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自民党総裁候補者に問う 「日本の官公庁のデータは中国人が作成している実態」をご存じか?

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
自民党総裁候補者が討論会(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 自民党総裁候補者が14日、日本記者クラブで討論会を開催。その質疑応答は見ごたえがあった。何名かの立候補者が対中防衛策やデータの絶対的機密性を必要とするマイナンバーなどの実行を強調しておられたが、「日本の官公庁のデータのほとんどは中国人が作成している実態」をご存じだろうか?

 防衛や経済安全保障は声高に叫ばれても、誰一人、それを実行するための膨大なデータ作成を誰がやっているかに関する認識はないように(あるいは知っていても見ぬふりをしているように)見受けられた。

 日本の官公庁のデータ作成に関する実態の一端を指摘し、各立候補者にネットを通して問いを投げかけたい。

◆日本の全省庁統一資格が隠れ蓑

 周知のように日本のすべての官公庁には<全省庁統一資格>が設けられている。このリンク先に書いてある通り、全省庁統一資格とは「各省庁における物品の製造・販売等に係る一般競争(指名競争)の入札参加資格(全省庁統一資格)」のことだ。この資格は、各省庁申請受付窓口に掲げる申請場所のいずれか1か所に申請し、資格を付与された場合において、その資格は該当する競争参加地域のうち、希望する地域ごとに所在する各省庁の全調達機関において有効な入札参加資格となる。

 本資格が有効となる各省各庁は「衆議院、参議院、国立国会図書館、最高裁判所、会計検査院、内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府本府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、個人情報保護委員会、カジノ管理委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省で外局及び附属機関その他の機関並びに地方支分部局」だ。

 競争参加地域及び都道府県名はリンク先に列挙してある通り、北は北海道から南は沖縄県までの日本全国を網羅する。

 入札して落札する可能性のある企業に対する<付与数値・等級等>を見る限り、日本の大手企業しか受注できないような仕組みになっている。

 ここが肝心だ。

 官公庁の業務を受注した日本の大手企業が、実際には何をやっているか、ご存じだろうか。この大手企業が隠れ蓑となり、実際のデータ作成業務は、中国大陸にある「小さな中国企業」あるいは「中国人個人」が実施している流れをご紹介する。

◆「全省庁統一資格企業」→「日本の下請け子会社」→「中国人孫請け業務」

 たとえば日本政府の官公庁の中央が、入札する資格を持っている「全省庁統一資格企業」Aに100億円のプロジェクトXを発注したとする。

 データ作成やウェブサイトの作成や補修をする場合、ふつうならば、企業AがA社内に多くのIT人材を抱えていて忠実にプロジェクトXを実行しなければならないはずだ。

 ところが、日本には優秀なIT人材が少なく、A社内で実行することが困難と判断する「全省庁統一資格企業」が少なくない。実行できる人材を抱えていれば給料を支払わなければならないし、そのプロジェクトに専念していなければならないので、儲けが大きくはならない。

 そこで少なからぬ「全省庁統一資格企業」は官公庁から受注した業務を、「日本国内の下請け子会社」に委託する。その際、仮に受注金が100億円のケースでは、良くても数億円、極端な場合は1億円程度で下請けの子会社にやらせるのである。そうすれば企業Aはボロ儲けをし、社員などほとんどいなくても受注金をたっぷりA社で貯めこむことができる。

 A社から受注した「日本の下請け子会社」は、本来なら100億円ほどかかる業務を数億円か1億円程度でこなさなければならないので、普通に日本人のIT人材を雇用してプロジェクトXの業務を完遂することなどできるはずがない。

 そこで格安の報酬でも引き受けてくれる中国人IT人材を使用することになる。

 「日本国内にある下請け子会社」は、自社で中国人元留学生を雇用する場合もあれば、中国にいるIT人材に遠隔で依頼する場合もある。

 国家全体としてのGDPは2010年から中国が日本を上回り、中国は世界第二の経済大国になっているが、現状ではまだ平均的な給料からすれば、日本の方が中国よりはやや高いので、中国人IT人材は、今のところ静かにじっと耐え、日本の官公庁の個人データを黙々と入力し、日本の官公庁のウェブサイトを黙々と制作補修している。

 筆者自身は1980年初頭から中国人留学生の世話をし続け、それなりの人脈もまだいくつか残っているので、実際に日本の官公庁の業務を、薄給で日夜遂行している実態を知っている。

 悪いのは中国人IT人材ではない。

 悪いのは日本政府であり、この実態を(おそらく)薄々知りながら、徹底究明をしようとしない日本の国会議員たちだ。

 もちろん、最も悪質なのは受注した「全省庁統一資格企業」だが、その「闇のからくり」を知りながら目をつぶる政府与党国会議員の罪は計り知れなく重い。

◆中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた!

