トップは米国の4.5万ドル…諸国の可処分所得の現状を探る
最大値は米国、その額は4万4800ドル
世帯のお財布事情を推し量るには欠かせない可処分所得。日本は他国と比べて多いのか少ないのか。OECD(経済協力開発機構)が公開している資料「Household accounts」をもとに、その実情を確認する。
まず可処分所得の定義。これは実収入から非消費支出(支払いを義務づけられている税金や社会保険料など)を引いたもの。要は自分自身が自由に使えるお金。この可処分所得を、生活に必要な消費となる消費支出や、貯蓄などの黒字に割り当てることとなる。世間一般にはこの可処分所得を手取り(収入)とも呼んでいる。
まずは主要国として独自に選択した国における、最新値(2015年分。無い国は2014年以前の分でもっとも新しい値)を取得した結果が次のグラフ。額はもちろん年単位のもの。地域別に並べたものと、高い順に並べたものを併記した。なお単位はグラフ中にある通り米ドル。あくまでも他国との平均のために換算したもので、為替レートによって多分に変動することを考慮に入れる必要がある。
今回選択した諸国の中では、アメリカ合衆国がトップで4.48万ドル。収入ではなく可処分所得であることに注意。同国の馬力をうかがえる数字ではある。次いでヨーロッパ方面ではもっとも高い値を示すドイツ、フランス、再び北米に戻ってカナダ、さらにもう一度ヨーロッパに戻ってスウェーデンと続く。日本はイギリスの次で2.85万ドル。日本は2014年時点の値なので、為替レートが円安に動いた現状では、もう少し下になるはす。
今値について、取得可能な限り過去にさかのぼって、その推移を見たのが次のグラフ。国によっては今世紀以降しか無い場合もあり、折れ線が一様の長さを示していない。また繰り返しになるが、あくまでも米ドル換算の結果で、各年・各国の対米ドル為替レートによる変動も多分にあることを考慮しておく必要がある。
直近年でも明らかだったが、アメリカ合衆国が群を抜いて可処分所得が高いことが分かる。それを追うのはドイツとカナダ、フランス。日本は中庸のポジションを維持し続けている。
大よその国では右肩上がりを示しているが、気になるのは今回確認した国の中では唯一失速、右肩下がりに転じているギリシャ。両国のここ数年の経済状況を容易に想起させる動きとなっている。また横ばいを維持しているスペイン、イタリアも、数年前までの欧州債務危機ではよく名前が挙がった国で、それぞれの国で施策として行われた財政緊縮政策が、国民生活にはプラスとならなかったことがうかがえる(スペインはここ数年、ようやく上向きを示し始めているが)。特にギリシャの下げ方は、失業率の高さも合わせると、一般市民の生活の大変さが容易に想像できる。プライマリーバランスの調整を強要すると、国が不幸になる事も多分にありうるとの好例ではある。
過去からどれだけ増えたのか
可処分所得が家計の良し悪しを推し量る指標のすべてでは無く、また米ドル換算なので為替レートの問題や、それぞれの国の物価・インフレ率も考慮する必要があるのだが、一つの指標と割り切り、前世紀末の1999年からの伸び率を算出する。
基準を1999年にしたのは、それ以前にすると値が公開されていない国が多くなってしまうため。逆にそれ以降にすると比較する経過年数が少なくなってしまう。例えば2006年を基準年にすると、前項目で取り上げたすべての国が対象となるが、それでは10年足らずの推移でしかなくなってしまう。
基準年次第との話もあるが、1999年を基準とした場合、もっとも高い成長率を示しているのは韓国で、1.86倍。可処分所得が10年強で2倍近くに増加した計算になる。次いでスウェーデン、ドイツ、アメリカ合衆国と続き、日本はカナダの次。ギリシャは欧州債務危機で同じく名前を挙げられているイタリアやスペインと比較すると、やはり低めの値に留まっている。しかしそれより、イギリスが成長度合いの上では低めな値を示しているのは、意外といえば意外だろうか。
今件可処分所得は先行記事における家計内金融資産の構成比率同様、各国の一般世帯におけるお財布事情を知る上では、貴重な値となる。他国情勢を知って自分の懐が潤うわけではないが、何かのきっかけで参照値として用いられた際、その実態を確認する上で役立つに違いない。
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