鎌倉殿の13人と日銀殿の9人
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とは、13人の合議制であり、鎌倉幕府2代将軍「源頼家」の時代に作られた集団指導体制のことである。 13人とある通り、そのメンバーの数は13名。 いずれも有力な御家人で構成されている。
しかし、そのメンバー選定にあたっては、当時の有力御家人であった比企氏と北条氏が自らに近い後御家人を加えようとやっきになっている姿がドラマでは描かれていた。
同様のことが日銀の金融政策を決める合議制のメンバー選定にも行われていた。2013年4月に黒田日銀がスタートしてから、黒田総裁や岩田副前総裁などリフレ派と呼ばれるメンバーが次々と政策委員に選出されていった。
その背景には安倍元首相、その後の菅前首相がリフレ派を内閣官房参与にも選出するなどしていたことからもわかるように官邸からの影響があった。
岸田政権に代わり、その状況に変化が生じてきた。「鎌倉殿の13人」で言えば、源頼家に影響力を持つ比企氏が有力であったのが、次第に北条氏が影響力を取り戻すといった構図である。
日銀は25日、内閣が24日付で日銀政策委員会の審議委員に元岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏(63)と、元三井住友銀行上席顧問の田村直樹氏(61)を任命したと発表した。23日に任期満了で退任した片岡剛士氏、鈴木人司氏の後任。任期は5年(25日付日本経済新聞)。
高田氏、田村氏ともに現在の日銀の金融政策に理解を示している格好ながら、少なくともリフレ派ではない。それに対し、23日に任期満了で退任した片岡剛士氏は常に追加緩和を主張するなどバリバリのリフレ派であった。
これによって数の上ではリフレ派とそうでない派が逆転する格好となる。リフレ派は黒田総裁を含めても、若田部副総裁と安達審議委員、野口審議委員の4名となる。9名のうち過半数の5名がリフレ派で占められていた状況から一転する。
これてすぐ正常化というわけにはいかないか。そもそも多数決とはいえ黒田総裁というトップが頑として正常化を拒否し続けることも予想され、それを覆すこともなかなか困難ではある。
しかしイングランド銀行では、金融政策を決める上で総裁が少数派に回ったケースが過去にあったこともあり、それが今後、日銀で起きないとは限らない。
次期日銀総裁人事の行方が明らかになり、その人事とともに日銀の金融政策の正常化に向けたシフトを進める可能性もないとはいえない。
日銀の物価目標は数字の上では達成されている。9年間も達成できなかったものが達成されたというのはかなり異常な状態ともいえる。欧米では金融政策の正常化から引き締めへシフトしている。日本も異常な緩和策からの転換は必要である。