分30秒で宇宙に到着する。エンジンが止まって落ち着くと無重力状態。その時に宇宙に来たなと思って『うわぁ』という気持ちになります。窓から地球が見えた時、地球が真上に光っていた。不思議な感じ。地球は生きている、地球そのものが生き物だと感じた」
-- 宇宙食で一番好きなのは?(中井)
山崎氏「定番だが、カレーライス。カレーのルウとご飯を別々に食べる。お皿には乗せられない」
-- 水はどうやって飲むの?(荻野)
山崎氏「ペットボトルやコップでなく、アルミのパッケージに入っている水をストローで飲む。宇宙は無重力だから、体内の血液が上に行ってしまうため、顔がむくむ。脚はすっきりするけど。鼻が詰まった感じになるので、味覚が鈍くなる。カレーのような刺激のある食べ物が良い」
-- 地球に戻ってきた時は、歩くのは大変?(荻野)
山崎氏「宇宙の無重力にはすぐ慣れる。地球に戻ってきた後に、この重力の重さに慣れる方が時間がかかる。紙一枚持ち上げるのも重たい。足を動かすのも錘を付けているような感じだった。バランス感覚も崩れるので、よろけてしまう」
-- 今まで一番きつかった訓練は?(大西)
山崎氏「宇宙船では何が起こるかわからない世界。宇宙船にいると地上のスタッフが直接助けてくれない。9割は備えの訓練。例えば地球に戻る時に不時着したとする。救助隊はすぐには来れない。ロシアの雪原地帯や海上で3日間生き伸びるための訓練を行う。ロシアの冬は寒い。マイナス20度の中でテントを作るなどして生き残っていく訓練をする」
-- 民間で初めてということだが、そのハードルはどのくらい高いのか?(中井)
山崎氏「簡単なことではない。宇宙開発に携わる民間企業は世界規模で増えてきている。但し人工衛星と違って、ロケットはエンジン部分が大きくて難しい。作るだけでも大変で、試験ができる場所も限られてしまう。本当にやる気がないと難しい」
-- なんで宇宙飛行士になろうと思ったのですか?(荻野)
山崎氏「子供の頃に『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』『スターウォーズ』などが流行った。それを見て『大人になったら宇宙に行くんだろうな』と思っていた」
-- 宇宙には朝昼夜はあるのか?(大西)
山崎氏「ロケットは地球の周りを90分で一周してしまう。24時間かけるところを90分。外を見ていると45分間が昼で明るくて、45分が夜で暗い。その繰り返しだから、外を見ていると時間の感覚がなくなる。時計を頼りに24時間で生活している。その時計をどこの時間に合わせるかで、国際宇宙ステーションで各国の宇宙飛行士らが自分の国に合わせたいから揉めた。結局、イギリスの世界標準時間に合わせた。朝6時に起きて、夜10時に寝る規則正しい生活をしている。地上のスタッフは昼も夜もなく24時間働いているが、宇宙に行っていると規則正しい生活をしている」
-- 宇宙健康法とか流行るかも(大西)
山崎氏「宇宙でも毎日2時間運動している。ジョギングや屈伸運動、自転車漕ぎなど。骨が衰えないために運動器具を持ち込んでいる。体を動かすのが大切。無重力だから足を固定して屈伸運動する」
-- 女性だから苦労したことありますか?(中井)
山崎氏「宇宙飛行士で女性はまだ1割くらい。一緒に訓練しているので、女性だからと言って困ることはない。だが、例えば化粧する時には寝袋の中でこそこそやっている」
-- 宇宙人っていますか?(中井)
山崎氏「どこかに、私はいるんじゃないかと思っています。いてほしいなと思ってるが、見たことはない。初期の宇宙飛行士ではUFOなどを目撃したことがあるという人もいるが、本当にUFOだったのか何かの見間違えだったかもしれないと私たちも話している。ただ宇宙は広いから、どこかにはいるんじゃないかな。仲良くなりたいですね」
-- 最初に宇宙に行こう思った人は何を考えていたのか?(大西)
山崎氏「最初はSFから始まっている。私もエンジニアだが、エンジニアはSFに影響を受けて、SFで描かれているなら、実際に作れるのではないかと始まった。ロケット開発に集まる人にはそのような思いがある。最初にロケットを考えたのは1800年代。人が想像したことはいつかは実現できる」
-- 簡単に宇宙に行けるようになったら、何をしたい?(大西)
山崎氏「私が行った宇宙は地球に近いところ。今度は月まで行ってみたい。月から地球を眺めてみたい」
-- 宇宙でどんな実験をしてきたの?(大西)
山崎氏「スペースシャトルで15日間滞在していた。国際宇宙ステーションの組み立てがミッション。その合間を縫って科学実験をしていた。ネズミを15匹連れて行った。宇宙に行くと体の免疫が落ちるという予測があった。例えば怪我や風邪が治りにくい。今までは細胞レベルで実験していたが、ネズミという個体レベルでどのくらい変化があるか調べていた。ネズミでも無重力の宇宙に着いたときに喜んでるネズミ、うずくまってるネズミ、混乱するネズミなどそれぞれに個性があった。現在は日本も国際宇宙ステーションで様々な実験装置を持っている。例えばネズミを一匹ずつ飼える装置を開発した。ネズミはケージで飼っているとストレスがたまる。ケージだとオスネズミが喧嘩してしまうので、オスでの実験ができなかった。これからはオスネズミでの実験もできるようになるので幅が広がる」
-- ワープは実現できる?(大西)
山崎氏「『宇宙戦艦ヤマト』に感化された身としては、ワープを実現してほしい。NASAではかなり研究も進められている」