 2023年7月26日、ジャーナリストでもあり作家でもある岩瀬達哉氏が、<中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容>という論考を発表しておられる。岩瀬氏は事件の概要を、以下のように書いておられる。 

《事件の概要》2017年の大幅な税制改正を受け日本年金機構は、厚生年金から所得税などを源泉徴収する「税額計算プログラム」を作成し直す必要があった。約770万人の厚生年金受給者に「扶養親族等申告書」を送付。記載内容に漏れや間違いがないかをチェックしてもらうとともに、あらたにマイナンバーや所得情報を記入し、送り返すよう要請。送り返されてきた「申告書」をデータ入力することでプログラム化をはかることとした。機構はその入力業務を、東京・池袋のデータ処理会社、SAY企画に委託したものの、同社が中国大連市のデータ処理会社に再委託したため、そこから日本の厚生年金受給者の個人情報が、中国のネット上に流出した。(以上、岩瀬氏の論考から引用)

 岩瀬氏は2023年7月28日にも<【追及スクープ】「500万人のマイナンバーと年収情報」を中国に丸投げした池袋の企業に支払われた「7100万円の報酬」>を公開しておられ、それらの論考を詳細にご覧になればわかるが、この問題は何度も国会で取り上げられている。約10日間にわたった衆参両院での集中審議を行ったようなので、国会議員で、この事件を知らない者がいるとは思いにくい。 

 しかし岩瀬氏の記述によれば、「国会での虚偽答弁の連発」により、うやむやにされてしまい、まるでなかったかのようなことになっているようだ。

 岩瀬氏の論考には、以下のようなことが書いてある。

 ――すべてのはじまりは、'17年12月31日の大晦日だった。この日、日本年金機構の「法令等違反通報窓口」に2通のメールが届いた。メールの中身は、「最近中国のデータ入力業界では大騒ぎになっております。『平成30年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の大量の個人情報が中国のネットで入力(ママ。公開のミスか?)されています。普通の人でも自由に見られています。一画面に受給者氏名、生年月日、電話番号、個人番号(マイナンバー)、配偶者氏名、生年月日、個人番号、配偶者の年間所得の見積額等の情報が自由に見られます。誰が担当しているかはわかりませんが、国民の大事な個人情報を流出し、自由に見られても良いものでしょうか? ネットからハードコピーを取りましたが、アップできませんでした。残念です。対策が必要と思います。宜しくお願い致します」というものだった。(岩瀬氏の論考の引用はここまで)

 これは過去のことでなく、日本の官公庁のデータ入力やウェブサイトの制作補修は、今この瞬間にも中国人IT人材が行っている。

◆自民党総裁候補は自覚してほしい

 冒頭に書いた自民党総裁候補者が14日に日本記者クラブで行った討論会および質疑応答の中で、河野太郎候補をはじめ、少なからぬ候補者はマイナンバーの早期徹底化に関して強調しておられたが、筆者は裏の実態を知っているので、日本で最後の一人になってもマイナンバーの登録をする気はない。

 候補者の方々は、この現実をご存じなのか否か、ご存じでもスルーしているだけなのか、拙稿をご覧くださった関係記者の方たちには、ぜひ明らかにするように候補者の取材をお願いしたい。

 高市早苗候補の回答は見事だったが、しかし現役の経済安全保障大臣として、「全省庁統一資格企業」の一部が下請け子会社に業務を丸投げしている状況をご存じだろうか?子会社が「下請け」でしか生きていけない現状こそが「経済安全保障」に最も欠かせない課題で、そこが解決されない限り「孫請け中国人IT人材」の問題は日本から消えない。

 小林鷹之候補は「日本が世界をリードする国にならなければならない」として、「イノベーション」を例の一つに挙げておられたが、日本の知的水準が、世界レベルで見たときに、どれだけ低いかご存じだろうか。これに関しては一つのコラムでは書ききれないので、せめて6月21日のコラム<Natureの研究ランキング「トップ10」を中国がほぼ独占>に書いた事実を直視してほしい。

 1980年初頭から中国人留学生の教育に携わってきた筆者としては、最近の中国人人材の知的レベルの高さと、それに反比例するような日本人人材の低迷に当惑している。その原因がどこにあるのかを究明するために日々苦闘しているが、「孫請け中国人」が現れる原因の一つには、この問題もあることを見逃さないでほしい。

 言ってはならないことを書いてしまったが、真実を求める姿勢を崩すことはできないので、日本国民のために、あえて吐露した次第だ。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』(11月1日出版、ビジネス社)、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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